【特別企画】
ケンブリッジのフラッグシップ・セパレート「Azur 851 E/851 W」、その真の実力をここに明かす
英国ケンブリッジ・オーディオはプリメインアンプ等の従来のラインアップに加え、ネットワークプレーヤーからUSB-DAC、BDプレーヤー、スピーカーまで、多くのラインアップを持つ総合ブランドとして、幅広い層から支持を得ている。そんな同社が直球勝負として、送り出したのがここにご紹介するフラッグシップのセパレート・アンプ「Azur 851E/W」である。「オーディオ銘機賞2015」の審査会でも、まるで当然のことのように審査委員の賛辞を得ることができた。同社の最新技術をすべて投入したと言ってもいい。本企画ではこの両機の真の実力を知る人物、井上千岳氏が入魂のレポートをお届けしている。ぜひとも注目していただきたい。
●セパレート・アンプの存在意義
他社のアンプと組み合わせても性能・音質が発揮できる設計
ケンブリッジ・オーディオはいくつもラインアップを持つが、Azur(アズール)は最上位のグループである。その中でも800番台のシリーズは、同社のフラッグシップとなってきた。このAzur 851E/Wもその一環となるセパレート・アンプである。
【Azur 851W SPEC】●出力:ステレオ/バイアンプ→200W×2(8Ω)、350W×2(4Ω)、ブリッジモノ→500W×1(8Ω)、800W(4Ω)● 周波数特性:5Hz 〜80kHz ●S/N:>90dB(1W/8Ω)●THD:<0.001%(1kHz)、0.005%(20Hz 〜20kHz)●感度:ステレオ/バイアンプ→1.5Vrms(RCA)、1.5Vrms×2(XLR)、ブリッジモノ→0.775Vrms(RCA)、0.775Vrms×2(XLR)●ダンピングファクター:>125 at1kHz ●入力端子:RCA×1、XLR×1 ●出力端子:Loop Out RCA×1、LoopOut XLR×1 ●その他:Control Bus×1、Trigger IN×1、Trigger Out×1、IREmitter×1 ●サイズ:430W×148H×365Dmm ●質量:18.8kg
セパレート・アンプといえばハイエンド機というイメージが強い。実際セパレートにしなければ得られない性能や機能を実現するためにそうした設計が行われるわけで、C/Pを求めるならプリメイン・タイプで十分だ。
この851E/Wは、セパレート型としては大変手頃な価格である。両方合わせたよりも高額なプリメインアンプも珍しくない中で、わざわざセパレートにする意味はどこにあるのかと言われそうだ。
それはプリアンプとパワーアンプが、それぞれ独立して存在意義を持つからである。つまり他社のプリアンプやパワーアンプと組み合わせてもきちんとした性能・音質が発揮できるように設計されているということだ。サイズが大きくなりすぎてやむなくセパレートにしたとか、自社どうしでの組み合わせを前提に作られたセパレート・アンプとは違う。そしてこれがセパレート本来の意味なのだ。
手頃な価格とは言ったが、ケンブリッジ・オーディオとしてはフラッグシップであって、決してチープな設計は行われていない。それどころかコストぎりぎりまで高級なパーツを使用するという同社のポリシーが貫かれて、価格をはるかに越えた内容が備わっている。
●プリアンプ「Azur 851E」
測定限界以下とさえいえる驚異的な低歪率を実現する
Azur 851Eは、低ノイズ・低歪率を誇るプリアンプである。入力にはXLRバランスを3系統備え、出力もバランス/アンバランスの切り替えができる。サブウーファー出力を持っているのも、英国らしいプラグマティズムの表れと言えそうだ。
【Azur 851E SPEC】● 周波数特性:10Hz 〜100kHz(±0.1dB)●S/N:<90dB ●THD+N:<0.00045%(1kHz)、<0.00057%(20kHz)●クロストーク:>95dB ●最大出力:8Vrms(RCA)、8Vrms×2(XLR)●入力端子:RCA×7、XLR×3 ●出力端子:RCA×1、XLR×1、6.3mmステレオ標準ヘッドホン× 1、Sub Out×1 ●その他:REC入出力×1、Control Bus×1、IR Emitter×1、Trigger In ×1、Trigger Out×2、RS232C×1 ●サイズ:430W×115H×385Dmm ●質量:8.0kg
回路にはいくつかの特徴がある。まずテラピン・インピーダンスバッファリング・モジュールで、既製品のOPアンプに代わるICだという。ローゲインのバッファーアンプと言うべきデバイスで、入力ソースのインピーダンスを均一化することでその影響を排除し、安定した入力信号を確保する。
ボリュームは電子制御のアナログボリュームで、ギャングエラーの抑制と音量精度の両立を図る。またトーンコントロールも備えているが、バイパスも可能。切り替えはリレーで行い、音質に影響することはない。電源には大型のトロイダルトランスを搭載する。
このプリアンプで驚異的なのは、1kHzで0・00045%というTHDの低さである。しかもアンウェイテッドだから、ほとんど測定限界以下とさえ言えそうだ。
●パワーアンプ「Azur 851W」
A級とB級を巧みに結合した独自回路のXD方式を採用
Azur851Wは、ブリッジ接続にも対応するハイパワーアンプである。8Ωで200W×2、ブリッジでは8Ω500Wという出力を誇る。それでいてS/N比はアンウェイテッド90dB以上という。THDも1kHzで0.001%以下。極めて優れた設計であることが推測できる。
プリアンプと同じく筐体はアルミ製のフルメタル。さらにトロイダル電源トランス2基が搭載されて、自重は18.8sに達する。見かけよりもずっと重量感の高い手触りである。
このフルメタル構成と重量は、音質にも関係する。電磁波など外来ノイズの遮断にメタルボディは有効だし、電子パーツの振動に対しても抑制が利く。高S/N・低歪率なのには理由があるのだ。
出力段に採用されているクラスXD方式は、独自の回路である。一般的な出力回路は、出力レベルに応じてA級とB級で動作を切り替える。クラスXDはそれとは違い、バイアスの切り替えポイントつまりクロスオーバーを、出力ボリュームに応じて変動させる。このためA級動作の領域をぎりぎりまで広げることができ、他方で放熱効率も確保が可能だ。A級とB級の巧みな結合と言っていい。
出力トランジスターはチャンネル当たり10個を装備。CAP5という独自の保護回路によって、5種類の方法でスピーカーや接続機器の保護を図っている。
●音質的魅力を探る
無色透明で正確そのもの鮮度に溢れた実在感を再現
さてその音はどうなのだろうか。100万クラスのハイエンド機とは、やはり一緒にはできないものなのだろうか。
結論から言うと、数値が全てを表している。極めて歪みが低く、またS/Nが高い。これは聴いていてはっきりわかるほど、音によく反映されている。同時にレンジが十分に広く、エネルギーバランスも均一そのものと言っていい。つまり無色透明で正確そのものの鳴り方で、そこから鮮度に溢れたリアリティの高い再現が出現する。
ピアノは芯が強く響きの骨格が太い。それが低音部でも利いているため、がっしりとしたタッチと透明な余韻が実に鮮やかだ。バロックでは古楽器のヴァイオリンやチェロのしなやかで瑞々しい感触が、澄み切った空気の向こうを通してありありとしている。見えるように生き生きとした印象だ。
オーケストラは十分すぎるほどダイナミズムの幅が広く、そして楽器ひとつひとつの存在感がくっきりとしている。ボーカルの柔らかさと弾みのよさも特筆したい。 これはとてもこの価格帯の音ではない。まさしくケンブリッジ・オーディオの面目躍如。見事な仕上がりである。
小林 貢が聴いた、Azur851E/Wの魅力
近年実力を高めている最新設計のスピーカーをドライブしてみたい
Azurは851E、851Wは同ブランドの旗艦機として生を受けた製品だ。その音質は聴感上のSN比が高く、歪み感のない鮮度の高い明快な再生音が得られる。弦楽器や女性ヴォーカルなどは細やかな表情で艶やかさも感じられるが、誇張がない点に好感が持てる。851Wは駆動力が高く超低域までエネルギーが充満した「リズムセッションズ」の低音楽器も確実に制動する。このペアは余程風変わりなスピーカー以外は問題なく駆動できるが、近年実力を高めている近代的設計の英国ブランドの製品がふさわしいだろう。
●セパレート・アンプの存在意義
他社のアンプと組み合わせても性能・音質が発揮できる設計
ケンブリッジ・オーディオはいくつもラインアップを持つが、Azur(アズール)は最上位のグループである。その中でも800番台のシリーズは、同社のフラッグシップとなってきた。このAzur 851E/Wもその一環となるセパレート・アンプである。
【Azur 851W SPEC】●出力:ステレオ/バイアンプ→200W×2(8Ω)、350W×2(4Ω)、ブリッジモノ→500W×1(8Ω)、800W(4Ω)● 周波数特性:5Hz 〜80kHz ●S/N:>90dB(1W/8Ω)●THD:<0.001%(1kHz)、0.005%(20Hz 〜20kHz)●感度:ステレオ/バイアンプ→1.5Vrms(RCA)、1.5Vrms×2(XLR)、ブリッジモノ→0.775Vrms(RCA)、0.775Vrms×2(XLR)●ダンピングファクター:>125 at1kHz ●入力端子:RCA×1、XLR×1 ●出力端子:Loop Out RCA×1、LoopOut XLR×1 ●その他:Control Bus×1、Trigger IN×1、Trigger Out×1、IREmitter×1 ●サイズ:430W×148H×365Dmm ●質量:18.8kg
セパレート・アンプといえばハイエンド機というイメージが強い。実際セパレートにしなければ得られない性能や機能を実現するためにそうした設計が行われるわけで、C/Pを求めるならプリメイン・タイプで十分だ。
この851E/Wは、セパレート型としては大変手頃な価格である。両方合わせたよりも高額なプリメインアンプも珍しくない中で、わざわざセパレートにする意味はどこにあるのかと言われそうだ。
それはプリアンプとパワーアンプが、それぞれ独立して存在意義を持つからである。つまり他社のプリアンプやパワーアンプと組み合わせてもきちんとした性能・音質が発揮できるように設計されているということだ。サイズが大きくなりすぎてやむなくセパレートにしたとか、自社どうしでの組み合わせを前提に作られたセパレート・アンプとは違う。そしてこれがセパレート本来の意味なのだ。
手頃な価格とは言ったが、ケンブリッジ・オーディオとしてはフラッグシップであって、決してチープな設計は行われていない。それどころかコストぎりぎりまで高級なパーツを使用するという同社のポリシーが貫かれて、価格をはるかに越えた内容が備わっている。
●プリアンプ「Azur 851E」
測定限界以下とさえいえる驚異的な低歪率を実現する
Azur 851Eは、低ノイズ・低歪率を誇るプリアンプである。入力にはXLRバランスを3系統備え、出力もバランス/アンバランスの切り替えができる。サブウーファー出力を持っているのも、英国らしいプラグマティズムの表れと言えそうだ。
【Azur 851E SPEC】● 周波数特性:10Hz 〜100kHz(±0.1dB)●S/N:<90dB ●THD+N:<0.00045%(1kHz)、<0.00057%(20kHz)●クロストーク:>95dB ●最大出力:8Vrms(RCA)、8Vrms×2(XLR)●入力端子:RCA×7、XLR×3 ●出力端子:RCA×1、XLR×1、6.3mmステレオ標準ヘッドホン× 1、Sub Out×1 ●その他:REC入出力×1、Control Bus×1、IR Emitter×1、Trigger In ×1、Trigger Out×2、RS232C×1 ●サイズ:430W×115H×385Dmm ●質量:8.0kg
回路にはいくつかの特徴がある。まずテラピン・インピーダンスバッファリング・モジュールで、既製品のOPアンプに代わるICだという。ローゲインのバッファーアンプと言うべきデバイスで、入力ソースのインピーダンスを均一化することでその影響を排除し、安定した入力信号を確保する。
ボリュームは電子制御のアナログボリュームで、ギャングエラーの抑制と音量精度の両立を図る。またトーンコントロールも備えているが、バイパスも可能。切り替えはリレーで行い、音質に影響することはない。電源には大型のトロイダルトランスを搭載する。
このプリアンプで驚異的なのは、1kHzで0・00045%というTHDの低さである。しかもアンウェイテッドだから、ほとんど測定限界以下とさえ言えそうだ。
●パワーアンプ「Azur 851W」
A級とB級を巧みに結合した独自回路のXD方式を採用
Azur851Wは、ブリッジ接続にも対応するハイパワーアンプである。8Ωで200W×2、ブリッジでは8Ω500Wという出力を誇る。それでいてS/N比はアンウェイテッド90dB以上という。THDも1kHzで0.001%以下。極めて優れた設計であることが推測できる。
プリアンプと同じく筐体はアルミ製のフルメタル。さらにトロイダル電源トランス2基が搭載されて、自重は18.8sに達する。見かけよりもずっと重量感の高い手触りである。
このフルメタル構成と重量は、音質にも関係する。電磁波など外来ノイズの遮断にメタルボディは有効だし、電子パーツの振動に対しても抑制が利く。高S/N・低歪率なのには理由があるのだ。
出力段に採用されているクラスXD方式は、独自の回路である。一般的な出力回路は、出力レベルに応じてA級とB級で動作を切り替える。クラスXDはそれとは違い、バイアスの切り替えポイントつまりクロスオーバーを、出力ボリュームに応じて変動させる。このためA級動作の領域をぎりぎりまで広げることができ、他方で放熱効率も確保が可能だ。A級とB級の巧みな結合と言っていい。
出力トランジスターはチャンネル当たり10個を装備。CAP5という独自の保護回路によって、5種類の方法でスピーカーや接続機器の保護を図っている。
●音質的魅力を探る
無色透明で正確そのもの鮮度に溢れた実在感を再現
さてその音はどうなのだろうか。100万クラスのハイエンド機とは、やはり一緒にはできないものなのだろうか。
結論から言うと、数値が全てを表している。極めて歪みが低く、またS/Nが高い。これは聴いていてはっきりわかるほど、音によく反映されている。同時にレンジが十分に広く、エネルギーバランスも均一そのものと言っていい。つまり無色透明で正確そのものの鳴り方で、そこから鮮度に溢れたリアリティの高い再現が出現する。
ピアノは芯が強く響きの骨格が太い。それが低音部でも利いているため、がっしりとしたタッチと透明な余韻が実に鮮やかだ。バロックでは古楽器のヴァイオリンやチェロのしなやかで瑞々しい感触が、澄み切った空気の向こうを通してありありとしている。見えるように生き生きとした印象だ。
オーケストラは十分すぎるほどダイナミズムの幅が広く、そして楽器ひとつひとつの存在感がくっきりとしている。ボーカルの柔らかさと弾みのよさも特筆したい。 これはとてもこの価格帯の音ではない。まさしくケンブリッジ・オーディオの面目躍如。見事な仕上がりである。
小林 貢が聴いた、Azur851E/Wの魅力
近年実力を高めている最新設計のスピーカーをドライブしてみたい
Azurは851E、851Wは同ブランドの旗艦機として生を受けた製品だ。その音質は聴感上のSN比が高く、歪み感のない鮮度の高い明快な再生音が得られる。弦楽器や女性ヴォーカルなどは細やかな表情で艶やかさも感じられるが、誇張がない点に好感が持てる。851Wは駆動力が高く超低域までエネルギーが充満した「リズムセッションズ」の低音楽器も確実に制動する。このペアは余程風変わりなスピーカー以外は問題なく駆動できるが、近年実力を高めている近代的設計の英国ブランドの製品がふさわしいだろう。