【特別企画】連載第1回:“プレミアム4K”モデルを徹底解説
最上位4Kレグザ「Z10X」高画質化の裏付けとは?
■従来機能も再チューニングでさらなる高画質化
濃密さを保ちつつ色が飽和しにくいのは、再チューニングされた「インテリジェント質感リアライザー」の効果も貢献している。ヒストグラムを256分割して高精度に画素数をチェックし、輝度の度数に応じて階調を作っていたのが従来の質感リアライザーだが、Z10Xでは平均輝度も参照して質感リアライザーの特性をコントロールする方法に変更を行っている。
スタジオ収録の番組など、平均輝度が高い映像では、顔などハイライトが白飛びしやすく、色が飽和する部分が少なくなかった。Z10Xではより自然な立体感を引き出すことに成功しており、人物の描写が立体感を増している。たんにコントラストのダイナミックレンジをアップするだけではそこまでの表現を引き出すのは難しいはずだ。映画など平均輝度の低いコンテンツでは暗部の階調再現を高める効果があり、黒のなかの微妙な明暗差や低輝度領域での発色のブラッシュアップが期待される。
4Kパネルの解像感を活かしてあらゆる入力信号から緻密さを引き出す「4Kマスターリファイン」。その内容もZ9Xからさらに進化している。特に、地デジの番組で目立ちやすいモスキートノイズを抑えてすっきりとした輪郭を再現する「ノイズエリア解析超解像」の効果は一目瞭然で、文字の周辺など、従来のテレビでにじみやもやもや感の原因になっていたノイズをほぼ一掃していることがわかる。輪郭部分と平坦部を識別する精度が向上しているためか、副作用のような現象もほとんど気にならない。その効果は細部に目を凝らさなくても画面全体から伝わってくるし、Z10Xでは4K放送にも適用されるようになったので、これからスタートする高精細番組でも威力を発揮するはずだ。
「絵柄解析 再構成型超解像」のチューニングはZ9XとZ10Xで微妙に異なっている。同技術の基本動作は画素ごとに周辺領域の精細度を検出し、超解像処理のフィルター特性とゲインを制御するというものだが、従来は背景などアウトフォーカスの部分も鮮鋭感を高める方向で処理が行われていた。
一方、Z10Xではぼけた部分にはあえて鮮鋭感を高める処理を行わず、自然な遠近感を引き出す方向にチューニングされているのだ。その結果、背景にノイズが目立つこともなく、手前から遠方に向かってなめらかな奥行き感を引き出すことに成功している。また、最近では4K撮影した映像を2Kにダウンコンバートして収録するBDソフトなども登場しているが、こうしたフルHD映像を4K映像に近い画質(水平解像度4K復元率約90%)で再現することにも成功しているという。
そのほか、動きの速い映像をクッキリ再現する「インパルス駆動モード」の導入や、「ハイビットBD」のシネマモードへの拡張など、画質のブラッシュアップにつながる小変更が数多く行われている。また、Z10Xではゲームモードの映像処理を10ビットから12ビットに変更しているため、グラデーションの再現能力が格段に向上していることも注目に値する。
Z10Xは他社に先駆けてスカパー!プレミアムチューナーを内蔵することで、本機単独で試験放送を含む4K放送を受信できることが最大の特徴だ。その一方、普段楽しむコンテンツの中心はBDや地上デジタル放送が大半を占めるわけで、それらのHDコンテンツからどこまで優れた画質を引き出せるかに焦点を合わせたZ10Xの設計コンセプトも高く評価することができる。