[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第105回】明らかに音が良くなった? “iPhone 6の音質” に今さら迫ってみる
■いよいよiPhone 6の音質をチェック!まずはイヤホン直結でリスニング
まずはイヤホンリスニング、ヘッドホン出力端子にイヤホンを直結した、外出時のごく普通の音楽再生スタイルでの音質をチェック。前述の僕が「あれ?…音、よくない…?」と感じた瞬間の状態だ。なおOSのバージョンによって音が変わる説もあるが、これまた音の良し悪しでOSを選ぶのは難しいので、僕はそこはあまり気にしていない。いずれにせよ今回は、両モデルともiOS 8.1に統一してある。
改めてまずはiPhone 5にて、現在の僕の主なリファレンス楽曲を一通り聴いてみてその印象を耳になじませ…そして同じ曲を音量を揃えたiPhone 6で聴くと…。
…やっぱり違う!明らかに印象が異なり、そしてその変化が僕には好ましい。
違いが特にわかりやすかったのは相対性理論のアルバム「TOWN AGE」からの数曲と、坂本真綾さん「30minutes night flight」。
全体のクリアさの印象がぐっと高まり、空間が心地よい明るさを得る。声やそれぞれの楽器もそのほどよい明るさに照らされてより明瞭。明瞭になったことで細かな粗が出てしまうこともない。むしろ声の細やかなほぐれ、シャープな成分を豊富に含みつつ嫌な刺さり方をしない感じがよりよく伝わってくる。それらの要素は、エレクトリックギターの音色の艶やかさや空間処理の浮遊感、アコースティックギターやハイハットシンバルの鈴鳴りといったところでも実感できる。真綾さんの曲の冒頭からのシンセサイザーによる空間表現も、その広がりに滑らかさも上乗せしてくれる印象だ。
一方、逆に僕の好みからは離れてしまったかも…というところはさっとは見当たらない。僕としては全!面!向!上!に思える。
喜多村英梨さん「掌 -show-」でも印象が異なった。こちらはプログレッシブメタル的なサウンドの曲だ。
アンサンブルのバランスはどちらも整ってはいるが、強いて言えばiPhone 5はディストーションギターが主役だ。対してiPhone 6だとベースやバスドラムにほどよい空気感で弾みもある太さが少し加わってそれらも存在感を増し、ギターとの拮抗感が高まる。
ディストーションギターの音色の表現もニュアンスが少し違う。誰にでもわかりやすいようにギターのエフェクトペダルに喩えると、iPhone 5はBOSS「MT-2」的なジリジリとした粒立ちと細身のエッジ感、iPhone 6はElectro Harmonix「Big Muff」的な飽和感を伴うような厚みと広がりの成分を特に引き出す印象。「誰にでもわかりやすいように〜」はさておき、音色が別物になるわけではもちろんないのだが、同じ音色からその中のどの美味しい部分を特に引き出すかというところに違いがあるということだ。
ということで結論。iPhone 6のヘッドホン出力の音はiPhone 5とはやっぱりけっこう変わっていてその変化の方向性は僕好み!
しかし実は!発売当日レビューの取材&執筆からの帰宅時に「音、よくない?」と感じた僕をさらに決定的におどろかせる事態が、帰宅後にも発生していた。
…な、内蔵スピーカーの音が、圧倒的によくなっている…だと!?