HOME > レビュー > 声フェチ女子なら悶絶? 人気声優の“ハイレゾ落語”を聞いたら良い感じだった

『昭和元禄落語心中』

声フェチ女子なら悶絶? 人気声優の“ハイレゾ落語”を聞いたら良い感じだった

公開日 2015/12/11 10:30 アニソンオーディオ編集部:押野 由宇
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

▼“声フェチ女子”にはたまらない。落語だからこそ色んな声色を楽しめる(Phile-web編集部:杉浦)

猫も杓子もハイレゾハイレゾ。…とまではいかないかもしれないが、昨今いよいよ“ハイレゾ”が一般用語として浸透しつつある。再生機器はもちろん、コンテンツの方も様々なハイレゾ音源が登場して充実してきている印象だ。しかし、まさかそのコンテンツの1つとして“落語”が来るとは想像の斜め上だった。個人的にたまぁ〜に聴くレベルに好きな落語だが、ハイレゾで聴いてみろと言われるとそのメリットは未知数である。

今回試聴させて頂く噺は「死神」と「出来心」で、どちらも古典落語の超有名作だ。どこかの寄席をハイレゾ録音したのかと思ったら、この音源は噺家さんではなく、声優さんによる語りだという。なるほどアニメなのか。もう“変わり種”すぎて逆に興味が湧く。一体どんな声優さんが演じているのか、演者の名前を見てみると、関 智一さんと石田 彰さんだった。そうか、エヴァでいう鈴原トウジと渚カヲルが落語か。まだオタクへの当たりがキツかった90年代中盤をオタクとして過ごした私にはグッとくる組み合わせだ。そんな感じで気分も乗ってきたところで早速、史上初(たぶん)のハイレゾ落語ファーストインプレッションをお届けしたい。

関 智一さん(与太郎)が「出来心」、石田 彰さん(有楽亭八雲)が「死神」を演じている音源を一通り聴いてみた。これは…とりあえず男の人の美声をずっと聴いていたい“声フェチ女子”にはたまらない音源だと思う。もちろんお二人の声にハマれることが前提ではあるが、ハイレゾ化のおかげか、話芸が重要な落語ということもあってか、とにかく声そのものに没頭できる。落語を取り上げているおかげで、1人の声優さんが1つの噺の中で複数の人物を演じ分けているため、声優さんの様々な声色を自然と堪能できる作りにもなっている。

そして、ちょっとした息遣い全般が生々しい。台詞を発する直前に「スゥ」と吸い込む息の音や、声の掠れや、台詞と台詞の間に入る息遣いがリアルなのだ。「死神」のラストで、石田さん演じる掠れ声の死神がロウソクの火を「消えるぞ消えるぞ…」と畳み掛ける箇所などは、切迫した空気まで感じる。

通常、落語を形作るものは声だけではない。高座にいる噺家さんが、見えない扉を叩いたり、そこにはない蕎麦をすすったりする仕草も、観客がその世界に引き込まれる大きな要素だ。だが、今回は最初から音声だけのコンテンツ。しかしそこは演じるのが声優さんであるという強みを活かし、“声自体の魅力”で完結して楽しめるように作られているのも大きいだろう。実際「サゲまで全て知っているけど、登場人物の滑稽さや噺の構成の面白さについクスッと笑ってしまう」という、普通に落語を聞いているときと同じ雰囲気で楽しめた。ちなみに今回の企画を機に原作を読んでみたらとても面白かった。が、もちろんコミックなので落語部分は文字情報のみ。それがここまで楽しめる落語音声付きでアニメになるのは、とても楽しみ甲斐がありそうだ。

というわけでこのハイレゾ音源に関しては、「落語という芸能をツールにして、声優さんの声の魅力を最大限に楽しめる音源」とでも言えば良いだろうか。ハイレゾ音源としては変わり種ではあるが、このお二人の声優さんのファンの方はきっと楽しめるだろうし、原作ファンの方、「男性の美声が大好物」な全国の声フェチ女子の皆さんにも、ぜひ一度試聴してみて頂きたい音源だ。また落語としても変わり種なので、ぜひ落語ファンの皆さんにもモノは試しに聴いてみて頂きたい。



とのことだ。ちなみに、記者も今回初めて、落語を最初から最後まで通して聴いてみた。記者は男性であるため人前で見せてはならない顔にはならなかったが、正直かなり楽しめた。確かに、伝統芸能に触れるという面でも、意義のあるタイトルだと思う。

本日よりハイレゾ配信が開始しているので、関心を持たれた方は要チェックだ。騙すつもりはないが、騙されたと思って聴いてみて欲しい。作品か、落語か、はたまたその両方か、いずれかにハマることになるのではないか。

(C)雲田はるこ・講談社/落語心中協会

前へ 1 2

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE