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4K撮影の映像もチェック

JVCの先端4K技術をかたちにしたビデオカメラ ー 「GY-HMQ10」開発者インタビュー

公開日 2012/05/09 20:38 レポート/会田 肇
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JVCケンウッドという会社は、実は新しいフォーマットにいち早く対応することで知られている。2003年、ハイビジョン対応ビデオカメラ「GR-HD1」を家庭用として最初に世に送り出し、昨年は世界初の本格的な3Dビデオカメラ「GS-TD1」も発売。遡れば古くは1995年に、当時は小型化が難しかったDV方式ビデオカメラをいち早く小型化し、「GR-DV1」として発売してもいる。そして今年、JVCはフルハイビジョンの次に来る新たな動画映像方式である「4K(3,840×2,160ドット)」解像度の記録を、ハンドヘルドサイズで実現した業務用ビデオカメラ「GY-HMQ10」を、またまた世界で初めて発売したのだ。


4K対応の業務用ビデオカメラ「GY-HMQ10」
どうしてJVCはこうも新たなフォーマットへの対応を矢継ぎ早に対応してくるのか。その理由として古くからの企業風土があるようだ。同社ホーム&モバイルエレクトロニクス事業グループ HM技術統括部長 谷田泰幸氏によれば、「迷うよりもとにかくやってみよう」というチャレンジングな意識が開発チームには強く、また「記憶はその時代の最高画質で保存しておきたい」ことも常々思っていることも背景にあったのだという。

【取材協力】

(株)JVCケンウッド ホーム&モバイル事業グループ HM技術統括部 商品設計第一部 部長 大浦徹也氏

(株)JVCケンウッド ホーム&モバイル事業グループ HM技術統括部長 谷田泰幸氏


(株)JVCケンウッド ビジネス・ソリューション事業部 国内営業推進部 クリエーション担当 池田規氏

(株)JVCケンウッド ホーム&モバイル事業グループ イメージング事業部 商品企画部シニアスタッフ 上村直弘氏

独自開発のLSI「FALCONBRID」を核に、JVCならではの4K撮影技術を確立

GY-HMQ10の開発が始まったのは2007年こと。この時も「とにかく作ってしまえ(谷田氏)」との思いがスタートにきっかけだった。勢いで製作した試作機だったが、神奈川県・久里浜にある技術センターで当時開発が始まっていた4K対応プロジェクターで映して見たら「あまりの美しさにビックリしてしまった(ホーム&モバイル事業グループ HM技術統括部 商品設計第一部 部長の大浦徹也氏)」という。しかし、フルハイビジョンの4倍もの高解像度映像を記録保存する4Kは当然ながら高い処理能力が欠かせない。

そこで開発されたのが映像エンジンの中核となるLSI「FALCONBRID」であった。この完成によって、開発は大きく前進する。通常なら処理に必要なチップを搭載するために機材は大型化してしまいがちだ。大浦氏によれば「コンテンツを充実させるためにもビデオカメラは早急に対応する必要がある。その意味でもレンズを一体化したハンドヘルド型にこだわっていた」という。つまり、ハンドヘルドの4Kビデオカメラを開発する目標を持つにあたり、高速処理が可能なLSIの開発は欠かせない条件だったというわけだ。

次なるハードルは最高144Mbpsという極めて高い4Kの記録ビットレートへの対応である。HDDは容量でこそ有利だが、ここまで高速で記録できる能力は備えていない。記録速度が速いメモリーカードは存在するが、非常に高価なカードになってしまう。そこで採用したのが、4K映像をフルHD相当に4分割し、それぞれを4枚のSDHC/SDXCカード(Class 6/10)に保存するというものだ。フルHDであれば市販されているメモリーカードのスペックで対応可能となり、どこでもメディアが手に入るというメリットもある。業務用機にとってこれは欠かせない仕様ともなる。

また、4つのファイルを圧縮する場合にはそれぞれの境目が目立つ場合がある。そこで本機では境界部分をオーバーラップして記録する「エッジブレンド」も可能としている。この場合は「上下左右16ドットずつを重ね合わせることで映像としては3,824×2,144ドットとなる(大浦氏)」という。また、フルハイビジョンで撮影もでき、その場合は撮像素子をフルに使って最終処理でフルハイビジョンにダウンコンバートする形となる。その他、タイムラプス撮影にも対応するなど、幅広い用途に使うことができることも特徴だ。

4K対応ながらハンドヘルドサイズにコンパクト化したできたことも本機の大きな特長だ

ところで、4K映像を業務用途で使う際には、どんなメリットがあるのだろうか。もちろん4Kという高解像度映像で記録することが最大のメリットであることは間違いない。とはいえ、4Kのまま映像を見られるディスプレイが自宅にあるというユーザーはごく一部に限られる。そこで4K映像で撮影した映像を、HDMIケーブル1本で接続し、フルHD画質にダウンコンバートして映すことができる。本機の場合はさらに、4K素材から必要箇所をフルHD画質でクローズアップして切り出すこともできる。これによって、撮影後に被写体をクローズアップなども対応でき、これは業務用途でも重宝される機能となるだろう。


「GY-HMQ10」の4K映像を体験


映像を視聴する会田氏
ではGY-HMQ10の画質はどうか。今回はJVCケンウッド本社で視聴を行った。モニターには4K対応テレビとして東芝“REGZA”「55X3」が準備されたが、本機から映像出力は4系統のHDMIミニを経由し、別売の4K入力アダプタ「THD-MBA1」を通して再生した。

JVCケンウッド本社にて「GY-HMQ10」を視聴

サンプル映像として用意されたのはサーキットを高速で走る様子や、ラスベガスでの風景映像、それに満開の桜が咲いた千鳥ヶ淵の映像である。この映像を通してまず感じたことは、遠景で撮影しても細部が鮮明にわかる高解像度な映像であることだ。4Kで撮影しているのだから当たり前なのだが、間近にその映像を見てもドットがほとんど感じられない。至近距離で見た時に細部がぼけてしまうフルハイビジョンとの差は明らかだ。

撮像素子は1/2.3型、有効829万画素の裏面照射CMOSセンサーを採用する。そのためか被写界深度は深めで、サーキットを走る車両をAFで撮影してもほぼ全域でフォーカスする。やや色彩が強く感じることもあったが、これは撮影した時点ではまだ画質が最終調整されていなかったことも要因だという。現バージョンでは「妙な処理は一切せず、出来る限り素直に映像として記録する方法を選んでいる(大浦氏)」という。確かに製品版で撮影した千鳥ヶ淵の映像では色彩が抑えられ、ごく自然に風景が再現されている。デティール感も十分で、コントラストも高い。人が密集したシーンも視聴したが破綻は一切見られなかった。また、エッジブレンド機能も搭載したものの、この機能を使っていないサンプル映像でも境目に気付くことはなかった。

GY-HMQ10にはマイク用のXLR端子などを備えたグリップが装着できるが、これを取り外せばそのサイズは民生機と変わらないほどコンパクトだ。本機はあくまで業務用機として登場しているが、将来的には当然民生機への展開も見据えているはず。その時期は明言されなかったが、それは4K対応テレビの価格が下がってきたあたりが目安になるかもしれない。

本機専用のワイヤードリモコンも近く発売が予定されている

本体側面のリモコン入力端子に接続する

もう一つの期待がレンズ交換式4K対応機の登場である。今年開催されたCESではニコンのFマウントを採用するレンズ交換式モデルが出展されていた(関連ニュース)。JVCでは4Kの真髄を引き出せるビデオカメラとして、並行して本機の開発を行っていたのだ。取材当日は、この試作機で撮影した映像を見る機会にも恵まれたが、この映像を見て思わず息を飲んだ。2D映像なのにハッキリとした奥行き感が伝わってくるのだ。高層ビルからの映像では家並みの様子が肉眼で見ているかのような錯覚に陥るし、解像度というよりも被写体そのものの質感が大幅に高まる感じだ。まさにこの時、4Kの真髄を見たような気がした。

2012 International CESのJVCブースに参考展示された、レンズ交換式の4Kビデオカメラ試作機。レンズはFマウント対応で完全マニュアルになる

プロジェクターやテレビで4K対応機が相次いで誕生し、ついにそのコンテンツ作成に最適なビデオカメラが登場。これで役者はすべて揃った。高い解像度を求めてスチルに流れたユーザーも数多くいると聞くが、4Kビデオカメラの登場がこれらのユーザーを再び動画の世界に引き戻すきっかけになることも期待したい。


会田 肇 プロフィール
1956年、茨城県生まれ。明治大学政治経済学部卒。自動車雑誌編集者を経てフリーとなる。クルマ、スポーツ、旅行などアウトドアな趣味を多く持ち、アウトドア系オーディオビジュアルライターとしての第一人者。カー雑誌などでカーナビをはじめとするカーAVを中心とした取材、執筆に従事する一方で、ビデオカメラやデジタルカメラの批評活動を積極的に続けている。たえず複数台のビデオカメラを利用し、そのフォーマット遍歴はベータ、8ミリ、VHS-C、ハイエイト、DVC…と購入、使いこなしたモデルは数え切れない。


【製品に関する問い合わせ先】
JVCケンウッド カスタマーサポートセンター
TEL/0120-2727-87

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