[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第61回】絶対領域 OF ROCK! ロックなヘッドホンでロックの名曲を聴く
■Marshall Headphones Monitorで聴く、ジミヘン、Van Halen、Deep Purple…
まずはMarshall Headphones Monitorから見ていこう。
ルックス面では、Marshallアンプのテイストを色濃く継承しながらも、仕上げが実によいことが特徴だ。Marshallのアンプというと無骨な印象があるが、このヘッドホンは全体の印象としてはそのテイストを受け継ぎつつ、手にして細部を確認すると実に細やかに上質に作り込まれている。
また「Monitor」という名称からはスタジオモニター的なものが想像されると思うが、実際にはポータブル用途も意識した作りになっている。サイズ感もオーバーヘッド型としてはそれほど大柄な部類ではなく、外出時に使うのに無理はない。というか、これを買ったら外で見せびらかしたい人も多いはず。
ルックス面の他に特徴的な部分としては「F.T.F.(Felt Treble Filter)」システム。名前通りの「フェルト素材の高音フィルター」だ。イヤーパッドがマグネットで簡単に取り外せるようになっており、そこを開けるとドライバー前面にフェルト製のフィルターが配置されている。これがある状態ではサウンドがややソフトになり、外した状態では高音の抜けが良くなるとのことだ。
では実際に聴いてみよう。フィルターはとりあえず装着した状態で聴き始める。
・ジミ・ヘンドリックス「Voodoo Child (Slight Return)」
まずMarshallアンプの名演と言えば外せないジミ・ヘンドリックスさん「Voodoo Child (Slight Return)」。スタジオ録音では様々な機材を使い分けていたとのことなので、実際にMarshallなのか確信は持てないが、イメージとしてはMarshallの音だ。
冒頭のギターのみで始まる部分の、空間性のクリアさにいきなり感心!ワウを踏み込んだ柔らかな音色とぴちゃぴちゃとしたリバーブ成分が静かに深く響き、曲の世界に一気に引き込まれる。特に高音域の再現に透明感と細やかさがあることで、この場面のこの雰囲気をうまく引き出せていると言える。
そしてそれを「溜め」として、ファズを全開にしての爆音ギターが始まるわけだが、音色の抜けや爆音の中でのダイナミクス表現も文句なしだ。また音色のシャープな成分を存分に出しながらも、耳障りではない豊かな音色であることもポイント。ここも前述の高音の再現性が発揮されているところだろう。ギターの倍音の高音成分が充実していることで、鋭さと豊かさが共に再現されている。ギターのボリュームを絞った音と思われる、ファズを通してのクリーンに近い音色の心地よい硬さも、同じく見事に再現されている。
さて、ここで前述のフェルトを外してみた。すると音調はやや硬質な方向にシフトする。ギターのファズの音色で言うと、倍音の芳醇さよりも基音中心のストレートさが強まるような印象だ。僕としてはフェルトを通した方が好印象だが、とにかくフェルトの有無で音の感触を調整できることは確か。これは有用な機能だ。
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