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「レグザ最高画質」を継ぐZ7シリーズの映像美 ー 「55Z7」を山之内正が徹底検証
山之内正氏による新<レグザ>「Z7」シリーズ視聴レポートをお届けする。ターゲットとして選定したのは<レグザ>の最高峰モデル「55Z7」だ。『ドラゴン・タトゥーの女』『ヒューゴの不思議な発明』、そして歌劇『アドリアーナ・ルクヴルール』の3本を本機でじっくりと確認。55Z7による見え方は?筆者がこだわった点は「オリジナル素材の情報を、55Z7はどれほど忠実に引き出せたのか?」ということだった。
『ドラゴン・タトゥーの女』:役者の表情から誇張なく感情を引き出す映像
Z7シリーズが<レグザ>に共通する画質をどう受け継いでいるのかを確認することが今回の視聴の主な目的だ。<レグザ>共通の画質とは、映像コンテンツのジャンルを問わずオリジナル素材の情報を忠実に引き出し、誇張のない自然な描写に徹するということに尽きる。
最初に『ドラゴン・タトゥーの女』のチャプター15を再生した。ミカエル・ブルムクヴィストがハリエット・ヴァンゲルから話を聞く場面だ。街の公園に座る二人のまわりは平安な日常の世界が広がっているが、会話の中身は40年前に遡ってドラマの核心に迫っていき、ハリエットの顔は当時の記憶が引き起こす緊張で細かい痙攣が止まらない。フラッシュバックで当時の映像が挿入され、過去の秘密が一気に解き明かされる…。
この重要な場面の見どころは現在と過去を、静と動のコントラストで鮮やかに描いていることで、緑と澄んだ空気が美しい現代と、闇の深さに戦慄が走る過去の映像を交互に映し出している。特に後者は明暗の変化が瞬時に交錯する描写で、バックライト制御の完成度が問われる。
55Z7で観ると対照的な2つの場面の対比が自然に浮かび上がり、この作品の編集のうまさがストレートに伝わってくる。また、ミカエルとハリエットのクローズアップでは緊張した表情を締まりのある映像でとらえ、観る者をぐいぐいと引き付けていく。
カメラが引いた場面でも画面には張り詰めた緊張感に満ちて、締めるべきところはしっかり引き締めていることがわかる。外光の映り込みを抑えながら十分なコントラストを確保する「アドバンスド・クリアパネル」が、ありふれた情景をとらえたシーンをも見事に描き出してくれるのだ。
ディテール再現力の高さはスキントーンのきめの細かさと自然な立体感から読み取ることができる。階調のなめらかさと細部の情報量で描き出す立体感はどこにも誇張がなく、テレビ画面を観ていることを忘れさせてくれるような自然な表情を引き出す。
その一方で背景の緑はレンズのボケ味がとても自然で、その両者の対比によって素直な遠近感を引き出していることがわかる。「映画プロ」モードで観ている限り、本機はディテールの強調感とはまったく縁がないと言って良い。
『ヒューゴの不思議な発明』:驚くべきディテールの再現力
『ヒューゴの不思議な発明』(輸入盤『HUGO』を視聴)でオートマトンが月世界旅行の絵を描くシーンを見ると、ヒューゴとイザベルの表情やスキントーンの描写が『ドラゴン・タトゥーの女』以上に緻密でなめらかなことに驚かされる。この作品はグレインノイズを含めてほとんどノイズらしいノイズが存在しない上に、細部の情報量は際立っているので、解像度の高いディスプレイで観ると「ここまで見えるのか」というぐらいのディテールが浮かび上がってくるのだ。
55Z7の映像からディテール描写の水準の高さが際立って見えるのは、ノイズとディテール情報を識別する精度が高く、誤ってノイズを強調することが少ないことに理由がある。超解像技術の追い込みの深さには、やはり4Kディスプレイの開発経験が物を言っているに違いない。本機はフルHDパネル搭載した標準的な2Kテレビなのだが、映像処理回路のアルゴリズムには4Kディスプレイのノウハウが生かされているように思われる。
この場面は作品のハイライトの一つなので、特に手間と時間をかけて細部を作り込んでいる。オートマトンの金属の光沢や歯車の硬さの表現にも十分な説得力があり、機械が絵を描く画用紙のざらざらとした質感を忠実に再現していることにも感心した。
ペン先をクローズアップでとらえる場面はほとんど白一色のなかに微妙な凸凹が浮かび上がるので、バックライトを僅かでも明るくしてしまうと、その素材感が見えなくなってしまう。55Z7には、デフォルト設定のままでもそうした微妙な情報を漏らさず引き出すゆとりがそなわっている。
『アドリアーナ・ルクヴルール』:深みのある暗部階調表現
最後に視聴したチレアの歌劇《アドリアーナ・ルクヴルール》(輸入盤)はビデオ映像特有の緻密なテクスチャーと舞台の暗さの表現力に的を絞って視聴した。
ヒロインを演じるゲオルギューの陰影に富んだ表情の変化と、稀代の演技派テノールであるカウフマンの演技の応酬がまさにこの作品のハイライトで、ディスプレイの腕の見せどころでもある。背景は適切な暗さに沈んでいるが、微妙な色調の照明に浮かぶ二人の表情は驚くほど繊細で変化に富み、歌唱と同じぐらいの深い表情を見せている。全体にコントラストが低く暗い画面のなか、そこまで微妙な表情を引き出すことができるのは、本機の階調表現力の余裕がなせる技であろう。
内蔵スピーカーは、声がくぐもりにくいという長所に注目したい。カウフマンの張りのある豊かな音色を素直に引き出し、聴かせどころをしっかり押さえている。
3つの作品を視聴した今回の取材では、映像表現における<レグザ>「55Z7」のポテンシャルの高さを確実に読み取ることができた。
【SPEC】
<55Z7>
●サイズ:55V型 ●映像処理システム:レグザエンジンCEVO Duo ●パネル:IPS方式 倍速LEDパネル(フルHDアドバンスド・クリアパネル) ●解像度:1,920×1,080 ●コントラスト比:1600対1(ダイナミックコントラスト:580万対1) ●チューナー:地上デジタル×9、BS・110度CSデジタル×2 ●入出力端子:HDMI入力×4、D5入力×1、ビデオ入力×1、HDMIアナログ音声入力×1(音声入力端子用と兼用)、光デジタル音声出力×1、アナログ音声出力×1、USB×4(タイムシフトマシン専用2/通常録画用1/汎用1)、LAN×1 ●消費電力:218W(リモコン待機時:0.15W)●外形寸法:1234W×795H×288Dmm(卓上スタンド含) ●質量:26.5kg(卓上スタンド含)
【問い合わせ先】
東芝テレビご相談センター
TEL/0120-97-9674
◆山之内正 プロフィール
出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。
『ドラゴン・タトゥーの女』:役者の表情から誇張なく感情を引き出す映像
Z7シリーズが<レグザ>に共通する画質をどう受け継いでいるのかを確認することが今回の視聴の主な目的だ。<レグザ>共通の画質とは、映像コンテンツのジャンルを問わずオリジナル素材の情報を忠実に引き出し、誇張のない自然な描写に徹するということに尽きる。
最初に『ドラゴン・タトゥーの女』のチャプター15を再生した。ミカエル・ブルムクヴィストがハリエット・ヴァンゲルから話を聞く場面だ。街の公園に座る二人のまわりは平安な日常の世界が広がっているが、会話の中身は40年前に遡ってドラマの核心に迫っていき、ハリエットの顔は当時の記憶が引き起こす緊張で細かい痙攣が止まらない。フラッシュバックで当時の映像が挿入され、過去の秘密が一気に解き明かされる…。
この重要な場面の見どころは現在と過去を、静と動のコントラストで鮮やかに描いていることで、緑と澄んだ空気が美しい現代と、闇の深さに戦慄が走る過去の映像を交互に映し出している。特に後者は明暗の変化が瞬時に交錯する描写で、バックライト制御の完成度が問われる。
55Z7で観ると対照的な2つの場面の対比が自然に浮かび上がり、この作品の編集のうまさがストレートに伝わってくる。また、ミカエルとハリエットのクローズアップでは緊張した表情を締まりのある映像でとらえ、観る者をぐいぐいと引き付けていく。
カメラが引いた場面でも画面には張り詰めた緊張感に満ちて、締めるべきところはしっかり引き締めていることがわかる。外光の映り込みを抑えながら十分なコントラストを確保する「アドバンスド・クリアパネル」が、ありふれた情景をとらえたシーンをも見事に描き出してくれるのだ。
ディテール再現力の高さはスキントーンのきめの細かさと自然な立体感から読み取ることができる。階調のなめらかさと細部の情報量で描き出す立体感はどこにも誇張がなく、テレビ画面を観ていることを忘れさせてくれるような自然な表情を引き出す。
その一方で背景の緑はレンズのボケ味がとても自然で、その両者の対比によって素直な遠近感を引き出していることがわかる。「映画プロ」モードで観ている限り、本機はディテールの強調感とはまったく縁がないと言って良い。
『ヒューゴの不思議な発明』:驚くべきディテールの再現力
『ヒューゴの不思議な発明』(輸入盤『HUGO』を視聴)でオートマトンが月世界旅行の絵を描くシーンを見ると、ヒューゴとイザベルの表情やスキントーンの描写が『ドラゴン・タトゥーの女』以上に緻密でなめらかなことに驚かされる。この作品はグレインノイズを含めてほとんどノイズらしいノイズが存在しない上に、細部の情報量は際立っているので、解像度の高いディスプレイで観ると「ここまで見えるのか」というぐらいのディテールが浮かび上がってくるのだ。
55Z7の映像からディテール描写の水準の高さが際立って見えるのは、ノイズとディテール情報を識別する精度が高く、誤ってノイズを強調することが少ないことに理由がある。超解像技術の追い込みの深さには、やはり4Kディスプレイの開発経験が物を言っているに違いない。本機はフルHDパネル搭載した標準的な2Kテレビなのだが、映像処理回路のアルゴリズムには4Kディスプレイのノウハウが生かされているように思われる。
この場面は作品のハイライトの一つなので、特に手間と時間をかけて細部を作り込んでいる。オートマトンの金属の光沢や歯車の硬さの表現にも十分な説得力があり、機械が絵を描く画用紙のざらざらとした質感を忠実に再現していることにも感心した。
ペン先をクローズアップでとらえる場面はほとんど白一色のなかに微妙な凸凹が浮かび上がるので、バックライトを僅かでも明るくしてしまうと、その素材感が見えなくなってしまう。55Z7には、デフォルト設定のままでもそうした微妙な情報を漏らさず引き出すゆとりがそなわっている。
『アドリアーナ・ルクヴルール』:深みのある暗部階調表現
最後に視聴したチレアの歌劇《アドリアーナ・ルクヴルール》(輸入盤)はビデオ映像特有の緻密なテクスチャーと舞台の暗さの表現力に的を絞って視聴した。
ヒロインを演じるゲオルギューの陰影に富んだ表情の変化と、稀代の演技派テノールであるカウフマンの演技の応酬がまさにこの作品のハイライトで、ディスプレイの腕の見せどころでもある。背景は適切な暗さに沈んでいるが、微妙な色調の照明に浮かぶ二人の表情は驚くほど繊細で変化に富み、歌唱と同じぐらいの深い表情を見せている。全体にコントラストが低く暗い画面のなか、そこまで微妙な表情を引き出すことができるのは、本機の階調表現力の余裕がなせる技であろう。
内蔵スピーカーは、声がくぐもりにくいという長所に注目したい。カウフマンの張りのある豊かな音色を素直に引き出し、聴かせどころをしっかり押さえている。
3つの作品を視聴した今回の取材では、映像表現における<レグザ>「55Z7」のポテンシャルの高さを確実に読み取ることができた。
【SPEC】
<55Z7>
●サイズ:55V型 ●映像処理システム:レグザエンジンCEVO Duo ●パネル:IPS方式 倍速LEDパネル(フルHDアドバンスド・クリアパネル) ●解像度:1,920×1,080 ●コントラスト比:1600対1(ダイナミックコントラスト:580万対1) ●チューナー:地上デジタル×9、BS・110度CSデジタル×2 ●入出力端子:HDMI入力×4、D5入力×1、ビデオ入力×1、HDMIアナログ音声入力×1(音声入力端子用と兼用)、光デジタル音声出力×1、アナログ音声出力×1、USB×4(タイムシフトマシン専用2/通常録画用1/汎用1)、LAN×1 ●消費電力:218W(リモコン待機時:0.15W)●外形寸法:1234W×795H×288Dmm(卓上スタンド含) ●質量:26.5kg(卓上スタンド含)
【問い合わせ先】
東芝テレビご相談センター
TEL/0120-97-9674
◆山之内正 プロフィール
出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。