ヤマハの最新調音パネル「ACP-2N」で調音を極める!
ヤマハ「ACP-2N」大解剖! 山之内正がその実力を徹底検証する
山之内正の ACP-2N体験記
山之内正が自身の試聴室でACP-2Nの実力を徹底検証
ヤマハが調音パネルを開発した背景には、楽器を演奏する部屋の響きを改善するという目的があったという。楽器を美しく響かせる調音パネルがステレオの再生音にも優れた効果を発揮するのは十分予想がつくことだが、実際にはどうなのか。筆者の試聴室にACP-2Nを設置し、試してみることにした。
まずは左右のスピーカー後方に1枚ずつ設置
ヤマハが推奨する設置場所はスピーカーの後方約30cmが目安なので、パネルに付属する自立型スタンドを取り付けて左右のスピーカー後方に1枚ずつ置き、パネルを使わない状態と聴き比べてみた。使用したパネルはブラウン仕上げのACP-2N MBである。
ピアノ伴奏の歌曲では、声の音像の大きさが一定になり、音域によってイメージがふくらんだり小さくなったりする現象がほとんど気にならなくなった。ちょうど顔の大きさぐらいの音像が左右スピーカー中央にふわりと浮かび、そのまわりに自然な余韻が漂う。パネル設置前よりもドイツ語の発音が明瞭になって音節まで聴き取りやすくなったし、ピアノは左手の分散和音の一音一音が曖昧にならず、音量のバランスも素直に整ってくる。
楽器の定位が鮮明になる効果は、さらに編成の大きい曲でもはっきり聴き取ることができた。ライヴ録音されたベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲では、ソリストが立っている位置が安定し、オーケストラとの前後の距離感を自然に再現。ソロパートと伴奏の間の掛け合いがとてもスムーズになる。
木管楽器の音像もパネル設置前に比べてフォーカスがきれいに揃い、不自然なにじみがない。そして、各楽器の音色の純度が上がることによって、木管楽器全体の響きは前よりもきれいに溶け合って一体感が向上しているように聞こえる。響きを整えることによって倍音同士が精密に響き合い、ハーモニーの純度が上がるのだろう。直接は予想していなかった効果だが、音楽の基礎を考えれば納得のいく現象である。
アコースティック楽器だけで演奏されたジャズのアンサンブルでは、ベースやパーカッションが刻むリズムの切れがパネル設置前より向上していることに気付いた。消えるべきタイミングで正確に音がなくなるので、次の音符のアタックが鮮明に立ち上がり、テンポがはっきり定まるのだ。サックスの音像がぼやけることがなく、トランペットはベルの向きまで見えるようなリアリティが感じられる。
さて、パネルをスピーカー後方に1枚ずつ設置しただけでも大きな効果を聴き取ることができたが、次はさらにACP-2Nを2枚追加し、計4枚を使って響きの変化を確かめてみることにした。