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<山本敦のAV進化論 第73回>

【ウォークマン新旧比較 第2弾】新上位モデル「ZX100」を従来機「ZX1」と聴き比べ

公開日 2015/10/21 11:02 山本 敦
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■「NW-ZX100」のサウンドを聴く

今回はNW-ZX100と前機種のNW-ZX1を用意して、それぞれのヘッドホン出力のサウンドを中心に聴き比べた。ヘッドホンには筆者がリファレンスにしているオーディオテクニカの「ATH-MSR7」を使っている。

ZX100のサウンドを試聴した

小沼ようすけのアルバム「GNJ」から、冒頭の楽曲『Jungle』では、スタジオの立体感がZX1よりもZX100の方がより鮮明に描ききる。エレキギターの音色がクリアで、煌びやか。細部の粒立ちもより鮮明に浮かび上がる主旋律のメロディが、演奏にいっそうの躍動感を与える。ZX1がもとから備えていたエネルギッシュでスピード感あふれるキャラクターに、よりいっそう力強い足腰のドライブ感が加わっている。ベースのリズムは軽やかに弾み、乾いたパーカッションの音の響きが空間を満たす。

椎名林檎の『長く短い祭』では、けだるいエレピとブラスのウエットな音色に包まれる。軽快なパーカッションのリズムとのコントラスト感も鮮明だ。ZX1で再生するとボーカルのフォーカスがわずかにぼやけているように聴こえるが、ZX100では付帯音が取れて口元の動きがシャープに描かれる。ベースやドラムの低域も打ち込みが鋭くダイナミックレンジが広い。スピード感溢れる低域が奥行きに深みを与えてくれる。おそらくミュージシャンが狙った音づくりに肉迫しているのではないだろうか。

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮によるベルリン・フィルの「ドヴォルザーク:交響曲第9番『新世界より』」から『第4楽章:フィナーレ(アレグロ・コン・フォーコ)』では、ZX100の方が打楽器やコントラバスによる低域の余韻に厚みが加わり、低域の輪郭は彫りがより深くなったようだ。

高域はトランペットの音が爽快に突き抜け、余韻の切れ味も良い。ZX1の特徴だったエッジ感に磨きがかかっている。弦楽器の音も非常にしなやかで、ハーモニーのほぐれ方もきれいだ。木管楽器のソロなど、細部の輪郭はむやみに強調されることはないが、ブレスやビブラートなど微細なニュアンスの変化を丁寧に蘇らせる。S/Nが良く、無音パートの静寂は冷たい空気の質感も感じさせてくれるほどだ。

ソニーの音もの機能を集めたプリセットである「ClearAudio+」はデフォルトではオフに設定されている。オンに切り替えると、全体的にこってりと濃厚なサウンドになり、特に低域の量感に厚みが加わる。全体に派手でボールドな音になるので、ロックやポップス系のサウンドには合うかもしれないが、クラシックやボーカルの繊細なニュアンスを楽しむ際にはあまり要らない機能かもしれない

ミロシュ・カルダグリッチのアルバム「Latino Gold」から『Barrios Mangore: Un Sueno en la Floresta』では、生楽器の音色の素直な再現性がZX1よりも一段と高まったことがわかる。ギターのメロディに安定感が増して、音の強弱の違いがより緻密に描き分けられるようになった。ギターのハコ鳴りは余韻が肉厚に広がり、階調感も非常にきめ細かい。高域の伸びやかさにも限界がなく、どこまでも明るく艶やかなサウンドにZX100ならではのキャラクターを感じることができた。

全体に中低域が飛躍的に充実したように思う。量感や強さが増したという類の変化ではなく、より効率よくスムーズに力を引き出しながら、応答速度の速さや輪郭の描き込みなどサウンドの「質」が高まったのではないだろうか。ZX1のすきっとしたクリアな爽快感に音の厚みを加えて熟成させたようなサウンドだ。ソースの持ち味も素直に引き出してくるので、例えば人の声や楽器ごとの音色の違いも自然に聴き分けられる。まさに一皮剥けた、次世代のウォークマンサウンドと呼べる大きな進化が実感できた。

■音は大満足。個人的にはAndroid搭載を続けて欲しかった

アーティストが音に込めた思いをそのまま再現するポータブルオーディオプレーヤーだ。音楽を聴きながら、目の奥に浮かんでくる情景のリアリティが圧倒的に高い。ZX2の上品で繊細なキャラクターに対して、ZX100は、よりダイナミックなエンターテイナーの要素も持ち合わせていると言える。

音質に関しては最新世代のウォークマンとして、文句なしに進化の成果が実感できる。また音楽再生専用プレーヤーとしてのシンプルな操作性、ハイエンドモデルとしてのデザインやマテリアルの高級感についても申し分ない。

唯一残念に感じるのは、Wi-Fi接続ができないスタンドアローンのプレーヤーとなり、Androidアプリも使えなくなってしまったことだ。LINE MUSICやAWA、今後Andorid向けにも提供が予定されているApple Musicなど定額制音楽配信サービスが盛り上がってきたのに、あえて時代に逆行してとはいえる。「ストリーミング配信の音楽も、スマホよりもっといい音で楽しめるプレーヤー」の需要は間違いなくあるし、これから音楽リスニングがさらに盛り上がっていくために重要な役割を果たすプロダクトだ。Androidアプリに対応できていれば、TIDALやQobuzが海外で提供しているロスレスの音楽ストリーミングサービスを楽しむのにもベストなオーディオプレーヤーとしてキラープロダクトにもなり得たはずだ。

そこで最後に、音楽配信サービスとAndroid搭載のZX1の相性を確かめるため、AWAの音源を再生してみた。Google Playストアからアプリを簡単にダウンロードができて、Wi-Fiに接続すれば最大320kbpsの高音質ストリーミングが楽しめる。ZX1にはネットワーク通信機能が搭載されていないが、AWAでは最高320kbpsの音質でオフラインキャッシュができるので、お気に入りの音源は本体にキャッシュしてインターネットにつながらない場所でも聴くことができる。

ZX1でAWAの音楽ストリーミングを試聴。iPhoneとも聴き比べてみた

Wi-Fi接続の環境で、320kbpsのストリーミングの音質をiPhoneと聴き比べてみた。ZX1の方がボーカルは高域やピアノのメロディラインに柔らかな質感を感じることができる。iPhoneでの再生も中低域が束になってドンとぶつかってくるような力強さがいい。音の違いがはっきりと現れてくるのが面白い。だがやはり、オーケストラの演奏の壮大なスケール感を描いたり、楽器の音の分離感やストリングスのしなやかな質感を再現させたらZX1の方が明らかに格上だ。低域のスピード感や透明感においてもZX1に軍配が上がる。長い時間でも安心して聴いていられる自然なサウンドだと思う。

AWAはオフラインキャッシュができるので、ネットワークに常時接続ができないZX1でも聴きたい楽曲をキャッシュしておけばリスニングに不便はない

ZX100は、音質についてはZX1からの圧倒的な飛躍を実感できる次世代のハイレゾ対応プレーヤーだ。とはいえ、音質だけでなく、音楽を聴く体験そのものに革新性を追求してきたソニーのウォークマンが、Android搭載によるアプリ対応というコンセプトを上位モデルで中断してしまったのは、筆者としては残念だ。今後、本機と並ぶ価格帯の製品でAndroid搭載ウォークマンのラインナップが拡充されることにも期待したいと思う。

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