フラットかつ調整もできるサウンドが魅力
ハイレゾポータブルプレーヤーに新たな選択肢 ー コウォン「PLENUE 1」を野村ケンジが聴く
音質については、さすが高級モデルというべきだろうか、なかなかのクォリティ。丁寧でジェントルなサウンドキャラクターで、ディテール表現の細やかな、それでいて抑揚表現がダイナミックなので、聴いていてとても楽しい。
いっぽう帯域バランスは、フラットとまでは言わないまでも邪魔になるピークが極力廃されていて、特徴的な演出は皆無。好みのサウンドに仕立てるのは、EQやBBEにお任せと行ったことなのだろう、どんなジャンルの音楽でも聴きやすい。おかげで、溝口肇のチェロ曲からμ'sまで、幅広いジャンルのサウンドが存分に楽しめる。良い意味でのフラットさ、客観的な音作りが、「PLENUE 1」ならではのアドバンテージといえるだろう。
とはいえ、音色的な特徴が全くないわけでもない。低域の粘りの強さ、キレとリアルさだったらリアルさの方をチョイスする趣向性といい、どことなくホームオーディオに近い表現手段を持ち合わせているようにも感じる。もちろん、ヘッドホンミュージックならではの音源の近さや臨場感は十分に確保されているので、全くのイコールではないのだが、PCオーディオなどのスピーカーリスニングがメインの人にも違和感のないサウンドを提供しよう、という意図があるのかもしれない。
このあたりは、価格的な比較対象となる「AK120」はもちろん「AK120II」、“ウォークマン”「ZX-1」とも全くキャラクターが異なっている。まずは素の「PLENUE 1」サウンドを堪能してから、自分にとって、よく聴く曲にとってのベストサウンドなキャラクターを探し出すのも楽しそうだ。
このようにコウォン「PLENUE 1」は、独自のノウハウを活かした良質なサウンドを実現しつつ、音色や操作性に関してはちょっとした遊び心も加えている、個性的な製品に仕立てられている。なかでも、音色的な調整が様々に行え、幅広いユーザーの好みに合わせられているという点においては、既存製品に対して大きなアドバンテージとなっている。なかなか魅力的な製品といえる。
(野村ケンジ)