【特別企画】連続レビュー第2弾
ソニーの万能コンポ「MAP-S1」レビュー(後編) CD資産も最新ハイレゾも高音質再生!
■ハイレゾの魅力を引き出す高い基本性能
まずはハイレゾの実力を試すべく、PCとのUSB接続で、中森明菜の「スローモーション」(96kHz/24bit FLAC)を聴いた。1982年にリリースされ、当時中学生だった筆者もテレビやラジオを通じて毎日耳にしたヒット曲だ。
記憶から大まかな音質傾向を予想していたのだが、良い意味で大きく裏切られた。レンジが広く躍動的。ドラムのダイナミックな立ち上がりと瞬時の収束でコントラストが際立ち、静寂が心を揺さぶる。初々しいヴォーカルは、何処までも伸びる高域が美味しい部分を引きだし、当時の印象とはまた違った魅力を発見できた。音源のハイレゾ化に加え、ハイレゾならではのクオリティーを引き出すために施された数々のハイファイ的アプローチが効いているようだ。
■手持ちのCD資産をすべて聴き直したくなる
次に筆者のメイン音源であるCDを試聴。ハイレゾ音源も急速に増えているが、この世の音源全てがハイレゾ化されているわけでは、もちろんない。自身で買いそろえてきたCDは当然お気に入りのものばかりだし、既に手元にある資産でもある。
まずは筆者のリファレンスであるケイコ・リーのアルバム「Beautiful Love」から「ドント・レット・ミー・ビー・ロンリー・トゥナイト」を再生。数えられない程のCDを聴いてきたが、このアルバムは格別に録音が良い。中でも同曲はヴォーカルとギターのシンプルな構成で、音質の評価にはうってつけだ。
再生に際しては、「DSEE HX」のオフとオン(オート)を切り替えて比較。オフの状態でもシステムのサイズ感を超える素晴らしい音を奏でるが、オンに設定すると音場がスピーカーの存在を無にして左右へ滑らかに展開し、さらに奥行きや上下の広がりも加わって、音に優しく包み込まれる感覚が心地良い。音場は広がってもヴォーカルはピシッとセンターに定位して膨らまず、解像感豊かに肉声のディテールを描き出す。同曲で印象的なギターのカットのキレ味や、余韻の透明感も、「DSEE HX」をオンにすることでさらにその味わいが増す。同じCDの音がこれほどまでに変化するなら、青春時代に聴き込んだCDがどのように聞こえるのか。すべて聴き直したくなる。
新しい楽しみ方としては、最近標準機能となりつつあるAirPlayに加え、Wi-Fiを利用したDLNA再生やBluetoothが利用でき、これらはソニー独自のアプリ「SongPal」でスマホやタブレットから直感的に操作できる。「SongPal」では、インターネットを利用したMusic Unlimited、Tuneln Radio、radikoなどや、手持ちのDLNAサーバーへのアクセスも可能で、本体の各種操作も行える。ネットワークオーディオ再生も高音質な本機だが、操作性の向上で、より活用度と楽しみの幅が広がりそうだ。
かつてのオーディオ少年が苦心して組み上げた大がかりなシステムも、それはそれで大いに楽しかったが、現代の大人は時間やコスト、スペースが限られる場合が多い。「MAP-S1」と「SS-HW1」の組み合わせは、オーディオを再スタート、または新たに始めるのに適している。大人がのめり込めるだけの使い勝手の良さとクオリティーを備えていることが最大の魅力である。
(鴻池賢三)