<山本敦のAV進化論>第20回
超高精細WQXGA有機ELタブレット「GALAXY Tab S」レビュー − 10型/8型両方でAV機能を試す
本体を横に構えると、フレーム上部左右にちょうどステレオスピーカーがくる設計。動画再生時には迫力あるサウンドが楽しめる。サイドフレームにはmicroSDカードスロットとmicroUSB端子を装備。背面のトップにはカメラユニットとフラッシュが置かれている。
本機では有機ELディスプレイの画質を中心にチェックした。WQXGAディスプレイなのでコンテンツもフルHDを超えるものをと思いYouTubeで公開されている4K動画を再生してみたところ、花畑の映像では深紅の花弁の陰影とテクスチャーをリアルに再現。
映像全体の色合いは鮮烈という印象ではなく、どちらかといえばナチュラルで落ち着いたコントラスト表現を基軸に、奥行きの深いリアルな空気感を丁寧に描くイメージだ。花畑の奥の方向にカメラが移動する映像では、被写体の輪郭ノイズを抑えながらディティールを引き出す。明暗の対比のバランスがとても自然で映像に説得力がある。
また10.5インチのサイズ感がテレビのビューアーとして最適ではないかと考え、「TVSideView」アプリから自宅のBDレコーダーのチューナーを経由してテレビ番組を視聴した。映像のサイズはやはり迫力十分。画面の両サイドに設けられたステレオスピーカーの音声もワイドに広がって、コンテンツの臨場感が引き立ってくる。
視聴時のネットワーク環境にもよると思うが、下り28Mbps前後の筆者宅でテストしたところスムーズなストリーミングが楽しめた。オクタコアエンジンの処理性能の高さに依る部分が大きいのだろう。映像は穏やかなカラーバランス。平面の階調表現もナチュラルだ。
ただし、TVSideViewアプリで表示できる映像の最大解像度は720pまでなので、GALAXY Tab Sの高精細なWQXGAディスプレイに映すと映像の粗さが若干目立つようになり、ニュース番組のテロップの輪郭にノイズが表れることもあった。
次に、GALAXY Tab Sのカメラは4K動画の撮影には対応していないため、GALAXY S5で撮影した4K動画をmicroSD経由で再生してチェックしたいと考えた。ところが実際にプリインされている「ビデオ」アプリで再生を試みると、4K動画のファイルを選択すると同時に「動画コーデックが未対応」というアラートが出て、映像は再生されず音声だけが聞こえるという状態になってしまった。残念なことにGALAXY Tab Sのハードウェアデコーダーが対応する動画はフルHDまでのようだ。「MX動画プレーヤー」アプリのソフトウェアデコードを使えば映像部分も再生はできたのだがコマ落ちが発生してスムーズに見ることはできなかった。
プリインされている「ミュージック」アプリはハイレゾ音源の再生にも対応している。サムスン電子ジャパンのスタッフによれば、音源は192kHz/24bitまでのWAV/FLAC形式のファイルをイヤホン端子から出力した際にハイレゾのクオリティで聴くことができる仕様だという。
音質の傾向はフラットな帯域バランスで、解像表現力が高く輪郭表現の緻密さも特徴としている。ロック系の試聴ではもう少し低域の力強さが欲しいと感じる楽曲もあったが、クリアで自然なボーカルと高域の伸びやかさは本機の持ち味と言える。クラシックのオーケストラではSNと空間描写力の高さが活きてくる。アコースティック楽器は音色も豊かに再現される。
■Side Syncやユニークなマルチディスプレイ機能も搭載
SideSyncはサムスンのノートPC製品で対応してきたマルチデバイスのリンク機能。Samsung GALAXY Appsのストアから無料でダウンロードできる「SideSync 3.0」アプリを、タブレットと、GALAXY S5などAndroid 4.4以上を搭載するサムスン製スマートフォンにそれぞれでインストールすれば、タブレットの画面にスマートフォンの画面を映して操作もできるようになる。
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