<山本敦のAV進化論>第9回
業界最小「40型の4Kテレビ」を出す理由とは? REGZA 「40J9X」レビュー&インタビュー
かなりの至近距離で見ているのにも関わらず、パネルに映像が映し出された直後、気がついたらさらにテレビの方へ身を乗り出していた。目を凝らしてみても画素がなかなか見分けられないほど緻密な映像だ。これは以前、筆者が映像制作を学んでいた頃に見ていた16mmフィルムや、銀塩写真のポジフィルムに近い感触だ。さらに、映写機で投写された映像に比べ明るさが均一なため、立体感だけでなく瑞々しいエネルギーを感じる。
東京スカイツリーの展望室から望む夜景は、明部と暗部のコントラストが自然なバランスに整っており、被写体の輪郭や平坦部に表れがちなノイズもよく抑えられている。50型超の大画面でみる4K映像と比べてどちらがより優れているというものではないが、40J9Xで見る4K映像は、目で捉えた本物の被写体とサイズ感がより近く感じられる。“脳内没入感”のようなものが極めて高く、パネルの画素も気にならないので、現実の情景により近い映像として知覚されるのだ。
続いて映画『華麗なるギャッツビー』を、映像メニューを「映画プロ」に切り替えてから視聴した。色が非常に派手な作品だが、色合いの微妙な違いと陰影感、人物の肌や衣装のテクスチャーなどの質感も細やかに描き上げる。映像情報の極めて細かなところまですくい上げてくるようだ。
アニメはMGVC収録映像のサンプラーBDを視聴。映像メニューを「映像プロ」に設定して、コンテンツモードの「アニメ」から「ハイビットBD」を選択した。「ハイビットBD」では映像に含まれる微少信号もそのまま出し、階調を引き立たせる。グラデーション部分の再現が非常にきめ細かく、かつ無駄な強調感もなくナチュラルに再現される。画面にがぶり寄って見てみても画素の粗さがほとんど気にならないのはこれまでにない感覚だ。
■画づくりの狙いを開発陣に訊く
40J9Xの画づくりで特別に注力したポイントについて、映像設計を担当した東芝デジタルメディアエンジニアリング(株)の住吉肇氏、東芝ライフスタイル(株)の永井賢一氏に詳しく話を聞いた。
「Z9XとJ9Xの各モデルとも、パネルごとに素性が異なっていますが、デジタルシネマの色域であるDCI比では“ほぼ100%”に近いカバー率を実現している点は同じです。近距離で視聴すればそのぶんノイズも目立ちやすくなるので、40型のパネルはそこからさらに独自のチューニングを行っています」(永井氏)