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<山本敦のAV進化論 第44回>インタビュー&ファーストインプ

【速攻レビュー】ソニーの「高音質microSDカード」は本当に高音質なのか?

公開日 2015/02/19 11:02 山本 敦
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リンダ・ロンシュタットのアルバム「What's New」から、タイトル曲の『Whats New』を試聴。S/Nが格段に高まり、ボーカルは透明感やディティールの見晴らしが良くなる。バックバンドによる演奏は奥行きの深みが増して、楽器固有の音色がより濃く表れるようになった。音の粒立ちが明瞭で、特に高域が煌びやかでエネルギッシュだ。その違いは、何度も聴き直せばそんな気がしてくるというレベルではなく、ファーストインプレッションでクリアにわかるレベルだった。

ウォークマンZX2で2種類のSDカードを聴き比べた

「SR-64HXA」を固定してプレーヤーを変えてみると、それぞれの個性も、よりはっきりと聴き分けることができる。ZX2とA16ではフラグシップとエントリーという実力差があるものの、それぞれの得手や持ち味が活きてくる手応えが感じられた。

もちろんウォークマン以外のオーディオプレーヤーで使っても「SR-64HXA」の効果は得られる。音源や再生環境がハイレゾに対応していなくても、音楽再生環境はステップアップが見込めるだろう。Androidスマートフォン「Xperia Z2」にヘッドホンを直結して音を聴き比べてみると、一般のSDメモリーカードよりも情報量が飛躍的にアップするのがはっきりわかる。

Xperia Z2で聴いてもSDカードによる音の違いは明らかだった

ソニーの「SR-64HXA」は恐らく、多くのSDメモリーカードによる音楽再生に対応するデジタルオーディオプレーヤーそのものの実力を露わにしてしまうだろう。これからSDメモリーカードスロットを搭載する製品は、その周囲の高音質化対策にも気が抜けなくなってくる。もちろんそれがポータブルオーディオプレーヤーのレベルアップを後押ししていくことになるわけだし、ファンとしては楽しみにもつながることになるだろう。


■DVD-R「音匠」のようなブランディングが成功の鍵を握る

データ転送速度や大容量化といった視点から、より高品位なSDメモリカードをつくることは他のメーカーにも可能だが、「高音質」という価値に重きを置いて、記憶媒体とサウンドの事業部が一体となってオーディオ向け製品に仕上げるという試みは、恐らくソニーにしかできなかったことだ。だからこそ、今後は高音質SDメモリーカードのブランディングにも力を入れて欲しい。

商品パッケージはプレミアムモデルらしい上品なデザインに仕上がっているが、「for Premium Sound」というキャッチは、今のところ特段シリーズ名として意識したものではないのだという。そしてパッケージにはお馴染みの「ハイレゾ」ロゴが記載されていない。その理由は、日本オーディオ協会が設定したハイレゾの基本定義の枠組みにメモリーカードが含まれていないからだという。

ハイレゾ対応ウォークマンとのマッチングの高さを謳ったパッケージ

ならば、ソニーが独自に、高音質対応製品であることをもっとアピールした方が良いのではないだろうか。例えばDVD-Rの時代に人気だった「音匠」のようなプレミアムブランドを起ち上げるというアプローチでも良いだろう。あるいは少し野暮ったいかもしれないが「ウォークマンのサウンドマイスター認定」のようなキャッチを付けるだけでも十分に効果的だと思う。

今回は64GBのモデルのみが販売されるが、今後の容量展開について後藤氏に訊ねた。「私たちもバリエーションは増やしたいと考えているのですが、今回の製品では同じ型番のものは一定の音質を担保することを約束しています。一般のSDメモリーカードは転送速度と容量さえ確保できれば簡単に商品化できますが、本製品の場合は容量を変えることで部材が変わり、音質が変わってしまうことも想定しなければなりません。そうなると、全く違う製品を1から作り直すようなことになってしまいます。とはいえ、これからハイレゾがさらに普及すれば、ポータブルオーディオプレーヤー用に128GBのSDメモリーカードのニーズが高まることが予想されます。価格とのバランスも考えながら、ソニーのmicroSDメモリーカードの高音質モデルは容量アップも検討していきたいと考えています」。

製品ごとに“音の傾向”は変わっても、ソニーが胸を張って“高音質”を謳うSDメモリーカードなのであれば、傾向の違いを逆手にとり、例えば「クラシック用」や「ダンスミュージック用」といったバリエーションに発展させることもできるのではないだろうか。そうなれば、かつてのカセットテープの時代のようにメディアによる音質の違いが楽しめ、オーディオがますます盛り上がると思う。筆者もそうなることを期待している。今後重要なのは、ソニーがプレミアムなSDメモリーカードをつくったことを、ブランディングも含めていかに強くアピールするかという点だろう。

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