<山本敦のAV進化論>第8回
ハイレゾ対応「Xperia ZL2」の音質をチェック − “ウォークマン”F880と聴き比べてみた
クラシックは以下のタイトルを試聴した。
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」/ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 作品95「新世界より」 第4楽章:フィナーレ(アレグロ・コン・フオーコ)(96kHz/24bit FLAC)
各帯域のエネルギーのバランスが整っていて、自然なリスニング感が心地良い。特に高域にかけて伸びやかで透明感のあるサウンドが好印象だ。弦楽器のハーモニーは響きを色濃く再現する。低域のアタック感やエネルギーの押し出し感はF880に譲るものの、金管楽器のトーンの滑らかさや、打楽器のタイトなアタックと引き締まった音の輪郭はXperiaならではの持ち味として捉えて良いと思う。立体方向に空間を広げていく展開力に秀でていて、S/Nも良いので細かな音もすっと感覚に飛び込んでくる。広大なオーケストラのスケール感がよく丁寧に表現されていると思う。
ポップスは中森明菜の「ベスト・コレクション 〜ラブ・ソングス&ポップ・ソングス〜」から『ミ・アモーレ』(96kHz/24bit FLAC)を試聴。F880は中域のまとまったアタック感が特徴的で、リズムセクションの肉厚な弾力感と軽快さが光る元気なJポップ向けのサウンドというイメージを常々持っていた。比べてみると、Xperiaではボーカルは上品で大人しく聴こえるが、より繊細で中森明菜のオンナっぽさが引き立ってくるイメージ。豪華なバックバンドの演奏の中にあって、センターの定位も明瞭だ。透明感が高く、パーカッションなどの手の込んだアレンジも丁寧に拾い上げる。
ジャズはビル・エヴァンス トリオ「Waltz For Debby」から『Milestones』(192kHz/24bit FLAC)を試聴。解像感が非常に高く、ダイナミックレンジが広い。ピアノのタッチの強弱が明快に再現される。ドラムスの疾走感も清々しく、シンバルやクラッシュの空間に棚引きながら消えていく余韻もきめが細かい。低域の音色も彫りが深く、立体感のあるグルーブを描き出す。
ボーカルはJane Monheit「The Heart of The Matter」から『Sing』(88.2kHz/24bit FLAC)を聴いた。F880ではわずかにボーカルの「サ行」が強めに感じられることがあったが、Xperiaではそれが整えられていて優しい表情が見えてくる。音楽のダイナミズムを失うことなく、モニター的に忠実でナチュラルな「人の声」を再現する。F880よりも声の線がややスリムになるが、芯が強く、高域は凛としたのびやかさが持ち味。低域は自然な厚みとふくよかさを備えながら、しっかりと安定したリズムを刻む。アコースティック楽器の音色にも深みがある。
最後にDaftPunkの「Random Access Memories」から『Doin' It Right (feat. Panda Bear)』(88.2kHz/24bit FLAC)をチェックした。低域の量感はF880の方が分厚く力強いが、Xperiaの方がやや中低域との分離が明瞭なのでボーカルの表情も輪郭が引き締まっている印象だ。曲の中盤、打ち込みのベースにシンセサイザー、ボコーダーとメインボーカルの全パートが重なり合うパートでは、中央にボーカルを浮かび上がらせながら、バックの演奏も立体的に細かな部分まで描写される。
■NYの著名レコーディングスタジオの音場を再現する新しい「ClearAudio+」を搭載
Xperia ZL2ではソニーおすすめの音質設定「ClearAudio+」に新たなアレンジが加えられている。今回はXperiaのサウンドを開発しているエンジニアが、アメリカ・ニューヨークの著名レコーディングスタジオに足を運び、ミキシングルームでプロデューサーが座る位置から、モニタースピーカーの位置や残響音を計測して作成したデータベース情報を元にして、「VPT(Virtualphones Technology)」の音場再現アルゴリズム技術を調整し直したのだという。
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