新“ドリーミオ”の実力を徹底解剖
プロジェクターの3D映像が新たな飛躍を遂げた − エプソン「EH-TW8000W」の画質に山之内正が迫る
クロストークの低減と明るさを両立させた「3D画質」
本機は3D映像向けに「3Dダイナミック」と「3Dシネマ」という2種類のカラーモードを用意している。前者は明るさ優先のリビング向け、後者は映画の忠実再生を指向した本格シアター向けという使い分けが基本だが、実際はそう単純ではないというが、私の感想だ。
「3Dシネマ」モードでも常識を覆すほどの明るさとコントラスト感があるので完全な暗室環境は絶対条件ではないし、「3Dダイナミック」はたしかに明るいが、色相が正確なので映画の鑑賞にも堪える。作品や上映環境によって柔軟に選ぶといいと思う。
3Dシネマモードで観た『アバター』は、意外なほどの明るさと余裕のあるコントラスト表現に感心した。ほの暗いジャングルの場面でもジェイクとネイティリの目の表情や顔の筋肉の微妙な動きが細かく読み取れるし、背景の暗部がつぶれることもない。
3段階から選択する3Dの明るさを「中」に設定した状態でもクロストークがほとんど気にならないので、映像の中で被写体を捉えるカメラのフォーカス移動はとてもスムーズだ。被写体の輪郭は鮮明でも背景にクロストークが多いと目に負担を強いるものだが、本機の3D映像はその心配がない。クロストークの低減と明るさを両立させるという難しい課題を克服できたのは、480Hz駆動の威力と見て間違いないだろう。
『クリスマスキャロル』のような暗いシーンの多い作品でも、暗部に豊かな階調を読み取れるのはTW8000Wの大きな強みだ。2番目の精霊が天上からの光景を見せる場面など、高さを実感させる立体感が見事。ここまでの遠近感はスクリーンならではの醍醐味と、素直に感動することができた。字幕のクロストークが少ない点も高く評価できる。
『トロン』は奥行き方向の自然な距離感が見どころだ。この作品も暗い場面が多いが、シネマモードで見ても黒のなかでの僅かな明暗差を忠実に引き出し、深みのある映像を見せた。
TW8000シリーズは、2D映像を3Dに変換する機能を積んでいるので、見慣れた作品から立体感を引き出して新鮮な視点で楽しむこともできる。複数の作品を見た印象では、特にアニメで自然な効果が得られるようで、たとえば『モンスターハウス』の2D版から、まるで3D版のような奥行き感を引き出すことに成功した。専用メガネの制御が巧みなのか、3Dに変換した状態でも色調に誇張がなく、低輝度部でも色が後退しにくい点にも感心した。
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