新製品「DM300H」も初公開
Dynamic Motionの韓国本社&ベトナム工場を訪問。高い開発/生産能力の秘密とは?
■高い製造技術と徹底した品質管理でイヤホン生産の屋台骨を支えるベトナム工場
続いて向かったダイナミックモーションの屋台骨を支えるベトナム工場は、ベトナムの北部、首都ハノイ近郊にある。ノイバイ空港から車で20分、ハノイ市内からは30分ほどの距離にあり、地の利は良い。工場の周りはのどかな田園地帯が広がっており、施設内で働く700人を超える従業員は近隣の集落からバイクなどで通っているそうだ。
ベトナム工場ができるまでは中国で生産を行っていたが、人件費の高騰や主要供給先企業の移転などもあり、勤勉な国民性や用地確保、人件費、諸々の要件を満たしたベトナムに進出したという。また中国工場ではドライバーユニットのみを製造していたが、ベトナム工場ではドライバーユニット製造に加え、自社ブランドイヤホン/ヘッドホンの低価格ラインナップやOEMイヤホンも手掛けるようになった。1つの工場でユニットからイヤホン/ヘッドホンの完成品までを製造できるようになったのである。
このベトナム工場では、ダイナミックモーションの低価格ラインの製品が主に製造されている。具体的には、入門機「DM010」やその上のクラスで韓国市場をターゲットにチューニングを行った「DM030」、ヘッドホンではオンイヤー型入門モデル「DM600」などだ。取材に訪れた折には、スマートフォンのバンドル用イヤホンや、DM010がラインに乗っていた。ベトナム工場は、ダイナミック型ドライバーの製造工程と、イヤホン/ヘッドホン組み立て工程にラインが大きく分けられ、さらに自社向け製品用のラインもそれらとは別に設けられている。
このほか、仕入れた材料に有害物質が含まれていないかチェックを行う検査部門や、韓国本社と同じ検査機器を導入した完成品の耐久力を確認する部門も設けられており、製造には万全の態勢を敷く。ユニット製造の工程は韓国本社よりも大規模なもので、銅線リールからボイスコイルを作り上げる工作機械も大幅に増え、磁気回路とフレームを接合する工程まで自動化されていた。
工場内で最も大きな部屋に設けられたOEM向け製造ライン工程は、1本30m近い長さがある。別室で作られたドライバーユニットをプラスチックの筺体へ収め、ボイスコイルからの端末部をPCBへハンダ付けし、導通チェックを行うまでがこの1本のラインで仕上げられる。隣のレーンに目を移すと、ケーブルをハンダ付けして最終製品に仕上げる工程が設けられていた。この製造ラインの各所で目にしたのが、ダイナミックモーションが自社開発した製造支援用器具の数々だ。中国工場時代から積み上げてきたノウハウを基に、効率の向上を目指してきた結果、工作機械も自社設計・製造した方が早いと判断したようである。いずれにせよ高い技術力を持つことに違いはなく、その物量投入の度合いに驚いた。
新入社員向けの研修ルームも別途設けられている。研鑚を積みレベルアップしたらよりプレミアムなクラスの製品が手掛けられる仕組み(賃金もアップ)となっているそうで、従業員のモチベーションも高い。このプレミアムクラス専用ラインもまた別室に設けられており、少人数がDM010やDM030などの同工場内で取り扱うモデルの中では比較的単価の高い製品の製造にあたっていた。ベトナム工場はただ大量生産のためだけの拠点ということではない。自社完成品を作れる体制となったことで、ブランド全体のレベルが底上げされ、どの価格帯でも安定した盤石なクオリティを誇る製品を送り出せるようになったといえる。実際、最も低価格なDM010は非常に素直で表現力の豊かなサウンドを持つイヤホンに仕上がっており、日本導入されていないのが惜しいくらいのものであった。ダイナミックモーション製であることはもちろん、ベトナム工場から出荷される製品にも要注目である。
ベトナム工場では現在日本メーカーからのOEM(イヤホン製造)の話も進んでいるとのこと。自社ブランドの技術力・音質の良さが日本市場で浸透しつつあることが、OEMビジネスの伸張に結びついているのだという。ダイナミックモーションの上層部も現在の状況を喜ばしく思っていて、今後も日本市場の展開を大事にしていきたいと語っていた。
■ハイブリッド2ウェイモデル「DM300H」を披露してくれた
新製品の話題も伺ったところ、先頃のCESでダイナミックモーション・ブースにて参考出展されていたという、新たな特許技術を取り入れた“BULLS EYE Driver”を搭載するハイブリッド2ウェイ機「DM200H」「DM300H」を挙げてくれた。こちらは本社生産モデルとなる予定だが、30年以上こだわってきたダイナミック型ドライバーの可能性を引き出すため、あえてバランスドアーマチュア型(以下、BA型)ドライバーと組み合わせたハイブリッド構成を採用したという。
ただし、この新製品はありきたりなハイブリッド構成ではない。他社では実現が難しいであろう微細なリング形状の低域用ダイナミック型ドライバーを開発。その中央に空いた穴へBA型ドライバーを収め、位相のタイミングを合わせこむという同軸思想を貫いた特別なユニットを積んでいる。
現段階での試作機も聴かせていただいたが、カナル型とは思えないすっきりとした音場と明瞭な音像定位を味わえ、抜けの良い高域の立ち上がりと高密度で安定した低域の豊かさが絶妙なバランスで融合した、良質なサウンドであった。おそらく日本市場には「春のヘッドホン祭」でお披露目されると思われるが、その完成度の高いサウンドにもぜひ期待していただきたい。
(岩井喬)
続いて向かったダイナミックモーションの屋台骨を支えるベトナム工場は、ベトナムの北部、首都ハノイ近郊にある。ノイバイ空港から車で20分、ハノイ市内からは30分ほどの距離にあり、地の利は良い。工場の周りはのどかな田園地帯が広がっており、施設内で働く700人を超える従業員は近隣の集落からバイクなどで通っているそうだ。
ベトナム工場ができるまでは中国で生産を行っていたが、人件費の高騰や主要供給先企業の移転などもあり、勤勉な国民性や用地確保、人件費、諸々の要件を満たしたベトナムに進出したという。また中国工場ではドライバーユニットのみを製造していたが、ベトナム工場ではドライバーユニット製造に加え、自社ブランドイヤホン/ヘッドホンの低価格ラインナップやOEMイヤホンも手掛けるようになった。1つの工場でユニットからイヤホン/ヘッドホンの完成品までを製造できるようになったのである。
このベトナム工場では、ダイナミックモーションの低価格ラインの製品が主に製造されている。具体的には、入門機「DM010」やその上のクラスで韓国市場をターゲットにチューニングを行った「DM030」、ヘッドホンではオンイヤー型入門モデル「DM600」などだ。取材に訪れた折には、スマートフォンのバンドル用イヤホンや、DM010がラインに乗っていた。ベトナム工場は、ダイナミック型ドライバーの製造工程と、イヤホン/ヘッドホン組み立て工程にラインが大きく分けられ、さらに自社向け製品用のラインもそれらとは別に設けられている。
このほか、仕入れた材料に有害物質が含まれていないかチェックを行う検査部門や、韓国本社と同じ検査機器を導入した完成品の耐久力を確認する部門も設けられており、製造には万全の態勢を敷く。ユニット製造の工程は韓国本社よりも大規模なもので、銅線リールからボイスコイルを作り上げる工作機械も大幅に増え、磁気回路とフレームを接合する工程まで自動化されていた。
工場内で最も大きな部屋に設けられたOEM向け製造ライン工程は、1本30m近い長さがある。別室で作られたドライバーユニットをプラスチックの筺体へ収め、ボイスコイルからの端末部をPCBへハンダ付けし、導通チェックを行うまでがこの1本のラインで仕上げられる。隣のレーンに目を移すと、ケーブルをハンダ付けして最終製品に仕上げる工程が設けられていた。この製造ラインの各所で目にしたのが、ダイナミックモーションが自社開発した製造支援用器具の数々だ。中国工場時代から積み上げてきたノウハウを基に、効率の向上を目指してきた結果、工作機械も自社設計・製造した方が早いと判断したようである。いずれにせよ高い技術力を持つことに違いはなく、その物量投入の度合いに驚いた。
新入社員向けの研修ルームも別途設けられている。研鑚を積みレベルアップしたらよりプレミアムなクラスの製品が手掛けられる仕組み(賃金もアップ)となっているそうで、従業員のモチベーションも高い。このプレミアムクラス専用ラインもまた別室に設けられており、少人数がDM010やDM030などの同工場内で取り扱うモデルの中では比較的単価の高い製品の製造にあたっていた。ベトナム工場はただ大量生産のためだけの拠点ということではない。自社完成品を作れる体制となったことで、ブランド全体のレベルが底上げされ、どの価格帯でも安定した盤石なクオリティを誇る製品を送り出せるようになったといえる。実際、最も低価格なDM010は非常に素直で表現力の豊かなサウンドを持つイヤホンに仕上がっており、日本導入されていないのが惜しいくらいのものであった。ダイナミックモーション製であることはもちろん、ベトナム工場から出荷される製品にも要注目である。
ベトナム工場では現在日本メーカーからのOEM(イヤホン製造)の話も進んでいるとのこと。自社ブランドの技術力・音質の良さが日本市場で浸透しつつあることが、OEMビジネスの伸張に結びついているのだという。ダイナミックモーションの上層部も現在の状況を喜ばしく思っていて、今後も日本市場の展開を大事にしていきたいと語っていた。
■ハイブリッド2ウェイモデル「DM300H」を披露してくれた
新製品の話題も伺ったところ、先頃のCESでダイナミックモーション・ブースにて参考出展されていたという、新たな特許技術を取り入れた“BULLS EYE Driver”を搭載するハイブリッド2ウェイ機「DM200H」「DM300H」を挙げてくれた。こちらは本社生産モデルとなる予定だが、30年以上こだわってきたダイナミック型ドライバーの可能性を引き出すため、あえてバランスドアーマチュア型(以下、BA型)ドライバーと組み合わせたハイブリッド構成を採用したという。
ただし、この新製品はありきたりなハイブリッド構成ではない。他社では実現が難しいであろう微細なリング形状の低域用ダイナミック型ドライバーを開発。その中央に空いた穴へBA型ドライバーを収め、位相のタイミングを合わせこむという同軸思想を貫いた特別なユニットを積んでいる。
現段階での試作機も聴かせていただいたが、カナル型とは思えないすっきりとした音場と明瞭な音像定位を味わえ、抜けの良い高域の立ち上がりと高密度で安定した低域の豊かさが絶妙なバランスで融合した、良質なサウンドであった。おそらく日本市場には「春のヘッドホン祭」でお披露目されると思われるが、その完成度の高いサウンドにもぜひ期待していただきたい。
(岩井喬)