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“澤田ルーム”でマランツ最新モデルはどのように鳴ったのか?

【イベントレポート】発売直前のマランツ「HD-DAC1」を開発試聴室で聴いた

公開日 2014/10/02 11:55 ファイル・ウェブ編集部 小澤貴信
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参加していただいた方々は、非常に熱心にHD-DAC1のサウンドに耳を傾けていた。ご自身の愛用するヘッドホンを持参された方も多かった。イベント時点ではまだ台数の少ない貴重なデモ機ということで、ご試聴いただく時間は限られたものになってしまった。しかし短時間でも、マランツが“ひとつの完成形”と自信を持つ、そのサウンドを味わっていただけたのではと思う。

愛用のヘッドホンを持参してHD-DAC1のサウンドを確かめていた方も多かった


HD-DAC1の試聴のために用意した各社のヘッドホン

会場にはマランツのネットワークプレーヤー/USB-DAC「NA8005」、SACDプレーヤー/USB-DAC「SA8005」も用意。どちらもUSB-DACとヘッドホン出力を搭載するモデルであり、HD-DAC1との比較試聴も行えた。参加した皆様の感想はこちらのページにまとめているので、ぜひ覧いただければと思う。

今回のメインイベント。澤田ルームでHD-DAC1を聴く

メインイベントはやはり、マランツの開発試聴室、通称“澤田ルーム”でのHD-DAC1試聴である。高山氏は澤田ルームについて「音決めをしているこの試聴室には、私たちも簡単には入れません。ここはマランツのメンバーにとって特別な部屋なのです。一般の方々への公開も非常に希です」と紹介していた。

澤田ルームに設置されたHD-DAC1

三重の扉をくぐって試聴ルームに入ると、マランツの音質担当マネージャーである澤田龍一氏が待っていた。澤田氏はHD-DAC1の試聴に先駆け、まず試聴室について説明をしてくれた。「ここはマランツの製品の音決めをするための部屋です。いわゆる試聴室というよりは実験室と言えるでしょう」と澤田氏。

プレゼンテーションを行うマランツ音質担当マネージャーの澤田龍一氏

澤田ルーム常設のプリアンプとパワーアンプ。写真奥がHD-DAC1

試聴室ができた当時のエピソードも紹介してくれた。マランツが相模原から川崎に移転した際に作られたのだが、最初は2本の鉄道と大通りに挟まれている立地ということで、振動の影響がないか不安を感じていたのだという。そのために防振対策は過剰なほど行ったそうだが、幸いにもビル自体の基礎が非常にしっかりしたものだった。しかも、相模原時代の試聴室の床は耐荷重が数百キロだったのに対して、試聴室を設けたこのビルの1階の耐荷重は10トンもあったという。

試聴室は、ビルの中に長四角の矩体を作り、さらにその中に平行面をとった矩体を入れ、その内側にも壁を作った三重構造。床もフローティングされている。電車の音は一切聞こえず、隣接する試聴室で大音量を鳴らしても気配さえ感じないのだという。遮音率は90dB以上とのこと。空調をフルで入れても暗騒音レベルが非常に低く、音を感じることはない。

「この試聴室で一番高価なのはケーブルです」という言葉に参加者もざわめく

澤田氏はHD-DAC1の試聴を行うために、音質検証を行った際と同様のセッティングを用意してくれた。プリアンプは「SCー7S2」、パワーアンプは「MA-9S2」という構成だ。「よく見ると部品がいろいろ変わっています。新しい部品、回路、線材を常にテストしていて、結果が良ければそのまま居座ってしまうのです。そのうちのいくつかが量産性などを考慮して新製品に採用されることになるのです」と澤田氏は語る。スピーカーはB&Wのフラグシップモデル「800 Diamond」が用意されたが、HD-DAC1の価格を考えると「果たして釣り合うのだろうか」と考えた方もいたかもしれない。

HD-DAC1のプレゼンを行う澤田氏

「ちなみにこの部屋で一番高いのはAudioQuestのスピーカーケーブルです。トータルで1000万円くらいですね。バイワイヤ接続で4本を使っていますが、これでだいたい700万はいきます。なんでそんなに高価かというと、素材が銀なのです。チョキンと切ってぐるっと回すと銀の指輪になる(笑)。インターコネクトもAudioQuestです」と澤田氏は編集部も初耳のエピソードを披露してくれた。

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