[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第111回】SHURE「SRH1840」を自力でカスタマイズ!僕だけの「SRH1840' TURBO」完成
▼第一段階:アルカンターライヤーパッド単体での効果
まずは、SRH1840標準のベロアイヤーパッドで一通りの曲を聴き直した後に、SRH1540のアルカンターライヤーパッドに付け替えて試聴し、変化を確認してみた。
…おや? この時点ですでに、低音が厚みを増しているような。ベースやバスドラムの響きの深い方の成分をより感じられるようになった気がする。特にベースのブリブリとした感じの表現については向上と言ってよいだろう。
それはそれで望ましいが、その代わりに他の要素、SRH1840の強みが失われていては意味がない。そういえばそのベースやバスドラムのタイトでスピードある低域という特長は、少しだが甘くなってしまったような…。一方で高域。シンバルは響きを少し抑えて音色の芯の方を少し強めにする印象。ちょっとだけミュートしてチューニングしたような感じだ。シンバルのざっくり感や声の刺さりの鋭さは、少し落ち着く気もするが、それでも十分に生かされている。空間性については変わらず良好だ。ということでこの時点では、
●低域の厚みは増量/キレは微減
●高域の整いを獲得/荒さや刺さりの表現は微減
●空間性は変わらず良好
●装着感はやっぱり良好
といったところだ。イヤーパッド交換だけだと「可もあり不可もあり」な感じだが、しかしこれもしかして、次のバランス駆動の効果を合わせたら理想的な展開になるのでは…
▼第二段階:イヤパ交換+バランス駆動+SRH1840' TURBO
ということでSRH1540のアルカンターラに変更した状態のままそこに重ねてバランス駆動。SRH1840' TURBOの完成だ。
…うぉッ!イヤーパッド変更で「厚みは出たけどちょっと甘くなったか…」と一発で感じさせてきた上原ひろみさん「ALIVE」の冒頭の一発で、今度は「て、低域がぐっと締まった厚みと音圧になっている!」とまた一発で実感させられた!
ドラムスやベースは狙い通りにアタックがすっと速く立ち上がってくれるし収まりもよく総じてキレがよい。そこは狙い通りなのだがイヤーパッド交換で低域が厚みを増す一方でキレは少し落ちた?というところもあったので、それを前述の「音圧=重さ×速さッ!」理論に当てはめると、
●重さ、イヤーパッドで増加
●速さ、イヤパで微減もバランス駆動効果で差し引き微増
●音圧=重さ×速さ、増加!
といったところか。結果、SRH1840のノーマル状態から速さやキレを損ねることなく音圧そして単純な厚みや太さも得られてしまった気がする。大勝利!
イヤパ交換での「高域の整いを獲得/荒さや刺さりの表現は微減」についてはバランス駆動にしても大きな変化は感じられない。しかし元々の荒さや刺さりがしっかりしているのでそこは微減程度ですむならば、それでも十分だしほどよく聴きやすくなったとも言える。他の要素の向上の大きさとのトレードオフとしては余裕で受け入れ可能だ。
厚みや太さを増すことで空間性が窮屈になったということも感じられなかった。そこはバランス駆動の扱いやすさ。バランス駆動は力強さを増すと同時に左右の独立性を高め空間を広げたり定位を明瞭にしたりといった効果もあるので、そのあたりを両立できる。なので「空間性は変わらず良好」だ。
つまりイヤパ交換+バランス駆動で総合的には大満足!だ。
■結論:SRH1840' TURBO大勝利!
というわけで今回は「SRH1840」を「SRH1840' TURBO」として簡単ながらもカスタマイズしてみたのだが、結果として大勝利! これで僕のSRH1840はあと何年か戦える!
しかしこれは最初の方で述べたように「一般論的完成度は90%にまで下がったかもだけど個人的満足度は120%にアップ!」というやつなので、誰にでもこれをそのまんまおすすめするということではない。しかしさらにしかし、「こういったやり方をすれば、基本的にはお気に入りなヘッドホンを、そこからさらにこういう傾向に強化できるかも」という参考例としてとか、何かしらのお役に立つことができれば嬉しい。
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。 |
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