【特別企画】連載第1回:“プレミアム4K”モデルを徹底解説
最上位4Kレグザ「Z10X」高画質化の裏付けとは?
■画質ブラッシュアップの最大のテーマはコントラストのさらなる向上
今回の画質ブラッシュアップの最大のテーマはコントラストのさらなる向上である。前作に続いて「ピーク輝度復元」を利用して明るい部分の輝度を高めたことに加え、エリア制御の精度向上によって黒を従来以上に引き締めて深みのある黒を再現する能力を獲得。その結果、黒からピーク輝度にいたるまでのダイナミックレンジが大幅に広がることになる。
エリア制御の精度を上げる具体的な方法の一つは、明るさの検出方法をエリアごとにピークを見る方法から範囲内の平均輝度を検出する方法に変更したことだ。従来の方法ではエリア全体が暗いなかに小面積の明るいピークがあるような絵柄のときにバックライトを十分に下げることが難しいケースがあった。
一方、Z10Xシリーズのバックライト制御は、ピーク輝度の高い部分がある画面でも、平均輝度が低ければバックライトを十分に抑える方向でアルゴリズムの変更が行われている。従来は黒浮きが気になっていたような場面でも十分に引き締まった黒を再現することができるわけだ。暗いシーンが多い映画を暗室環境で見比べると、黒の沈み込みの深さにおけるZ10XシリーズとZ9Xシリーズの違いは一目見れば誰にでもわかる。
■「インテリジェント・ハイダイナミックレンジ復元」で階調表現がさらに向上
ダイナミックレンジの拡大を目で見て実感するためには、たんに明るい部分のピークを上げるだけでは十分とはいえない。白がつぶれることなく、輝度の高い部分のなかでの階調を忠実に再現し、濃淡で立体感を引き出す能力が求められる。そのツールとして新たに採用した「インテリジェント・ハイダイナミックレンジ復元」は、Z9Xシリーズの「ハイダイナミックレンジ復元」をベースに階調表現をブラッシュアップしたもので、空に浮かぶ雲や白い花のクローズアップなど、明るいシーンで頻繁に登場する白く輝く絵柄などに効果を発揮する。
輝度レンジのブラッシュアップが色彩表現の拡大に直結することはいうまでもないだろう。色のカバー率はZ8Xシリーズに比べて約30%向上しており、深みのある赤や鮮やかな青の再現にアドバンテージがある。
DCIとほぼ同等の広色域表現は、6144項目のデータベースを参照しながら64軸で高精度に色の濃さや色合いをチューニングする「4K広色域復元」の成果で、その点は前作のZ9Xと変わらないが、彩度が高い部分での誤差を抑え、本来のなめらかな階調をさらに引き出しやすくなっている点に特徴がある。鮮やかで深みがある色を再現しながら広い範囲の明度で飽和しにくく、立体感豊かな描写を引き出すことに従来機との違いを見いだせるはずだ。また、Z9X同様、4K時代を見据えてITU-R BT.2020規格の入力に対応していることも特筆すべきだろう。