<山本敦のAV進化論>第10回
4K試験放送は結局どんな内容に? ー 詳細や今後の戦略をNexTV-Fに聞く
■地デジやBSでの4K放送の可能性
これまで紹介してきた通り、今回の4K試験放送は124/128度CSデジタル放送を用いて行われる。将来、4K放送が地上デジタル放送やBSのチャンネルで展開される可能性はないのだろうか。元橋氏に訊ねた。
「今のところ4K放送の可能性は124/128度CSデジタル放送とケーブル、IP放送に絞られていて、地上派で4K放送を行う方針はまだ示されていません。主な理由は2つあります。一つには、新しい4K放送のチャンネルを起ち上げようとしても、周波数帯域にまったく空きがないからです。
ふたつめは、2011年にデジタル放送への完全移行が終わった直後なのに、4K化を余り早く推進してしまうと、かえって様々な混乱を生んでしまうと考えているからです。
BS・CS放送は元々画質などのクオリティにこだわる視聴者の方が多いので、対応機器への買い換えや買い増しを比較的おすすめしやすいのですが、一般の方々が多く利用する地上波放送では、今の時期での買い換えは余りにインパクトが大きく性急なことであると考えています」(元橋氏)
BS衛星放送で4Kを展開する場合にも、同じく帯域幅の確保という大きな課題が横たわっていると元橋氏は説明を続ける。
「BSについては、現在難視聴対策放送で使ってる17番トランスポンダ(中継器)が2015年3月に終了する予定で、それ以降の利用方法については行政側でも取り決められていません。仮に“更地”になるのであれば、4Kや8Kの放送ができるという期待もあります。
でも当然ながら、難視聴地域の地上デジタル放送視聴ついても何らかの対策を立てた上での話ということになります。あるいは更地にはなるものの、モバイルネットワーク通信など他の用途が優先されることも考えられます。
そこで浮上してきたのが、110度CSデジタルの“左偏波”を利用する方法です。通常の右回りの電波と逆回りのチャンネルを使うという技術です」
この左偏波は現在使用されていないため、事実上“更地”であるといえるのだが、元橋氏によればそれは「未開の更地」であり、アンテナをはじめ、そこから受信機につなぐ宅内配線まで、導入のためには全て新しいシステムを設置する必要が出てくることが課題となる。
また右左の電波が混在してチャンネル数が倍になっても、1本のケーブルの中に複数のチャンネルを渡す技術が存在しないため、結果として宅内に2本の配線や選局スイッチを敷く必要が発生するため、それなりに導入のハードルは高くなる。
結果として、試験放送からスタートする124/128度CSデジタルの試験放送を着実に育てながらユーザーを増やし、本放送へとつなげていくことが、今のところは一般の視聴者ユーザーにとっても一番負担の少ないかたちになる。