アーティストへの利益還元問題も
Apple参入で競争激化? 元洋楽ディレクターが世界のストリーミング音楽配信を総まとめ
海外ではSpotifyを筆頭にストリーミングサービスが隆盛を極め、TIDALやQobuzのようなロスレスストリーミングで高音質を謳うサービスも登場してきた。一方で、日本国内でもAWAがサービスを開始し、LINE MUSICも今夏サービスをスタートさせる。音楽業界はこのままストリーミング主流の傾向がさらに進むのか。そして肝心の利益還元の面で、ストリーミングサービスはアーティストに適切な利益をもたらしているのか。元洋楽ディレクター本間孝男が“音楽ストリーミング”を徹底分析する。
■デジタル配信が物理メディアの売上を追い抜いた
IFPI(国際レコード産業連盟)は4月14日、2014年の世界音楽市場調査結果を発表。2014年度は、史上初めてデジタル配信楽曲がCD/LPの売上を追い抜いたことを明らかにした。同レポートによると、音楽コンテンツの総売上高は2013年とほぼ横ばいの149億7000万ドル(前年比0.4%減)だったが、その内訳においてデジタル(ダウンロード及びストリーミング)の売り上げ(68億5000万ドル)が、わずかながら物理メディア(CD/LP)の売り上げ(68億2000万ドル)を上回った。
デジタル配信は、ダウンロード型の売上(iTunes Storeなど)が8%減少する一方、月額定額の聴き放題制(いわゆるサブスクリプション型)ストリーミングサービスの売上が39%増加した。定額制ストリーミングサービスの利用者は46.4%伸び、約4,100万人と概算されている。売上高はデジタル市場の23%に当たる16億ドルと推定され、このストリーミングの伸びがデジタル配信の売上増を支えていると説明している。
一方、物理メディアの売上比率が依然として高い国もリストアップされ、日本78%、ドイツ70%、フランス57%などが挙げられた。なお、昨年はアナログレコード売上は前年比54.7%の伸びとなり、音楽全体の売上で2%を占めたことも報告された。
IFPIのフランシス・ムーアCEOは「消費者の要望が音楽を所有することから音楽にアクセスすることへと変化する中、音楽産業のデジタル革命は新たな段階に入った」と、こういった状況を分析している。
IFPIはこの報告に先立つ2月23日、ロンドンにおいて2014年度の「年間最優秀アーティスト賞(Global Recording Artist of the year)」をテイラー・スウィフトに贈呈した。スウィフトの『1989』は物理メディア(CD/LP)、ダウンロード、ストリーミング全ての分野でトップを記録。全世界で860万枚を売上げた。ちなみに2位は前年度1位となった英国のボーイズバンド、ワン・ダイレクションの『Four』。3位は英国のシンガーソングライター、エド・シーランの『X』だった。なお『X』はストリーミングサービスのSpotifyで最もストリーム回数の多かった「年間最多ストリーム・アルバム」となっている。
2015年には、JAY-Zの買収を経て3月末に再始動した「TIDAL」、アップルが6月9日開催のWWDCで発表すると噂されている「iTunes」と「Beats」の統合サービス、さらに米Google傘下のYouTubeが公開中の「Music Key(β版)」の本格稼働が始まり、ストリーミング市場の売上高はさらに拡大すると予測されている。
■ストリーミングで世界の音楽ビジネスの構造は大きく変わる
アップルはこの6月にもiTunes Musicを改編し、ストリーミングを開始するという噂がある。世界で最もストリーミング・サービスに熱心な英国での調査によると、iTunesのダウンロード・ユーザーのうち39%はストリーミング契約を検討すると答えている(英MIDA調べ。調査時点が昨年末から今年初めに掛けてだったので、質問はもしアップルの金額が8ドルだったらと言う設定になっている)。
世界に5億のアカウントがあると言われるiTunesのユーザーのうち、仮に15%がストリーミングを契約することになると、世界のストリーミングユーザーは一挙に7500万増える。Spotifyの有料会員が1500万ユーザーだから一挙に5倍のユーザーが加わることになる。
アップルがiOS機器の購入者特典として、iTunesのストリームサービスの割引(期間限定)などを展開すれば、この数字はあながち机上の空論といえなくなるだろう。合計ユーザーは9000万人。世界の音楽ビジネスの構造自体が変わる可能性がある大変革だ。アデルのマネージャー、ジョナサン・ディキンズは「好むと好まざるに関わらず、ストリーミングこそ未来だ」と言っている。
■デジタル配信が物理メディアの売上を追い抜いた
IFPI(国際レコード産業連盟)は4月14日、2014年の世界音楽市場調査結果を発表。2014年度は、史上初めてデジタル配信楽曲がCD/LPの売上を追い抜いたことを明らかにした。同レポートによると、音楽コンテンツの総売上高は2013年とほぼ横ばいの149億7000万ドル(前年比0.4%減)だったが、その内訳においてデジタル(ダウンロード及びストリーミング)の売り上げ(68億5000万ドル)が、わずかながら物理メディア(CD/LP)の売り上げ(68億2000万ドル)を上回った。
デジタル配信は、ダウンロード型の売上(iTunes Storeなど)が8%減少する一方、月額定額の聴き放題制(いわゆるサブスクリプション型)ストリーミングサービスの売上が39%増加した。定額制ストリーミングサービスの利用者は46.4%伸び、約4,100万人と概算されている。売上高はデジタル市場の23%に当たる16億ドルと推定され、このストリーミングの伸びがデジタル配信の売上増を支えていると説明している。
一方、物理メディアの売上比率が依然として高い国もリストアップされ、日本78%、ドイツ70%、フランス57%などが挙げられた。なお、昨年はアナログレコード売上は前年比54.7%の伸びとなり、音楽全体の売上で2%を占めたことも報告された。
IFPIのフランシス・ムーアCEOは「消費者の要望が音楽を所有することから音楽にアクセスすることへと変化する中、音楽産業のデジタル革命は新たな段階に入った」と、こういった状況を分析している。
IFPIはこの報告に先立つ2月23日、ロンドンにおいて2014年度の「年間最優秀アーティスト賞(Global Recording Artist of the year)」をテイラー・スウィフトに贈呈した。スウィフトの『1989』は物理メディア(CD/LP)、ダウンロード、ストリーミング全ての分野でトップを記録。全世界で860万枚を売上げた。ちなみに2位は前年度1位となった英国のボーイズバンド、ワン・ダイレクションの『Four』。3位は英国のシンガーソングライター、エド・シーランの『X』だった。なお『X』はストリーミングサービスのSpotifyで最もストリーム回数の多かった「年間最多ストリーム・アルバム」となっている。
2015年には、JAY-Zの買収を経て3月末に再始動した「TIDAL」、アップルが6月9日開催のWWDCで発表すると噂されている「iTunes」と「Beats」の統合サービス、さらに米Google傘下のYouTubeが公開中の「Music Key(β版)」の本格稼働が始まり、ストリーミング市場の売上高はさらに拡大すると予測されている。
■ストリーミングで世界の音楽ビジネスの構造は大きく変わる
アップルはこの6月にもiTunes Musicを改編し、ストリーミングを開始するという噂がある。世界で最もストリーミング・サービスに熱心な英国での調査によると、iTunesのダウンロード・ユーザーのうち39%はストリーミング契約を検討すると答えている(英MIDA調べ。調査時点が昨年末から今年初めに掛けてだったので、質問はもしアップルの金額が8ドルだったらと言う設定になっている)。
世界に5億のアカウントがあると言われるiTunesのユーザーのうち、仮に15%がストリーミングを契約することになると、世界のストリーミングユーザーは一挙に7500万増える。Spotifyの有料会員が1500万ユーザーだから一挙に5倍のユーザーが加わることになる。
アップルがiOS機器の購入者特典として、iTunesのストリームサービスの割引(期間限定)などを展開すれば、この数字はあながち机上の空論といえなくなるだろう。合計ユーザーは9000万人。世界の音楽ビジネスの構造自体が変わる可能性がある大変革だ。アデルのマネージャー、ジョナサン・ディキンズは「好むと好まざるに関わらず、ストリーミングこそ未来だ」と言っている。
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