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山之内 正が徹底試聴

ヤマハ「CD-S3000」「A-S3000」速攻レビュー − 新フラグシップの実力を検証

公開日 2013/07/11 13:10 山之内 正
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S3000シリーズを試聴! ヤマハHi-Fi最上位モデルの実力を試す

CD-S3000でヘンデルのオルガン協奏曲(ハイブリッドSACD)を聴くと、低音から高音まで澄み切った音場が広がり、耳が研ぎ澄まされるような感覚を味わった。オーケストラの低弦とオルガンが同じ音域で重なってもそれぞれの音色を明瞭に描き分ける描写力があるし、通奏低音が刻むリズムやチェンバロの装飾音符など、オーディオ再生では目立ちにくい楽器の音も高い分解能で浮かび上がってくる。


試聴中の山之内氏
ジャズのデュオではボーカルとベースそれぞれの音像が互いににじむことなく、鮮明なイメージが並び、密度の高いサウンドが展開した。デジタル出力をオフにするピュアダイレクトモードで聴くと、奥行き方向に音場が深みを増すので、アナログ接続時はお薦めだ。

次にCD-S3000のUSB端子にパソコンをつなぎ、ハイレゾ音源を聴く。PCM音源の室内楽は楽器の周囲に広がる余韻に深々とした立体感があり、ファイル再生のメリットを聴き取ることができた。DSD音源ではエッジを立てない素直な質感と生々しい臨場感に感嘆する。


PCとCD-S3000をUSB接続して再生
透明度の高い感触はプリメインアンプのA-S3000にも共通して聴き取ることができた。特にCD-S3000でデコードしたハイレゾ音源を本機で鳴らすと、楽器が前後に並ぶステージがそのままリスニングルームの空間を満たし、空間再現力の高さに圧倒される。どの音域でも音の立ち上がりに密度の高いエネルギーが乗り、それぞれの楽器の音色の特徴を忠実に鳴らし分ける点にも注目したい。

その力強い立ち上がりは、もちろん、ディスク再生でも実感することができる。ムラヴィンスキーが振った《悲愴》を復刻したSACDでは、弦楽器の厚く緻密な音を突き抜けて金管楽器の鮮烈なサウンドがまっすぐに飛んできた。チャイコフスキーが意図した通りのダイナミックな響きが目の前に広がり、その温度感の高さに強い衝撃を受ける。

精度の高い空間表現力を身に着けつつ、聴き手の耳にしっかり届く到達力のある音を引き出す。そこにS3000シリーズの魅力が凝縮されていると感じた。

山之内 正 プロフィール
神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。大学在学中よりコントラバス演奏を始め、東京フィルハーモニー交響楽団の吉川英幸氏に師事。現在もアマチュアオーケストラに所属し、定期演奏会も開催する。また年に数回、オペラ鑑賞のためドイツ、オーストリアへ渡航。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。

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