フルサイズ筺体のバランス駆動対応
【レビュー】あの銘機の開発者が設計。新星ブランドConclusionのヘッドホンアンプ「C-HA1」
■脚色を感じない親しみやすいサウンド
続いてヘッドホンをHD800に交換し、アンバランス駆動から試してみた。こちらは全体的にタイトでシャープなサウンド性となり、高域にかけての倍音表現もきりっとしたクリアで流麗なタッチとして描かれる。低域方向への密度も高く、クラシックのホールトーンはローエンドが厚み良い。高解像度で高域の輝き感により爽やかなハーモニーを聴かせてくれる。
ジャズピアノはコロコロとキレ良く軽快で、ウッドベースはむっちりとした弾力ある弦のハリが鮮やかだ。ロック音源においてもリズム隊のタイトなアタックとエレキギターのソリッドな描写性が貫かれ、ボーカルもスマートに浮かぶ。シンバルワークの清々しい響きは分離良く澄んでおり、余韻表現も鮮明だ。
DSD音源においては、ピアノやアコギの涼やかなハーモニクスが美しく、低域方向への音伸びもスムーズで無理がない。ボーカルのキレ良い描写はクール&ウェットな際立ちで、リヴァーブ成分のクリアで爽快な広がりが堪能できる。
最後にケーブルをバランス用に交換してのサウンドを確認したが、さらに楽器のディティールがくっきりと描かれ、ボトムの厚みも増して音像の存在感が増す。余韻の階調もきめ細やかで響きに深みがある。アタック&リリースのスピードも速く、キレ味良いリズムによって空間のクリアさがより一層引き立つようだ。結果的にSRH1840のバランス駆動と同様、S/N良く、音像の密度感が向上することでサウンドの重心が下がり、落ち着いた安定傾向の音色に進化する。
ボーカルは若々しく艶やかで麗しい質感であるが、どこか温かみのある芯の太い描写力も持つ。クラシックの管弦楽器の旋律は一つ一つの楽器を丁寧にトレースし、ローエンドもダンピング良く描き出すので音場の透明感も手伝い、音数の多さに改めて気づかされる。ホールの響きもすっきりとまとめ、抑揚良いハーモニーを聴かせてくれた。
倍音の艶やかさも上品かつ流麗で、ハイレゾ音源ではより余韻の潤い感が際立つ。ジャズ音源では各々のパートが有機的に絡み合いナチュラルで弾み良いグルーブを聴かせる。ピアノや弦楽器のハーモニクスの澄んだ響きは階調性も高く、余韻の消え際まで的確に聴き取ることができた。クールで凛とした硬質なサウンド傾向であるが、付帯感のないリアルテイストな空間を味わえる。
◇
C-HA1は決して安価なヘッドホンアンプではないが、流通コストをも部材に投入できたことで、その価格以上の品位と質感描写力を獲得した、ハイエンド機の中でもC/Pの高い製品だ。トレンドとは距離を置き、実直で普遍的な音色の追求に終始したような、脚色を感じない親しみやすいサウンドが持ち味である。
アンバランス接続環境でも十分にS/Nが高く、安定感のある駆動力を発揮してくれるので、バランス駆動でなくともその持てるポテンシャルの高さを実感できるだろう。
これが終着点ではないにせよ、ヘッドホンアンプにおける一つの“結論”としての確固たる意志をそのサウンドから感じることができた。ぜひとも貸し出しサービスを利用し、ご自身のリスニング環境で“結論”の真意に対峙してみてはいかがだろうか。
(岩井 喬)
■試聴音源
【クラシック】
・レヴァイン指揮/シカゴ交響楽団『惑星』〜木星(CDリッピング:44.1kHz/16bit)
・イ・ソリスティ・ディ・ペルージャ『ヴィヴァルディ:四季』〜春(192kHz/24bit)
・飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』〜第一楽章(96kHz/24bit)
【ジャズ】
・オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』〜ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー(CDリッピング:44.1kHz/16bit)
・『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』〜届かない恋(2.8MHz・DSD)
【ロック】
・デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』〜メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ(CDリッピング:44.1kHz/16bit)
【ポップス】
・Suara『NetAudio Vol.19付録音源』〜キミガタメ(11.2MHz→5.6MHz変換・DSD)
・長谷川友二『音展2009・ライブレコーディング』〜レディ・マドンナ(筆者自身によるDSD録音:2.8MHz・DSD)
続いてヘッドホンをHD800に交換し、アンバランス駆動から試してみた。こちらは全体的にタイトでシャープなサウンド性となり、高域にかけての倍音表現もきりっとしたクリアで流麗なタッチとして描かれる。低域方向への密度も高く、クラシックのホールトーンはローエンドが厚み良い。高解像度で高域の輝き感により爽やかなハーモニーを聴かせてくれる。
ジャズピアノはコロコロとキレ良く軽快で、ウッドベースはむっちりとした弾力ある弦のハリが鮮やかだ。ロック音源においてもリズム隊のタイトなアタックとエレキギターのソリッドな描写性が貫かれ、ボーカルもスマートに浮かぶ。シンバルワークの清々しい響きは分離良く澄んでおり、余韻表現も鮮明だ。
DSD音源においては、ピアノやアコギの涼やかなハーモニクスが美しく、低域方向への音伸びもスムーズで無理がない。ボーカルのキレ良い描写はクール&ウェットな際立ちで、リヴァーブ成分のクリアで爽快な広がりが堪能できる。
最後にケーブルをバランス用に交換してのサウンドを確認したが、さらに楽器のディティールがくっきりと描かれ、ボトムの厚みも増して音像の存在感が増す。余韻の階調もきめ細やかで響きに深みがある。アタック&リリースのスピードも速く、キレ味良いリズムによって空間のクリアさがより一層引き立つようだ。結果的にSRH1840のバランス駆動と同様、S/N良く、音像の密度感が向上することでサウンドの重心が下がり、落ち着いた安定傾向の音色に進化する。
ボーカルは若々しく艶やかで麗しい質感であるが、どこか温かみのある芯の太い描写力も持つ。クラシックの管弦楽器の旋律は一つ一つの楽器を丁寧にトレースし、ローエンドもダンピング良く描き出すので音場の透明感も手伝い、音数の多さに改めて気づかされる。ホールの響きもすっきりとまとめ、抑揚良いハーモニーを聴かせてくれた。
倍音の艶やかさも上品かつ流麗で、ハイレゾ音源ではより余韻の潤い感が際立つ。ジャズ音源では各々のパートが有機的に絡み合いナチュラルで弾み良いグルーブを聴かせる。ピアノや弦楽器のハーモニクスの澄んだ響きは階調性も高く、余韻の消え際まで的確に聴き取ることができた。クールで凛とした硬質なサウンド傾向であるが、付帯感のないリアルテイストな空間を味わえる。
C-HA1は決して安価なヘッドホンアンプではないが、流通コストをも部材に投入できたことで、その価格以上の品位と質感描写力を獲得した、ハイエンド機の中でもC/Pの高い製品だ。トレンドとは距離を置き、実直で普遍的な音色の追求に終始したような、脚色を感じない親しみやすいサウンドが持ち味である。
アンバランス接続環境でも十分にS/Nが高く、安定感のある駆動力を発揮してくれるので、バランス駆動でなくともその持てるポテンシャルの高さを実感できるだろう。
これが終着点ではないにせよ、ヘッドホンアンプにおける一つの“結論”としての確固たる意志をそのサウンドから感じることができた。ぜひとも貸し出しサービスを利用し、ご自身のリスニング環境で“結論”の真意に対峙してみてはいかがだろうか。
(岩井 喬)
■試聴音源
【クラシック】
・レヴァイン指揮/シカゴ交響楽団『惑星』〜木星(CDリッピング:44.1kHz/16bit)
・イ・ソリスティ・ディ・ペルージャ『ヴィヴァルディ:四季』〜春(192kHz/24bit)
・飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』〜第一楽章(96kHz/24bit)
【ジャズ】
・オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』〜ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー(CDリッピング:44.1kHz/16bit)
・『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』〜届かない恋(2.8MHz・DSD)
【ロック】
・デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』〜メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ(CDリッピング:44.1kHz/16bit)
【ポップス】
・Suara『NetAudio Vol.19付録音源』〜キミガタメ(11.2MHz→5.6MHz変換・DSD)
・長谷川友二『音展2009・ライブレコーディング』〜レディ・マドンナ(筆者自身によるDSD録音:2.8MHz・DSD)