[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第120回】あの銘機が2,980円で復活!? パラゴン風ペーパークラフト「iHorn Paragon」を作ってみた
■その音質は?音量は?
肝心の音質と音量だが…。
まずは音量は「たいして変わらない。いやむしろ少し弱まる?」という感じだ。
iPhone 6単体を木の板の上に置いた状態でそこから約50cm離れた地点でiPhone 5にインストールした「UE SPL」アプリで音量を測定したところで72dB前後。再生音源はピンクノイズで、30秒ほど再生しての平均値だ。そして、iPhone 6の音量設定は同じまま、iHorn Paragonに設置して測定すると70〜71dBあたり。計測する前に耳で確認した時点でiHorn Paragon利用時の方が音量感音圧感は少し弱まっているかなと感じたのだが、測定値としてもそういうことになっている。
しかしこの点については、この製品の場合は問題ではない。この製品の効果としてパッケージ裏面で謳われているのは「iPhoneの音に厚みと広がりを与えます」「紙製ならではのソフトで耳に心地よいサウンド」という音質面のみ。音量増幅効果については特に謳っていないのだ。そこが欲しい人向けは具体的に「〜dB向上」と明記しているような製品もあるので、そういうタイプの製品を検討してみてほしい。
ではその音質はというと、まさに謳い文句通り!「iPhoneの音に厚みと広がりを与えます」「紙製ならではのソフトで耳に心地よいサウンド」だ。その表現が的確すぎて何も付け足さなくてもいいくらいにその通りだ。
とはいえ付け足しておくと、ソフトな広がりの代わりに音の届きのストレートさや抜け、高域の明瞭さや輝きといった要素はぐっと抑えられる。インパクトが強いそれらの要素が抑えられることで音量感や測定値としての音量も抑えられるということかもしれない。
しかし聴覚へのインパクトが強い要素を和らげることで実現されているのが「ソフトで耳に心地よいサウンド」だ。また紙製の筐体の内部そして全体が響くことで、中低域はもこっとはしているが豊かになるし、音はその全体から広く放射される。細部を聴き込むことはできない曖昧さだが、何となく音楽を流しておくといったような使い方では、この曖昧さが邪魔にならなくて好いと感じることもあるかもしれない。
あとネットでラジオを聴くときなどには、人の声に「ナロウレンジな肉声感」みたいな感触を与えてくれるこのアイテムはよくフィットしてくれると思う。
というわけでなんだかんだで「iHorn Paragon」を試してみた。なるほど使いようによっては役立ってもくれそうな製品だ。
またこの手の製品全般に当てはまるが、エレクトロニックな部分がなく純粋にアコースティックな工夫だけで音質音量を変化させるという、オーディオの原初を思わせるその仕組みや、それによる音質の面白味も楽しめる。そういう意味ではオーディオ的にも興味深いアイテムかもしれない。
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。 |
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