<山本敦のAV進化論 第82回>
「PlayStation VR」発売間近、準備は順調! SCE吉田プレジデントが語る開発の裏側
全編CGの映像だが、鮮やかな海の青に色とりどりの深海魚、徐々に深さを増していく深海に飲み込まれてしまうような暗闇のリアリティに息をのむ。
やがて最も深い層に潜ると、大型のサメがゴンドラに襲いかかってくる。サメの鋭い歯と強烈な体当たりをくらって、プレーヤーが乗っているゴンドラも徐々にその形が崩れ、最後には……。
所詮、VR空間の中での出来事とわかっていても、スリル満点なシーンの連続に、自然に手のひらが汗ばんできた。サメが襲い掛かってくる映像では椅子に座りながら思わずのけぞってしまった。これまでに視聴してきたVRヘッドマウントディスプレイと比べても、PS VRの映像は格段に画質に優れているのが特長だと思う。
「THE Deep」はVR空間の中へプレーヤーが働きかけることを必要としない、パッシブなスタイルのコンテンツだった。それでも深海を遊泳したり、例えばほかにも宇宙空間や空を飛んだりなど、生身ではなかなか体験できないこともVRの世界なら実現できてしまう。
訪れたことのない地球の果ての景色も、PS VRならいつか我が家に居ながらでも楽しめるようになるだろう。なるほど、これこそが吉田氏が語るところの「体験をデザインする」ことの重要性なのだろう。平面のディスプレイ上に描かれる高精細な4K映像のリアリティとはまた別次元にある新鮮な体験だ。
■VR空間の中にあるものに触れられる気持ちよさはまさに格別
さらにもうひとつ「The London Heist」というデモコンテンツも遊ばせてもらった。本作はプレーヤー視点でVR空間の中に飛び込んで、PS Moveを使って弾丸を撃ちまくるゲームだ(と思う)。先に少し触れたが、弾切れのマシンガンに新しいマガジンを装填したり、プレーヤーがVR空間の中にあるものに触れたりできる気持ちよさはまさに格別だった。
敵が撃ってくる銃弾を避けようとして身をかがめたり、素早く振り返って背後に目線を移しても、画面に映る映像はしっかりとプレーヤーの動きを追従して、しかも表示の遅延はない。吉田氏が指摘するように、コントローラーによるスムーズな操作感と一体になった、シームレスな映像表示がVR空間の中での居心地の良さに直結している。
VRの世界に興味がわいてくると、映像に対して、ただ受け身で構えていることが何となくもったいないように感じられてくる。気が付くと手を伸ばして、目の前にある立体的なオブジェクトを触ったり掴んだりしたくてうずうずしてくる。
これからのVRエンタテインメントの時代には、ゲームだけでなく、映画やドラマも視聴者が劇中で与えられた役柄を演じながら、参加するような新しい関係性が生まれてくるのかもしれない。
■PlayStationシリーズの入門者にも「とっつきやすいVR」の商品展開に期待
VRヘッドマウントディスプレイは、身に着けると外の視界が閉ざされてしまうので、ちょっと手元を確認することもおぼつかなくなってしまう。
こうした問題に対して、PS VRの場合は、一度しっかりと頭部に固定した後からでも、前方ディスプレイ側ユニットの底部にあるボタンを押して、本体を装着したままディスプレイ側全体を前にスライドできるギミックが搭載されている。
これにより、いつでも手軽に手元を肉眼で見ながらコントローラーに目をやったり、慣れればちょっとした飲食も可能になるだろう。さらに眼鏡を装着したままでも装着できるよう、レンズ側の空間も広く取られているので、筆者のようなメガネ派も気持ちよくプレイできた。筆者の実感としては、Oculus Riftに比べ装着感も格段に良かった。
SCEの発表によれば、今年1月初旬にPS4の世界累計実売が3,590万台に到達したという。今後はゲームだけでなく、パッシブにリラックスして視聴できる360度の風景映像や、一般ユーザーがオンラインにアップした360度動画などがPS VRで楽しめるようになれば、コアなゲーマーの外側にもさらにPlayStationシリーズのユーザーが爆発的に広がる可能性は大いにある。
今回筆者が体験した「The London Heist」のような、VR世界の中で物をつかんだり、気持ちよく暴れまわれるコンテンツをフルに楽しむためには、PS4とPS VR、PlayStation Cameraのほかにも、複数のPS Moveを買い揃える必要がある。
34,980円(税別)で販売されているPS4の価格に対して、PS VRがどの程度の価格で提供されるか注目が集まる。PS4ごと買いそろえたい入門者も手を出しやすい「PlayStation VRスターターキット」のようなセットが、手頃な価格で投入されることを期待したい。