<山本敦のAV進化論 第53回>“世界初のLightning接続対応ヘッドホン”をレビュー
「iPhoneとLightningで直結」の音質は? − フィリップスのヘッドホン「Fidelio M2L」を聴く
Lightning経由でiOS機器から入力された音楽信号は、最初にヘッドホンに内蔵される「Lightning Audio Module(LAM)」と呼ばれるコンポーネントに送られた後、ウォルフソンのDACチップに入力され、アンプで信号を増幅してドライバーを駆動する。この「LAM」が介在することによって、ハイレゾの周波数帯域が最大48kHzに制限されるようだが、代わりにマイクを搭載して通話機能を加えたり、リモコン信号のやりとりができるようになるという。
ちなみにフィリップスの「M2L」はヘッドホン本体に搭載するボタンによるiOS機器のリモコン操作には対応しているが、マイクは非搭載なのでハンズフリー通話はできない。右側ハウジングのパネルがリモコンのボタンになっているほか、円形のレバーの上下でボリュームのアップダウンになる。ボタンは1回クリックで再生・一時停止。ダブル/トリプルクリックでそれぞれ曲送り・曲戻し。
なお、48kHz/24bitの解像度を超える音楽信号が入力された場合はダウンコンバートされる。
アンプやDACを動かすバッテリーはiOS機器から供給を受けるため、iPhone側のバッテリーが消費されてしまうが、今回オンキヨーの「HF Player」でハイレゾ再生を試してみたみた限りでは、iPhoneのバッテリーがガンガン減って、落ち着いて音楽を聴いていられないというようなことはなかった。
以前にGibson Innovations社のオーディオ設計担当者にM2Lの消費電力について訊ねたところ「アップルが外部デジタル接続機器に対して定めている駆動時消費電力の上限が50mAhであるのに対して、M2Lでは20mAh〜30mAhとずっと低い消費電力に抑えている」という回答を得た。バッテリーマネージメントについてはフィリップスならではの工夫が凝らされているのだろう。
Lightning直結のメリットは色々考えられるが、一つはiPhoneとヘッドホンのほかにポタアンを持ち歩く必要がなくなる。マニアにとってはかえって味気なく感じられるかもしれないが、一般のiPhoneユーザーが、よりいい音で音楽が聴けるヘッドホン、イヤホンを探すときに「Lightning直結で簡単・高音質」というキャッチはかなり引きになると思う。
もう一つはデジタル接続による音質向上への効果だ。ハイレゾは最大48kHzまでとなるが、フィリップスの開発者の狙いとしては、むしろデジタル接続になることで左右チャンネルの信号干渉を避けて、より明瞭なチャンネルセパレーションとステレオイメージを実現しながら、全般的なリスニング感の向上に繋げたいという思いがあるようだ。
密閉型ハウジングの本体にはネオジウムマグネット採用の40mmドライバーを搭載。振動板はPET素材とした。再生周波数帯域は7Hz〜25kHz、インピーダンスは16Ω、感度は107dB。
本体の質量は195gと、Bluetoothワイヤレスヘッドホン「M2BT」の190gと比べてほとんど変わらない軽さになっている。ケーブルは約1.1mとほどよい長さだ。
■iPhoneとのLightning接続によるハイレゾ再生を聴く
多少前置きが長くなってしまったが、「Fidelio M2L」の音のインプレッションを報告しよう。今回はiPhone 5sにオンキヨーのハイレゾプレーヤーアプリ「HF Player」を組み合わせた環境で試聴している。
…と、リスニングを始める前に他愛のない実験をしてみた。iPhoneのアナログイヤホン端子とLightning端子の両方にヘッドホンを挿したらどうなるのか、というものだ。結果はアナログ端子側の出力が優先され、LightningでつないだM2Lからは音が出なかった。