[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第68回】「僕得」な “ハイエンド開放型ヘッドホン” オススメモデル、AKG「K712 PRO」
■K712 PROのスペックに迫る
まず新型ドライバーについて。何か特別な技術が謳われているわけではないが、「従来のオープン型ヘッドホンでは再現が難しかった低域も、鮮明かつ量感豊かに出力」とされている。イヤーパッドは「耳の回りの形状に合わせて自在に変形する低反発素材を採用し、ドライバーが発した音を余すことなく鼓膜に届けることが可能」とのことだ。
この2つの合わせ技、「新型ドライバーが叩き出す低音を低反発イヤーパッドの密閉度によって余すところなく鼓膜に届ける!」こそがK712 PROのポイントと言えるだろう。
その実際の威力は試聴レビューとして後ほど詳細にお伝えするとして、その前にこのヘッドホンの細かな特徴をいくつか押さえておこう。
まず、いくら音が良くてもこれがまずいと音楽をいまひとつ楽しみきれない大切な要素、装着感。K712 PROはこの点も良好だ。
イヤーパッドは、内部のクッションが前述のように低反発素材で、表面はベロアとなっている。個人的には革系の素材の方が肌触りも見た目も好みなのだが、密着度という意味ではベロアの方が稼げるだろう。頭部を挟み込む側圧の強さも適当。低反発素材と相まって、不快ではない範囲で十分な固定力が確保されている。
そして同社のスタジオおよびモニター用ヘッドホンに共通する特徴として、ヘッドバンド部分にはセルフアジャスト機能が搭載されている。これのおかげでヘッドバンドの長さを自分で調整する必要はなく、ただ普通に装着するだけで自動でフィットする仕組みだ。
このアジャストの具合は剥き出しで搭載されているヘアゴムのような伸縮性のあるひもによって実現されており、耐久性に不安を覚える方もいるかもしれない。まあしかし長年の採用実績があるので、たぶん大丈夫だろうし、万が一の場合にも修理対応が期待できる。
さて、ヘッドバンドの裏にも注目だ。以前のK702ではヘッドバンドの裏にいくつかの突起が並んでいた。何かしらの狙いがあっての仕様だったのだろうが、頭頂部が痛いなどの不評をよく目にした部分だ。その声を素直に受け止めてかその後に仕様変更が行われ、その突起はなくなった。それを受けて、K712 PROは最初から突起なし。その部分を気にする必要はない。なお素材は本革だ。
ケーブルは当然着脱式。ストレートコードとカールコードが付属する。端子は片方のハウジングにまとめられており、両側出しに比べて取り回しの点では有利だ。