[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第61回】絶対領域 OF ROCK! ロックなヘッドホンでロックの名曲を聴く
・Motorhead「Ace Of Spades」
荒っぽい!しかもヘッドホン側で無理に荒っぽくしたとかヘッドホンがローファイで荒っぽくなってしまっているとかそういう感触ではなく、音源から入力されてきた暴れを手加減なしでそのまま振動板に伝えているような感触だ。どの音源を聴いてもダイレクト感があるが、それがこの曲では特に発揮される。綿密なチューニングの成果なのか、余計な手を加えずにストレートに作った結果なのか、どちらにせよ不要な手心が感じられない、気持ちのよい暴れっぷりだ。
繰り返し触れてきた音色の明るさも、ここでは完全に好ましい方向に作用している。音色も空気感もカラッとドライで抜けが良い。乾燥した荒野の一本道を大型バイクで爆走するような、いかにもモーターヘッド的な光景が目に浮かぶサウンドだ。
こちらも上原ひろみさん「MOVE」や相対性理論「ミス・パラレルワールド」などいつもの試聴音源でもチェック。結果こちらもなかなか悪くない。ハイハットシンバルが明るい音色で抜けるところやボーカルの少しのシャープさなどには本機の個性が現れる。しかしそれらも全体のバランスを崩すような悪目立ちはせず、ほどよい味付け程度のことだ。ベースの厚みなど低音側も十分にしっかりしており、不足は感じられない。
実は以前にMotorheadphonesの他のモデル(Ironfist)を聴いたときには音の荒っぽさが良くも悪くも目立ちすぎる印象だったのだが、このMotorizerはより一般的な意味での音の良さも獲得している。モーターヘッドらしさを維持しながらも洗練された印象だ。
というわけで「ロックなヘッドホンでロックの名曲を聴く!」をやってみた。Marshall Headphones Monitor、Motorheadphones Motorizer共に、期待以上のサウンドだ。
Marshall Headphones Monitorは、マーシャルらしい迫力と透明感を兼ね備える高音が特に大きな魅力で、ギターサウンドにはそれが特に反映されている。また実売目安3万4800円となると、ロック一点勝負で買うにはちょっと…と考える方にも、いやこれ、普通に何を聴いてもいい音だよ!とおすすめできるトータルクオリティも備える。
Motorheadphones Motorizerは、明るく抜けの良い高音が持ち味で、良い意味で深刻さを感じさせないサウンド傾向。とはいえ、こちらも実売目安1万6800円なので、解像感や低音の厚みといった要素も確保。Monitorほどではないが十分なオールマイティーさも備えている。
「Marshall」「Motorhead」という名前に反応し、そのルックスに歓喜する人が使ってこそいちばん楽しめるヘッドホンではある。しかしそういった予備知識なしでも、このルックスとサウンドに魅力を感じる方もいるのではないだろうか。まずはその“ハードタッチなルックス”を確認してみてほしい。
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。 |
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