<山本敦のAV進化論 第73回>
【ウォークマン新旧比較 第2弾】新上位モデル「ZX100」を従来機「ZX1」と聴き比べ
【5】Wi-Fiは非対応。Bluetooth機能はLDACも加わり充実
なおWi-Fi通信機能もカットされているため、ZX100ではアプリを追加したり、moraからハイレゾ音源をPCレスでタウンロードすることもできなくなった。
ワイヤレス音楽再生はBluetoothが中心で、ソニーが独自に開発したハイレゾ相当の高音質なBluetooth再生を楽しめるLDACもサポートする。
ZX2はaptXには非対応だったが、ZX100はAシリーズと同様にaptXもLDACも楽しめる。ただし、その設定切り替えは前回レビューでご紹介したAシリーズと同じく、ヘッドホンやスピーカーなどBluetooth機器をペアリングする前に行わなければならない。コーデックを切り替えて、音質の違いを確かめたくても「設定」から「Bluetooth設定」を選び、「ワイヤレス再生品質」の一覧にアクセスしてから、ヘッドホンやスピーカーともう一度ペアリングし直す手間が要る。おそらくAシリーズと同じ世代のプラットフォームをそのまま移植しているのだが、より上質なサウンドや音楽体験にこだわった上位機種ならではのスムーズな操作性にもこだわって欲しかった。
【6】バッテリーのスタミナ性能がアップ
もうひとつ大事な部分では、内蔵バッテリーのスタミナが強化され、ハイレゾの連続再生時間はZX1の約16時間からZX100では約45時間に大きく伸びている。
さらにもう一つ細かな部分では、ZX1の背面に搭載されていたスピーカーがZX100では消滅した。最近のポータブルオーディオプレーヤーは本体にスピーカーを内蔵しているものがめっきり少なくなってきた。
スピーカーならワイヤレスのBluetoothスピーカーを使えばいいじゃないかと言われればもっともだが、海外旅行などなるべく荷物を少なくして出かけた先で、ちょっとした時間に音楽を聴きたくなることもある。そんなときに内蔵スピーカーが重宝する。そもそもスマホなら「できて当たり前」の機能だ。とはいえ、ZX100よりAシリーズに搭載されたら評価される機能かもしれない。筆者は最近、パイオニアの「XDP-100R」(想定売価59,800円前後)にスピーカーが搭載されていることを知り、カジュアルな音楽ファン向けのハイレゾ対応プレーヤーを標榜する本機のコンセプトにブレがないことを実感した次第だ。
■最新の高音質化技術を注入
ZX1のサウンドに関する要望として、「低音再生を強化して欲しい」という声が最も多く寄せられたという。そのため、ZX100では音質に影響を与えるパーツの高音質化に磨きをかけた。筐体シャーシにはアルミ削り出し材を使い、一体化したモノコック構造により剛性を高めた。シャーシには低インピーダンス化した金属製のバスプレートを装着することにより、基板を小さくしながらもグラウンドを強化した。これらの取り組みにより、重心が低く、クリアな低域を獲得したという。
メインの8層マルチレイヤー構造の厚膜銅箔プリント基板は、上下層の配線を電気的につなぐために設けた「VIA(ビア)」の部分を銅メッキで埋めてしまう「Filled VIA構造」により、電気信号を通せる面積を広げて、基板上の電源を安定化した。これによって引き締まった低音、伸びやかな高域が再現できる。同時期に発売されたAシリーズの最新モデルにも同じ技術が採用されている。
基板には低誘電率の材料を使用。多層基板の各層が結合してしまうのを防ぎ、コンデンサ成分をなくすことでスムーズに信号が流れるようにした。基板にパーツを固定するための“はんだ”も材料を変更。独自開発の高純度無鉛はんだは金属結晶の品質を高めることで、各帯域のバランスをよりナチュラルに整えている。基板や金属部品を固定するために使う約30本のビスも、軸の表面を覆う緩み止めに導電フィラーを練り込んだカスタム品を起こして導電性を持たせた。このことが基板に流れる電気信号の安定化を促し、低音を引き締める効果につながる。
ヘッドホン駆動電源のコンデンサーにはZX1と同様に、最新世代のOS-CONを4基搭載。ノイズを抑えながら、よりクリアで量感のある低音再生を可能にしている。限られた基板オーディオ回路のスペース上に、デジタルとアナログそれぞれの回路を最適に配置したことで音のシャープネスを向上。ヘッドホン出力のLCフィルターには4mm角コイルや高品位なメルフ抵抗を使って全体の解像感をアップさせた。なお、ヘッドホンジャックはデジタルノイズキャンセリング機能に対応するため5極のステレオミニ仕様になっているが、ZX2が対応しているグラウンド分離接続については、ZX100では非対応になっている。