エントリーながら2機種ともアトモス/DTS:X対応
デノンのAVアンプ入門機、選ぶならどっち? 超ハイC/P「X1200W」と高音質モデル「X2200W」を比較
■AVR-X2200Wは、映像はもちろん音楽再生までを手中にする
ここで上位モデルであるAVR-X2200Wにスイッチして、同じソースを再生してみよう。
『バードマン』は力強く量感豊かなのは同じだが、鮮度がずっと高く響きが素直だ。X1200Wは量感の演出によって“力感”を感じさせていたことが分かる。本機は元々パワーと帯域があるので演出の必要が少ない。S/Nもさらによく、ノイズの曇りがなく情報量が豊かで細かい音まで疎かにしない。
『九十九』は音場が広々と拡大し高さが出る。X1200Wはある程度の高さで止まるが、本機は視聴室の天井より高い位置にトップスピーカーがあるがごとく天地方向の行き止まり感がない。7chのつながりもよく、ある地点で音が途絶えたり軌跡がギクシャクしたりせず、音源が360度なめらかに移動するのが快感だ。
『花とアリス殺人事件』は、セリフを筆頭に余計な響きが付かず口跡が克明で、蒼井優の声に甘い体温が感じられる。リバーブ等セリフを大切に活かす音響演出上の工夫が伝わる。
音楽作品はどうだろうか。『ファツィオーリ』は音の鮮度と粒立ちが改善。音がほぐれて立体感がある。ベールを2枚くらい剥ぎ取ったようにピアノの堂々たる筐体が現れる。X2200Wの場合、差動回路に高性能なデュアルトランジスタを使ったことがX1200Wとの低音の差として現れている。しかし音の演出が少なく解像力があるので、ペダル操作で生まれるマッシブな音塊に細かい情報がのみ込まれることはなく、音の芯がしっかり聴き取れる。
ハイレゾ音楽ファイル再生ではX2200Wが弟機をさらに引き離す。『ホワッツ・ニュー』はベースにしっかりした芯が生まれ、音の輪郭が肥大しない。フォルテッシモの金管も歪む一歩手前で踏ん張っている。ボーカルの自然さと地肌の描写は大きく進境した。アナログで入力したSACDのオペラアリアは、倍音が豊かで響きに頭打ち感がなく、伸びやかな美音を解き放つ。オケや合唱を従えた音場の立体感もX1200Wから大きな進境を見せてくれた。
■ジャンルを代表するハイC/Pを誇る「X1200W」だが
音楽と映像再生を一手に担う役割ならば「X2200W」を薦めたい
デノンのエントリークラスを担う2機種は、新時代のオブジェクトオーディオに対応したばかりでなく、休みなく進化する映像音響の響きを捉える音の鮮度をそなえている。ドルビーアトモスまで含むサラウンドにこれからエントリーしようというユーザーに格好の製品で、57,500円とより安価なAVR-X1200Wは今期AVアンプ全製品中最強のハイCP機といえよう。映画ソフト中心に楽しむならX1200Wで何ら不足はない。
一方で、SACDやハイレゾ音楽ファイルまでソースを拡大すると、X1200WとX2200Wの力量差が大きいことに気付かされる。それはHDMI接続の場合もUSBメモリーから入力した場合も、アナログも同様だ。低域の解像感と土台の確かさ、音場の豊かさでX2200WはX1200Wに大差を付けている。
家庭での音楽と映像再生を一手に担う大役を任せるならAVR-X2200Wを、新時代を迎えたホームシネマの扉を叩いてみようというビギナーにはAVR-X1200Wを薦めたい。
(大橋伸太郎)
ここで上位モデルであるAVR-X2200Wにスイッチして、同じソースを再生してみよう。
『バードマン』は力強く量感豊かなのは同じだが、鮮度がずっと高く響きが素直だ。X1200Wは量感の演出によって“力感”を感じさせていたことが分かる。本機は元々パワーと帯域があるので演出の必要が少ない。S/Nもさらによく、ノイズの曇りがなく情報量が豊かで細かい音まで疎かにしない。
『九十九』は音場が広々と拡大し高さが出る。X1200Wはある程度の高さで止まるが、本機は視聴室の天井より高い位置にトップスピーカーがあるがごとく天地方向の行き止まり感がない。7chのつながりもよく、ある地点で音が途絶えたり軌跡がギクシャクしたりせず、音源が360度なめらかに移動するのが快感だ。
『花とアリス殺人事件』は、セリフを筆頭に余計な響きが付かず口跡が克明で、蒼井優の声に甘い体温が感じられる。リバーブ等セリフを大切に活かす音響演出上の工夫が伝わる。
音楽作品はどうだろうか。『ファツィオーリ』は音の鮮度と粒立ちが改善。音がほぐれて立体感がある。ベールを2枚くらい剥ぎ取ったようにピアノの堂々たる筐体が現れる。X2200Wの場合、差動回路に高性能なデュアルトランジスタを使ったことがX1200Wとの低音の差として現れている。しかし音の演出が少なく解像力があるので、ペダル操作で生まれるマッシブな音塊に細かい情報がのみ込まれることはなく、音の芯がしっかり聴き取れる。
ハイレゾ音楽ファイル再生ではX2200Wが弟機をさらに引き離す。『ホワッツ・ニュー』はベースにしっかりした芯が生まれ、音の輪郭が肥大しない。フォルテッシモの金管も歪む一歩手前で踏ん張っている。ボーカルの自然さと地肌の描写は大きく進境した。アナログで入力したSACDのオペラアリアは、倍音が豊かで響きに頭打ち感がなく、伸びやかな美音を解き放つ。オケや合唱を従えた音場の立体感もX1200Wから大きな進境を見せてくれた。
■ジャンルを代表するハイC/Pを誇る「X1200W」だが
音楽と映像再生を一手に担う役割ならば「X2200W」を薦めたい
デノンのエントリークラスを担う2機種は、新時代のオブジェクトオーディオに対応したばかりでなく、休みなく進化する映像音響の響きを捉える音の鮮度をそなえている。ドルビーアトモスまで含むサラウンドにこれからエントリーしようというユーザーに格好の製品で、57,500円とより安価なAVR-X1200Wは今期AVアンプ全製品中最強のハイCP機といえよう。映画ソフト中心に楽しむならX1200Wで何ら不足はない。
一方で、SACDやハイレゾ音楽ファイルまでソースを拡大すると、X1200WとX2200Wの力量差が大きいことに気付かされる。それはHDMI接続の場合もUSBメモリーから入力した場合も、アナログも同様だ。低域の解像感と土台の確かさ、音場の豊かさでX2200WはX1200Wに大差を付けている。
家庭での音楽と映像再生を一手に担う大役を任せるならAVR-X2200Wを、新時代を迎えたホームシネマの扉を叩いてみようというビギナーにはAVR-X1200Wを薦めたい。
(大橋伸太郎)