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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第72回】iPhoneでハイレゾ再生、どっちを選ぶ?「HF Player」「FLAC Player」を徹底比較

公開日 2014/01/17 13:49 高橋敦
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■いよいよハイレゾ再生! FLAC PlayerとHF Playerの音質を比較試聴

まず印象の概要としては、FLAC Playerは良くも悪くもアプリの存在を意識させない。標準のミュージックアプリがそのままハイレゾ対応になったらこういう音かなと思わせる。強いて言えばHF Playerとの比較では、ややハードタッチで芯の強い音だ。

HF Playerは音の艶や透明感が際立つ。なのでFLAC Playerと続けて比べて聴くと、演出された美音と感じる方もいるかもしれない。しかし聴き込めば、それは作為的な音の作り込みではなく、音源のそれに忠実な美しさであることに納得できると思う。

では曲ごとに述べていこう。

まずは上原ひろみさんのピアノトリオのアグレッシブな演奏が光る「MOVE」。これは192kH音源だ。この曲でのFLAC Playerの強みは音像の明確さ。例えばハイハットシンバルは前述の芯がビシッと通っている感触が秀逸。ベースも特に低い音域でのフレーズまで、音程感や輪郭が明瞭だ。それらによってリズムの印象がビシッとカッチリとしており、この曲の複雑なリズム構造の再現性が高まる。

対してHF Playerの音色の艶も魅力的。それを特に感じられるのはピアノだ。音色の角を絶妙に落とした艶やかさが際立つ。またアンサンブル全体の印象もカチカチとした感じは弱まり、落ち着きと厚みを感じさせる。それでいて細かな描写のシャープネスを落とすこともなく、情報量も豊かだ。

Daft Punk「Give Life Back to Music」は、最新にしてダンスクラシック的なアプローチ。こちらは88.2kHz音源。FLAC Playerで印象的なのは、ハイハットシンバルの細かなフレーズやそのダイナミクスの明瞭さ。艶とか響きとかいった要素を特には強調しないことが功を奏してか、音の本体の見え方が明確。ドラマーの演奏ニュアンスやその意図までがダイレクトに伝わってくるように感じられる。

HF Playerで印象的なのはベースの音色の柔軟性。そのためFLAC Playerでの印象より、全体のグルーブも柔らかく弾む。どちらがよい、正解だというものではないが、この曲についての僕の好みでいえばこちらの方がしっくり来る。また音色の艶やかさはこちらでも発揮され、特にギターのカッティングで顕著だ。

さて、ハイレゾではないCDフォーマットの音源ではどうなるだろうか?標準のミュージックアプリも交えて聴き比べてみた。曲は坂本真綾さん「30minutes night flight」。ミュージックアプリで聴いてから続けてFLAC Playerで聴くと、違和感はない。強いて言えば、この曲の特徴的な要素である、子音等を強く出して言葉を刺してくる歌い方のその刺さる成分、その出方が少し綺麗になって聴きやすいかなという程度。あと、音像が少しだけ全体に大柄かもしれない。

HF Playerではボーカルの艶と透明感が印象的だ。ハイレゾ再生時だけではなく、この音源で標準のミュージックアプリと比べてもそう感じられるということは、そこはこのアプリの持ち味と考えてよいだろう。また他にはアコギのカッティングの鈴鳴り感、粒立ち、抜けが、ミュージックアプリよりもFLAC Playerよりも心地よく感じられる。

HF Playerではアップサンプリングも試してみた。この曲とDACの組み合わせの場合、44.1kHzの4倍の176.4MHzにアップサンプリングされる。量子化ビット数の処理については不明。いずれにせよ音が激変するものではないが、全体の奥行き感、ドラムスの立体感などが良くなるかな、という気はする。

アップサンプリング設定。「48kHzモード」は488.2kHz系に対応していないDACへの対応策として、元データが44.1kHzでも非整数倍の96/192kHzに変換して出力するモード

44.1kHz→176.4kHzにアップサンプリング(左上に注目)。なお切り替え時にはフェードインアウトにしてノイズを出さないように配慮されている

最後にHF PlayerでのDSD再生。やくしまるえつこさん「ロンリープラネット」をCDフォーマットのFLACとDSD 5.6MHzで聴き比べると、これは繰り返して述べてきた音の艶がさらに際立つ。こういう音を聴いてしまうとDSD万歳と言いたくなる。

DSDの出力形式設定。ネイティブ伝送・再生するには「DoP」を選択する。DSD非対応DACとの組み合わせでは「PCM」に変換して出力

DSD再生中。DAC側の処理の表示が「DSD 5.64MHz」となっていることを確認できる

ただしこの曲はCD版とDSD版は異なるバージョンであるので、音の違いがフォーマットの違いなのかミックスやマスタリングの違いなのかというのは判断しにくい。しかし制作者がどのような意図を込めて(どのような音を狙って)DSDマスタリングにしたのかというのはしっかり伝わって来ていると思える。

…というわけで今回は、カメラアダプタの件で注目が高まるiOSハイレゾ再生アプリの定番と新鋭をチェックしてみた。正直なところ、機能、使いやすさ、音質のどれもが、取材時のバージョン(FLAC Player 2.0.1、HF Player 1.0.6)ではHF Playerに優位を感じる。FLAC Playerの巻き返しはあるのか。さらなる新鋭の登場もあるのか。期待しつつ注目しておきたい。


高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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