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【特別企画】「アンク」愛用ユーザーを訪ねる 特別編

日本音響のルームチューニング材「アンク」を評論家 田中伊佐資が自宅で試す

公開日 2015/10/14 14:17 田中伊佐資
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日本音響エンジニアリングが手掛ける柱状拡散型ルームチューニングアイテム「シルヴァン」と「アンク」。本誌ではこれらを愛用するユーザーの方々をご紹介してきているが、今回は特別編ということで、オーディオライターの田中伊佐資氏が登場。“アンク・ミニ"に興味を持った筆者が、自宅にてその効果を導入覚悟で真剣に検証している。その結果やいかに?

天井コーナー用の登場でアンクへの興味が再加熱


日本音響の「シルヴァン」や「アンク」を買うのって、ものすごーく決断が必要ではありませんか?

「アンクIV」を取り付けた状態

ストレートに言わせてもらいますが、見た目に比べて、価格が高いじゃないですか。「あれは良さそうだけど、ちょっとあそこまで(予算的に)ムリ」という話は、そこかしこで聞いた気がする。マニアと話をしているとき、日本音響の話題はわりと頻繁に出る。つまり気にしている人は決して少なくないのだが、必ずそのあたりで話はみるみる収束に向かう。

といいつつも、ユーザーはなかなか結構な数にのぼる。なにかを買うとひとつ足し、さらに足していくようなリピーターは珍しくない。部屋中をここの製品で固めている人もいる。

すると必ず、いや世の中にはお金持ちがたくさんいるからねという話にもなる(マニアとの会話の続き)。だがそこは違うだろう。いくら裕福な人でも、不要なものに100円だって払いはしない。生活するのがカツカツな人でも必要であれば100万円だろうと200万円だろうと車を買う。

日本音響の「シルヴァン」や「アンク」はその支出に見合うだけの満足度が高いということなんだろう。ものすごーく決断が要ると、安易に断定しちゃいましたが、ぼくはそれをはっきりつかめていないということなんでしょう。

ぼくは日本音響の製品を自宅でも試し、ユーザー訪問もやったことがあり、効果は認めている。だが財布の紐が緩みそうな瞬間はあっても、ほどけるところまで至らなかった。というようなことではあったが、天井と壁のコーナーに取り付ける「アンクIV」と天井と壁の境目用の「アンクV」が発売されて、自宅で試す機会に恵まれた。

田中伊佐資氏のオーディオルーム。様々なメーカーのルームチューニングアイテムを使用しているが、今回天井コーナーに「アンクIV」(100,000円/ペア)を、天井の前面に「アンクV」(100,000円/1台)を設置し、その真の実力を体験することとなった

「アンクIV」を試す
不可解な?ほど絶大な効果。センター定位がばっちり出る


日本音響の山下晃一さんが両モデルを持ってきてくれた。「アンクIV」は試聴位置からみて前方の角に取り付けるので2個ある。にしても価格のわりに小さい。

日本音響の山下氏より「アンクIV」の解説を受ける筆者。こんな小さなもので効果はあるのだろうか?と疑う筆者はこの後に来る衝撃をまだ知らない

価格のことばかりで、山下さんには申し訳ないけど、読者の気持ちを代弁するつもりで有り体にいえば「こんなに小っちゃくて大丈夫なのか?」である。ルームアコースティックは角が効くとか大事とか、オセロみたいなことを言われているが、それほど角には有害な響きが停滞しているのだろうか?

天井コーナーに「アンクIV」用のフックを取り付ける山下氏

山下さんは、フックを壁に取りつけてから、額に入った絵を掛けるような感じで2個の「アンクIV」をセットした。床に立てるパネル・タイプは部屋を狭くするし、掃除のときに邪魔だが、これならそんな気遣いは無用だ。

「アンクIV」は一度フックを取り付けてしまえば、取り外しは簡単

ルーム・チューニングによって音場が広がった経験はあるが、モノラル録音はどうなるか。前から興味があったので、昔のレコードをかけてみることにした。

お決まりといえばお決まりだが、マイルス・デイヴィスの『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』で行ってみる。まあまあのコンディションのモノ盤が手に入り、最近しきりに聴いているので、音の質感は記憶している。

あまり代わり映えもなく、山下さんの前でリアクションに困ることになったらイヤだなあと思っていたが、それは完全に勘ぐり過ぎだった。トランペットのセンター定位がばっちり。シャープ。エネルギーが凝縮されて前に押し出されてくる。

山下さんが口を開いた。

「ステレオでもモノラルでも、それは関係なくて、本来の定位が出るということなんですね」

あー、しかし部屋の隅ごときで、なぜだろう。この不可解な気持ちは、自室で試さないとわかりません。雑誌を読んだところで、納得できません。

「アンクV」を試す
センターの音像が濃くなりベースが沈んで弾んでくる


次に「アンクV」を追加する。これは天井と壁の境目に付けるもので、位置は最もスタンダードな前方中央に決める。

天井と壁の境目に取り付ける「アンクV」も、まずは専用フックを取り付ける

同じくマイルスのモノ盤を聴く。センターの音像がグーンと濃くなった。そしてこれもまったく不思議な話だが、低音が充実した。ベースが沈んで弾みもついた。

「アンクV」も一度フックを取り付けてしまえば、簡単に取り外しができる

部屋のツボを押されて、音の流れが良くなったような感じがすると小首をかしげながら、山下さんに感想を伝えると「位相が干渉するポイントがあって、製品は大きさではないんですね。アンクVのプロトタイプはもっと大きかったのですが、検証の末、最小で最大の効果を得られたこのサイズになりました」ということだった。

その後に、ステレオ録音盤も聴いたが、同じように定位と中低域の安定感はしっかりと向上した。

「アンクV」を取り付けてご満悦の筆者

なぜこの大きさでこうも音が変わるかというルームアコースティックの謎、といいますか神秘は解消されなかったけど、部屋中が日本音響の方々の気持ちは理解できた。山下さん、これはこのまま置いていって欲しいです。






【問い合わせ先】
日本音響エンジニアリング(株)(公式サイト
〒130-0021 東京都墨田区緑1-21-10
音空間事業本部
TEL/03-3634-3525



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