<山本敦のAV進化論 第26回>開発者に製品の詳細と展望を訊く
東芝初のウェアラブル端末「WERAM1100」から考える“ウェアラブル”の未来
リストバンド型以外のウェアラブル端末の可能性については、「サイズをさらにコンパクトにすることは可能です。商品展開のバリエーションについては色々なアイデアもありますが、まずはWERAM1100を多くの方々に使っていただいて、得られたフィードバックを元に今後のステップアップを検討していきたいと考えています」と橋本氏。
さらに橋本氏は今後の展望についてこう続ける。
「本機を中心にヘルスケア関連の機能やサービスを充実させていきます。例えばアプリで料理の写真を撮影してクラウドに送り、クラウド上の食品データベースからカロリーを自動算出してログとして記録できるようなサービスも近く導入する予定です。また健康管理に役立つ情報をユーザーにプッシュしていくようなサービスのかたちもつくりたいと考えています。私たちのウェアラブルのテーマは、日常のヘルスケアを様々なユーザーの方々に継続して実践いただくためのサポートツールです。そこからブレることなく製品とサービスの進化を促していく考えです」。
■現代人の多様なライフスタイルに、個別にフィットできるウェアラブルが進化のカギ
「手首に着けて使うデジタル機器」という括りで見てみると、例えば単体で電話やデータ通信ができるサムスンの「Gear S」や、内蔵メモリーに音楽ファイルを入れて音楽プレーヤーのように楽しめるソニーの「SmartWatch 3」など、AVメーカーのウェアラブル端末をとってみてもメーカーや製品ごとに様々なコンセプトの違いがある。
また、一方では「Nike+ FuelBand」のようなスポーツ系のギアもあれば、先日レポートしたカシオの“G-SHOCK”「GBA-400」(関連レビュー)のように、時計をベースにスマートな機能を追加した製品もある、もはや「ウェアラブル」とは、単純にひとつのカテゴリーに括れない、デジタル機器の進化の一潮流なのだ。
今年は様々な展示会に足を運び、色々なウェアラブル端末を見て、触ってきた。ウェアラブル端末はいま流行のジャンルなだけに、来場者を引きつけるマグネットにはなっているが、実際には機能やデザイン、提案性が似通っている製品が非常に多く、機能を増やしたために特徴がぼやけたり、使いづらくなっている商品も少なくない。これからのウェアラブルはオールラウンダーとしての便利さや、「ウェアラブルはかくあるべき」という理想型を追求するのではなく、多様化するライフスタイルや趣味志向に向けて、ピンポイントで徹底して「ある機能」に特化したサポートツールとして進化すべきと考える。
ソニーの平井社長が「ウェアラブルは不動産ビジネス」とよく例えて語っているように、人間には二つの手首しかないし、メガネは身につけられてもせいぜい1つが限界だ。ならば、たとえば手首であれば時計の機能は最低限搭載し、アクセサリーとしてのファッション性はキープしながら、あとは各々が枝分かれしながら、機能を突き抜けさせた先に、ウェアラブル端末の成功のかたちがあるように思う。
WERAM1100は、スポーツなど積極的に体を動かす運動よりも、日々のありふれた行動や健康の維持・増進につながる情報を記録していくために使い勝手を洗練させたウェアラブル端末だ。同じターゲットを狙うウェアラブル商品にライバルも多いが、これから東芝独自のセンシング技術を活かし、ユーザーのニーズをキャッチしていくことができるか、注目していきたい。