耳に吸い付くフィット感、柔らかで芳醇な音。
デノンの最上位ヘッドホン “Music Maniac” にオンイヤー型登場。「AH-MM300」を中林直樹が聴く
■絶妙なフィット感で音楽に没入させてくれる
サウンドのインプレッションの前に、まず高く評価したいことを述べておこう。それはフィット感である。小型ハウジングのオンイヤータイプの場合、耳にぴたりと装着するのが難しい場合がある。オーバーイヤー型のようにズレ落ちないという、安心感を得られないときもある。個人差もあるだろうが、イヤパッドの厚みや硬さ、ハウジングの形状や傾き、そして側圧など様々な要素がそこには関与するからだ。ところが本機では耳へのフィット感、いや吸着感といってもよいだろう、それが抜群なのだ。
耳の凸部に合わせてパッドが程よく凹む。また、デザインもミニマルで好感が持てる。デザイン上、使用されているのはアルミのシルバーと、イヤパッドやヘッドバンドなどに用いられたブラックのみ。ブランドロゴの表示もさりげなく本体と馴染んでいる。派手さはない。だが、それは奏でるサウンドを顕在化させたようだ。そう感じた理由を、いくつかの音楽を聴いた印象で表してみたい。
■深みとコクのあるサウンド。均衡を保って展開する音場表現も魅力
デビュー25周年を記念してトリビュートアルバムなどいくつかのプロジェクトが企画された高野寛。そのハイライトがブラジル、リオデジャネイロで録音されたアルバム『TRIO』だ。プロデュースはカエターノ・ヴェローゾの息子モレーノ。新曲と「いつのまにか晴れ」や「虹の都へ」などセルフカバー曲で構成される全16トラックを収録。このハイレゾバージョン(96kHz/24ビット)は、まぎれもなく2014年の高音質アルバムの上位に入るだろう。もちろん高い音楽性も伴ってこそのことである。
1曲目の「Dog Year, Good Year」の冒頭から、深みとコクのある音が耳に届いた。音の一粒一粒にリオのしっとりとした湿気が含まれているような印象を受ける。ベース、ドラムスが太く粘り気がある。かといって鈍重にはならない。このサウンドは、デノンのアンプやCDプレーヤー、スピーカーなど他の製品のまさしく同一のものだ。音場もまとまり過ぎず、広がり過ぎずの均衡を保っている。ゆえに、音楽がどっしりとし、落ち着きのある表情を見せる。高野のボーカルも穏やかに響き、このアーティストが25年もの間、多くのファンやミュージシャンに慕われている理由がわかったような気さえした。
■柔らかで芳醇な音はデザインにも現れている
特に映画音楽の作曲家として高名なマイケル・ナイマンの作品にクラシックピアニストのヴァレンティーナ・リシッツァが挑んだ『ピアノ・レッスン〜リシッツァ・プレイズ・ナイマン』。これもハイレゾで配信中だ。原曲はオーケストラ編成が多いナイマンの作品を、ピアノ1台で表現する。本機から聴こえてくるのは、決して分析的な音ではない。柔らかで音同士が調和するように響く。余韻の成分も多く、中規模のホールで聴いているかのようなライブ感を味わえた。また、ピアニッシモから次第にフォルテへと音が力強く鳴り響く様子もなだらかに伝え、高域も耳に刺々しく響かない。
最後に聴いたのはリファレンスのホセ・ジェイムズ『While You Were Sleeping』。やはりこのファイルでも上記2アルバムと同様、優しげな音場を体感した。このアルバムの一つの特長はエレキギターの先鋭的なサウンドにある。他のモデルではそれがやや耳に痛くなる場合もあった。だが、本機はそのエッジをなだらかに切り取って表現した。しかし、単にソフトなわけではなく、音楽のボトムが太くなり、リズムセクションも逞しくなったように思えた。
先ほど述べたように、本機のデザインはこのような柔らかで豊潤な音をカタチとして表現している。何もかもを欲張りすぎず、リラックスして音楽と向き合える、そんな大人のヘッドホンだ。
サウンドのインプレッションの前に、まず高く評価したいことを述べておこう。それはフィット感である。小型ハウジングのオンイヤータイプの場合、耳にぴたりと装着するのが難しい場合がある。オーバーイヤー型のようにズレ落ちないという、安心感を得られないときもある。個人差もあるだろうが、イヤパッドの厚みや硬さ、ハウジングの形状や傾き、そして側圧など様々な要素がそこには関与するからだ。ところが本機では耳へのフィット感、いや吸着感といってもよいだろう、それが抜群なのだ。
耳の凸部に合わせてパッドが程よく凹む。また、デザインもミニマルで好感が持てる。デザイン上、使用されているのはアルミのシルバーと、イヤパッドやヘッドバンドなどに用いられたブラックのみ。ブランドロゴの表示もさりげなく本体と馴染んでいる。派手さはない。だが、それは奏でるサウンドを顕在化させたようだ。そう感じた理由を、いくつかの音楽を聴いた印象で表してみたい。
■深みとコクのあるサウンド。均衡を保って展開する音場表現も魅力
デビュー25周年を記念してトリビュートアルバムなどいくつかのプロジェクトが企画された高野寛。そのハイライトがブラジル、リオデジャネイロで録音されたアルバム『TRIO』だ。プロデュースはカエターノ・ヴェローゾの息子モレーノ。新曲と「いつのまにか晴れ」や「虹の都へ」などセルフカバー曲で構成される全16トラックを収録。このハイレゾバージョン(96kHz/24ビット)は、まぎれもなく2014年の高音質アルバムの上位に入るだろう。もちろん高い音楽性も伴ってこそのことである。
1曲目の「Dog Year, Good Year」の冒頭から、深みとコクのある音が耳に届いた。音の一粒一粒にリオのしっとりとした湿気が含まれているような印象を受ける。ベース、ドラムスが太く粘り気がある。かといって鈍重にはならない。このサウンドは、デノンのアンプやCDプレーヤー、スピーカーなど他の製品のまさしく同一のものだ。音場もまとまり過ぎず、広がり過ぎずの均衡を保っている。ゆえに、音楽がどっしりとし、落ち着きのある表情を見せる。高野のボーカルも穏やかに響き、このアーティストが25年もの間、多くのファンやミュージシャンに慕われている理由がわかったような気さえした。
■柔らかで芳醇な音はデザインにも現れている
特に映画音楽の作曲家として高名なマイケル・ナイマンの作品にクラシックピアニストのヴァレンティーナ・リシッツァが挑んだ『ピアノ・レッスン〜リシッツァ・プレイズ・ナイマン』。これもハイレゾで配信中だ。原曲はオーケストラ編成が多いナイマンの作品を、ピアノ1台で表現する。本機から聴こえてくるのは、決して分析的な音ではない。柔らかで音同士が調和するように響く。余韻の成分も多く、中規模のホールで聴いているかのようなライブ感を味わえた。また、ピアニッシモから次第にフォルテへと音が力強く鳴り響く様子もなだらかに伝え、高域も耳に刺々しく響かない。
最後に聴いたのはリファレンスのホセ・ジェイムズ『While You Were Sleeping』。やはりこのファイルでも上記2アルバムと同様、優しげな音場を体感した。このアルバムの一つの特長はエレキギターの先鋭的なサウンドにある。他のモデルではそれがやや耳に痛くなる場合もあった。だが、本機はそのエッジをなだらかに切り取って表現した。しかし、単にソフトなわけではなく、音楽のボトムが太くなり、リズムセクションも逞しくなったように思えた。
先ほど述べたように、本機のデザインはこのような柔らかで豊潤な音をカタチとして表現している。何もかもを欲張りすぎず、リラックスして音楽と向き合える、そんな大人のヘッドホンだ。