Bluetoothで高音質伝送、「apt-X」をMacで使う裏ワザ
SBCと他のコーデックの音質差は明らかだ。A2DPで利用可能なコーデックのうち、もっとも高効率とされるapt-Xは、情報量がSBCの約4倍に達する。圧縮効率が高いほど上限512kbpsという帯域を有効に活用できるため、アンプや高音質化回路など他の要素を考慮しなければ、SBCよりapt-Xのほうが高音質と言っていい。
しかし、SBCさえ対応しておけばA2DP経由で音声を出力できるため、オーディオ機器以外ではapt-Xなど高効率なコーデックの採用が進んでいない。PCはその傾向が顕著で、Bluetooth/A2DPには対応してもコーデックはSBCのみ、AACやapt-Xには非サポート、という機種が大半という状況だ。
■なぜSBCで接続される?
そのような状況下、ある日筆者がSENNHEISER(米)のウェブサイトで日本未発売のBluetooth対応製品について調べていたところ、興味深い記述に気がついた。「The following 3rd party devices/configurations have built-in Apt-X support」という項目に、Mac miniの名があるのだ。筆者のMac miniは2011年モデル(Mid 2011)のため、apt-X対応機ということになる。
だが、手持ちのapt-X対応Bluetoothデバイスは、これまで一度もapt-Xで接続できたことはない。Mac mini(Mid 2011)にapt-X対応のBluetoothチップが搭載されているという非公式の情報は把握していたが、何度接続・解除を繰り返しても適用されるコーデックはSBCのまま。素のMac miniでapt-Xの接続に成功した、という事例を耳にしたこともないため、これはOS Xのシステム側で対応していないのだろう、と単純に結論づけてなにも対処せず放置していた。
そして先日、手元にオーディオテクニカ「ATH-CKS99BT」が届いた。このBluetoothイヤフォン、2種類のコーデック(SBC/apt-X)に対応しており、apt-X対応のポータブルオーディオで聴くとたわみのない低音とヌケのいい高域を楽しませてくれる。音質については別の機会に譲るが、SBCよりapt-Xで聴きたいイヤフォンなのだ。もちろん、Mac miniでも聴けるようにしたいところ。
最初に着手したのは、Bluetoothの処理を受け付ける常駐型プログラム(/usr/sbin/blued)のログを調べること。初期設定では作成されないため、以下のコマンドをTerminalで実行してログが作成されるようにしたあと、apt-Xに関する情報が出力されていないかどうか調査した。
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$ sudo touch /var/log/bluetoothAudio.log
$ sudo chmod 777 /var/log/bluetoothAudio.log
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そこで見たものは、ATH-CKS99BTが接続された直後に出力されている「Disabling AptX codec」の文字。要約して言うと、ネゴシエーション初期の段階でapt-Xがソフトウェア的に無効化されており、その結果残された選択肢であるSBCで接続、という流れになっているのだ。ということは、apt-Xを有効にする手続きを行えば、筆者のMac miniでもapt-Xで楽しめるはず。