K3003は各DAPの個性をどう引き出してくれるのか?
今なお最高の銘機・AKG「K3003」と注目ハイレゾDAPを組合せレビュー
SONY「NW-ZX2」との組合せ
次はSONY「NW-ZX2」。ウォークマンの現役最高峰というか歴代最高峰のハイエンド機だ。ソニー独自の様々な最新鋭デジタル技術、例えばBluetoothワイヤレス伝送を大幅に音質向上させる新コーデック「LDAC」等も盛り込まれてはいる。しかし本質的には「強力な電源で強力なアンプを駆動してイヤホンの全力を引き出す」という至極真っ当なハイエンドプレーヤーだ。
音質的にはAK120IIとは好対照。甘くはないややドライなウォームさや厚みが持ち味だ。低域の空気感がもたらずに豊かなことが特に印象的。
K3003の持ち味はAK120IIのところで述べたように高域のシャープネスにも特にあると思うので、そこを引き出すという意味では、この組み合わせは正直少し弱い。しかし代わりに、K3003の意外な魅力を引き出すという面白味がある。
さて、「ウォーム」という表現をすると「それ差し障りのない表現にしてるけど実際はぼやけているとかこもってるってことじゃないの?」と思った方もいるかと思う。そういう場合もあるのかもしれないねーと他人事のようにかわしつつ断っておくと、今回この組み合わせについてはそういうことではないので安心してほしい。ここで「ウォーム」と表現したのは、良質で心地よい暖かみを備えた音調のことだ。
シンバルは薄刃のシャープネスではなくなるが、かといって鈍るわけではなく、そのキレ方がしなやかになるといった塩梅。ギターのカッティングはいわゆる枯れて無駄のない音色というよりも、厚みも備えた豊かな音色に寄る。ギターを弾く方に向けて表現するなら、ピックアップをセンターからフロントに変えたような変化に近いかもしれない。
低音楽器ではやはりバスドラムの充実が大きい。バスドラムの打面の皮ではなく胴の響きと、それが周囲を大きく震わせる様子、その「低音の空気感」みたいなところを実に豊かに感じさせてくれる。近年のソニーはヘッドホンでもそのあたりの帯域の表現力に特徴を持っており、 これがいまの「ソニーらしさ」なのかもしれない。そして、K3003単体にはそういう低域の印象はあまりなかったのだがZX2と組み合わせることで、K3003にもそういう低域表現に対応できる潜在能力があったことを知らされたという思いだ。
ボーカルは朴訥とか素朴とか、そういった印象が強まる。熱血主人公でもクール系ヒロインでもなく、穏やかな人柄で場を和ませるキャラクターといった感じだ。