[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第4回】あえて今!「春のヘッドホン祭2012」− 高橋敦の個人的ベスト5を強引に振り返る
【第3位】Antelope Audio「ZODIAC GOLD」
第3位もヘッドホンアンプ。Antelope AudioのUSB-DAC搭載ヘッドホンアンプ“ZODIAC”シリーズだ。
以前から気になっていたのだが、先日取材で「ZODIAC SILVER」を遂に聴くことができて、評判に違わぬ音に感心したところであった。今回は嬉々として「GOLD」を試聴した。
用意されていた曲から1曲目はバッハの無伴奏チェロ組曲。無伴奏であるがために、音色自体の魅力を強く引き出せないと格好がつかない。のだが、ZIDIAC GOLDは見事にかっこいい!「太いキレ」とで言えばいいのか、力感とスピード感が共に溢れる音色だ。その木質のキレは、木刀の太刀筋を見るかのようである。
続いて流れてきたのは「Hotel California」のアコースティック演奏。アコギの音色の弾け方、スティール弦のジャキッとした感触も生々しい。ベースの実に滑らかな音色との対比も鮮やかだ。こちらも文句の付けようがない再生である。
【第2位】FOSTEX「HP-A8」
第2位!…もヘッドホンアンプだ。いや今回は本当に、ヘッドホンアンプが大豊作だったのである。とにかく第2位は、フォステクスのUSB-DAC搭載ヘッドホンアンプ、HP-A8だ。
これは楽しみにしていた。もちろん理由は、アップデートによって実現されるというUSB経由でのDSDネイティブ再生だ。
音であるが、いちばん印象的だったのはエレクトリックベースの音色の密度感。ゴリッと来るけれどしなやかで、クリアだけれどコクもある。その感触はベースだけではなく全体にも共通し、濃密である。これはやはり魅力的だ。
とはいえ、DSD配信がいきなり一般化するとは想像しにくい。しかしそこに独自の価値があれば、広くはなくとも強い支持を集め、一分野として成立するはずだ。そのためにも、その真価を発揮できるDSDネイティブ再生環境の進展は重要だ。期待したい。
ではいよいよ第1位の発表!
…の前に、ヘッドホンアンプと言えばもうひとつ気に留まったことが。
イベント会場では、来場されている方々が各所でヘッドホンを試聴しているわけだが、その光景の中で目立っていたのが、マイポタアン(ポータブルヘッドホンアンプ)を持参している人の多さ。しかも小型機ではなくて、ポータブルプレーヤー本体と同等かそれを超える大きさの機種を持ち込んでいる方も多かったのだ。「ガチだ…一線を超えちゃってる人たちだ…」と感じる人の何と多かったことか。
【第1位】bayerdynamic「CUSTOM」
今度こそ本当に第1位! ベイヤーダイナミックの「CUSTOM」だ。ハウジングカバーなどを交換して外装をカスタマイズできる、セルフカスタマイズヘッドホンである。
しかしそれどころではなく衝撃的なのが、ハウジングに用意されているレバーを動かすことで、ハウジング構造が開放型から密閉型まで4段階に変化すること。ベイヤークラスのブランドがやっていなかったら、完全に色物扱いである。
聴きながらレバーを密閉方向から開放方向に動かしてみると、確かにやや強調されていた低音がフラットになっていき、シンバルの抜けや音場の広がりが増す。それでも基本的な音調はもちろん同じというのが面白い。
例えば、曲や気分に合わせて使い分けるのはもちろん、自宅では開放型を満喫して、音漏れがまずい屋外では密閉型にするといった使い方も便利そうだ。意外と実用的かもしれない。
【番外編】「アンティークヘッドフォン友の会」
では最後は番外編にしてイチオシ、「アンティークヘッドフォン友の会」からの、趣きのある品々で締めさせていただきたいと思います。
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退。大学中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。 その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。 |
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