HOME > レビュー > フィリップスのLightning直結ヘッドホン“Fidelio”「M2L」をレビュー - デジタル伝送で音質強化

高橋敦が音質&使い勝手を徹底検証

フィリップスのLightning直結ヘッドホン“Fidelio”「M2L」をレビュー - デジタル伝送で音質強化

公開日 2015/05/29 11:13 高橋 敦
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
ナチュラルで心地よいフィリップスらしいサウンドを聴かせてくれる

そしてサウンドだが、冒頭で述べたように聴き始めてすぐに、さすがフィリップスと感心せてくれるサウンドだ。いたずらに解像感を押し出したり、空間の広がり感を強調するのではなく、実にナチュラルで心地の良い音を聴かせてくれる。一方で、フラットでプレーンな方向性なのかといえばそうではなく、フィリップスらしさをしっかりと楽しませてくれる。

試聴はM2LとiPhone 6を組み合わせて行った

雰囲気としてはややウォームで、そして帯域バランスとしてはやや低重心。その「やや」の具合が絶妙で、無色にならない心地よさを演出しつつも、過剰演出には全くならず自然に感じられる。

相対性理論「たまたまニュータウン (2DK SESSION)」冒頭のバスドラムは胴や部屋の豊かな響きを捉えて生かした録音とミックスで、その再現はこの曲の頭の雰囲気作りの鍵になる。本機はその響きを想像以上にしっかり深く出してくれる。ベースも落ち着いた厚みや適度な太さで、中低域全体、そして音楽全体のバランスもよい。ベースの柔軟な弾力、アタックを強調することなくかといってぼんやりすることのない穏やかな存在感も好ましい。

低域の響きに対して「想像以上に」という感想になったのは、本機が比較的コンパクトな部類のヘッドホンだからだ。小型ヘッドホンでも低音を強調することは難しくないが、しかし強調せず自然にしっかりと出すというのは簡単ではない。そこをこのヘッドホンは巧くやり遂げている。

相対性理論「たまたまニュータウン (2DK SESSION)」

高域側もほどよく暖かく柔らかなウォーム系なので、シャープさとか情報量とかは強くは出さない。声の質感も繊細に描き出しすぎず穏やかな心地よさだ。空間表現も、すっきり系の音ではないのでわかりやすい見通しのよさとかにはならないが、コンパクトな密閉型ヘッドホンとしては十分以上の水準は確保している。

TM NETWORK「Beyond The Time」は主題歌となった作品の主な舞台である宇宙をまさにイメージさせる空間性が光る作品だ。その宇宙をこのヘッドホンは、透明とか真空ではなく、何か暖かな粒子で満たされた空間と感じさせてくれる。硬質な音調ではないのでベースのソリッドな音色やバキッとしたキレは控えめだ。しかし滑らかながらも不足は感じさせないアタックで、自然に気持ち良くまとめてくれる。

TM NETWORK『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-』 (「Beyond The Time」収録)

また特にギターは、カッティングのぱきっとした感触はやや薄まるが、音色の艶やフェードインやサステインの滑らかさに強みを発揮する。こちらはこちらで魅力的だ。声の表現の自然さも、もちろん良好だ。

専用のキャリングポーチが付属する

M2Lは穏やかなウォームさを持ち味とすることもあり、喜多村英梨さん「掌 -show-」のようなヘヴィ&ハードエッジでプログレッシブなメタルサウンドとは相性がもう一歩かもしれないが、それ以外の楽曲においては、オールラウンドな対応力も見せてくれた。

Lightning対応をいちはやく実現したことに加えて、そのサウンドも見事。音の程よい個性と「Lightning専用」という最新鋭の仕様を持つ本機は、他では得られない満足を与えてくれるだろう。

前へ 1 2

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック: