AKG「Y50BT」レビュー:人気モデルがBluetooth対応になって登場。音質や外観の違いをチェック!
■分厚く芯の強い低音。ワイヤレスの利便性と音質を両立
小沼ようすけ「GNJ」のトラック『June 7th』では、煌びやかなエレキギターの旋律を分厚く広がるベースが優しく包み込む。低域も十分にクリアなので、中高域をマスクしてしまうことはなかった。パーカッションやドラムスの乾いたリズムも抜けがいい。ピアノコンチェルトでは、弦バスや打楽器の低音がぐんと沈み込んで重厚な演奏を聴かせる。弦楽器は和音がきれいに溶け合ってゆったりと広がる。余韻の階調感も自然なきめ細かさだ。ピアノが奏でる主旋律も音像が明瞭で、ダイナミックレンジも広く再現される。帯域のつながりがとてもスムーズに再現されるところはY50と共通している。
分厚く芯の強い低音はエレクトロ系の楽曲にぴったりはまった。ダフト・パンクの『Doin' It Right』では、伸びやかで音色の濃い低域が空間に充満していく。透明なボーカルやシンセサイザーのメロディが重なり合いながら、一体感あふれる音楽が生まれた。
AWAのストリーミング音源も試聴してみた。Wi-Fi環境で最高音質の320kbpsに設定して聴いている。斉藤和義のライブアルバムから『Always』ではドラムスの打ち込みがビシバシと鋭く決まる。バスドラムの低音が空気をぐんと押し出す迫力も見事に再現されている。エレキギターのトーンは明るくキラキラとしている。ボーカルもクリアに突き抜けるゴージャスな演奏だ。ベースラインもやはり輪郭の彫りが深く、厚みのある余韻が広大で立体的なステージの情景を蘇らせた。
May J.『ふたりのまほう』では切れ味鮮やかなボーカルが楽しめた。ハイトーンがとても伸びやかで潤いもある。ストリングスやコーラスが分厚く重なり合って壮大なスケールのハーモニーをつくり出す。それぞれの旋律の音もしっかりと分離している。ベースラインはとても軽快で、気持ち良くリズムに乗りながら音楽に浸れるヘッドホンだ。
メモリーフォームのイヤーパッドがとても柔らかく肌触りが良いので、長時間音楽を聴いていても心地よさが持続する。同じYシリーズのオンイヤーヘッドホン「Y45BT」はポータビリティで優れているが、装着感の心地よさではやはりY50BTに軍配が上がると思う。耳に乗せるタイプのオンイヤーヘッドホンなので、遮音性は十分に確保されているが、反対に外の音もかなりシャットアウトされるので、アウトドアで歩きながら使う時には十分に注意したい。
AKGでは「エステティック・ノイエ(新しい美的感覚)」というデザイン・ランゲージのもと、「Yシリーズ」や「Nシリーズ」をはじめとする新製品については、本体だけでなく商品パッケージのリ・デザインにも力を入れている。AKGの新たなユーザー層を開拓しながら、スタンダードクラスの定番ヘッドホンとして地位を確立していくヘッドホンになるのではないだろうか。