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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第50回】にわかに熱いニュージャンル、“USBスティック型ヘッドホンアンプ”3機種聴き比べ

公開日 2013/06/21 12:20 高橋敦
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オーディオテクニカ「AT-HA30USB」:カップリングコンデンサーレスで豊かな低域描写を実現

オーディオテクニカ AT-HA30USBは実売1万6,800円。ヘッドホン/イヤホン分野大手ブランドの製品であり価格も手頃なので、安心感のある製品だ。USB-DACとしてのスペックは96kHz/24bit対応。

サイズはDragonFlyとほとんど同じで、まさにUSBメモリーサイズ。重さはキャップ込みで15.5g

銀色のフレーム部分はアルミ。肉厚の押し出し成形となっており、手にするとその頑強さが伝わってくる

アンプとしてのポイントはカップリングコンデンサーレスという回路構成。一般的なアンプ回路では、ヘッドホン出力の直前にカップリングコンデンサー(出力コンデンサー)という電子部品が必要になる。ところがこれには低音域の信号を減衰させてしまうという副作用がある。そこを本機では、回路を工夫することでそれを不要にして問題を解消。より豊かな低音描写を実現している。コンデンサーレスは小型化と低価格化にも貢献しているところだろう。

接続するとこんな感じ。他の製品でも同様だが、横方向のスペースはそれなりに必要になる

再生中の音源が96kHzの場合はこのランプが赤に点灯。それ未満のときは青に点灯

なお細かな点としては、USB-DAC部分は88.2kHzには対応していない。88.2kHzの音源を再生する際にもDAC側は96kHzとして処理する。

では音質チェックに入ろう。

まず印象をまとめると、ほどよいボリューム感を演出する低音がポイント。中高音はやや硬質なクリアさで明るい音色が特徴だ。

上原ひろみさんのアグレッシブでプログレッシブなピアノトリオ作品「MOVE」は192kHz/24bit音源。AT-HA30USBでは96kHz/24bitに落としての再生となる。

シンバルが明るい音色で、それでいて強く輝きすぎることもなく、自然な華やかさを見せる。スネアドラムのバシッというアタックの炸裂感も、適当に荒く暴れるのだが、しかし雑な感じにはしない。このあたりのさじ加減が絶妙だ。エレクトリックベースは、輪郭の明確さといった要素は他の2モデルに少し譲るが、音色のブリブリとした弾力を引き出すことにかけては強みを見せる。これは「楽しい」表現傾向だ。

ポップユニット相対性理論はアルバム「シンクロニシティーン」から何曲かを試聴。こちらは48kHz/24bit。

こちらでもベースの感触が特徴的だ。音色をうまい具合に膨らませて、手応えのある太さと量感を聴かせてくれる。ドラムスの太鼓も音色が太い。いわゆるかっちりとタイトな低音ではなく、ほどよく手綱を緩めておおらかなドライブ感を引き出してくれる低音だ。ハイハットシンバルはザシュザシュッと濁点を効かせた迫力を出しつつも、こちらもやはり雑な感じにはなっていない。また別の曲ではチャリンという鈴鳴り感も表現できている。ボーカルもシャープでありつつも嫌な刺さり方はせず、高音のまとめ方もうまいという印象だ。高音にも低音にも過剰ではないほどよいアクセントが加えてあり、やはりより「楽しい」再生を見せてくれる。

ベースについてはエリカ・バドゥさんのライブ盤「LIVE」からの曲でもチェックしてみる。CDからリッピングの44.1kHz/16bit音源だ。

このライブでは5弦ベースが活躍しており、その特徴を生かした低い音域でのフレージングが印象的だ。そのベースの輪郭はバキッと硬質な感じではなく、スラップ奏法のアタックの弾け方も落ち着いた感触。ゴリゴリのファンク感は少し薄れる。しかし持ち味であるナチュラルな太さは発揮されており、特に低い音程をロングトーンでドーンと伸ばす場面の、その沈み込みっぷりなどは実に良好。総じてやはり、シビアすぎずほどよい遊びを持たせた音色とグルーブが持ち味。

次ページ続いてはAudioQuest「Dragonfly」

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