[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第62回】高橋敦、ガチ購入! GENELECのパワードモニター「6010B」導入ストーリー
■高橋敦がガチ購入を決めた6010Bの実力とは?
何しろ空間表現が秀逸だ。ヘッドホン再生と比べてとかニアフィールド再生にしてはとかそういう断り書きなしに、相当に上等なスピーカーシステムにも匹敵するのではないかと思えるほどに、立体的な空間を見せてくれる。
そしてもうひとつ特に優れているのは音色の質感。ある音色からはざらつきや粗さを、ある音色からは優しい柔らかさをといった具合に、手触りを豊かに描き出す。
様々な音源でチェックしたが、いやチェックというか購入後は普通に毎日様々な曲を聴きまくっているのだが、ここでは特に全天候型ポップユニット相対性理論の「ミス・パラレルワールド」での印象を述べていこう。
エレクトリックギターの空間性が素晴らしく秀逸だ。まずは単純に定位、つまり音の配置が明瞭。目の前に広がる空間の定位置にギターがぴたっと収まっており、それがまた空間の広がりを意識させるという好循環だ。定位の明瞭さにはもちろん音像自体のブレのない明瞭さも貢献している。計算されたキャビネット形状による指向特性の向上、ネットワーク回路での位相特性の調整などの成果が、確かに発揮されているところだ。
音を揺らして重ねるコーラスや遅らせて重ねるディレイといった空間系エフェクトの効果がより生かされていることも、ギターの空間性をさらに高めている要因だ。エフェクトをかける前の原音とエフェクトをかけた後のエフェクト音が共にクリア。明確にぴたっと定位する原音とその周囲に揺らぐエフェクト音の重なりが、実に綺麗に再現される。
ギターの音色自体もパキッと芯が通っていて輪郭は艶やか。ちょっと硬めに炊いた白米のような感触だ。ギターの音を喩えて白米とは我ながら妙な表現だがともかく、僕が期待するような、あるいは期待以上の音色だ。
最初に述べた音色の質感という部分では、ハイハットシンバルとボーカルが特にわかりやすい。ハイハットシンバルはまさのその実物の表面の質感のような、金属質のざらつきを感じられる音色だ。描写の解像度が高いおかげで、質感を構成する粒子の一粒一粒が描き込まれている。そんな印象を受ける。
やくしまるえつこさんのボーカルは柔らかなタッチ。彼女の声は倍音成分が豊かで、オーディオ機器の側がその成分をどう拾い上げるかによって声のタッチが変わりやすい。本機の場合は、おそらく高音がかなり上まで綺麗に伸びているからだろう、声の高音がふわっとほぐれて柔らかな感触になっている。これはもちろん好ましい傾向だ。モニター機というとシャープな描写を行うイメージがあるかもしれない。しかし本当に上質なモニター機は、シャープな音はシャープに再現するしソフトな音はソフトに再現する。本機もその域に達している。
さてしかし小型スピーカーの弱点は低音だ。本機のその点はどうだろう?