旗艦機“Grandioso”直系のスタンダード機
エソテリック「C-03Xs/S-03」レビュー。音楽の“静と動”を描き切るセパレートアンプ
例えば、ヒラリー・ハーンの現代曲集『アンコール』(CD)は、一糸乱れぬ揺れのない定位に感銘を受ける。スピーカーシステムをいかに掌中にしているかが分かる。デュアルモノ/フルバランスの完璧な位相管理で、バイオリンは周波数変動による位相の乱れがないばかりか、ボーイングの様子が目に見えるほど定位が精密だ。弓がコンタクトする瞬間の、発音の水も漏らさぬ解像力も息を呑む。ボーイングの滑らかできめ細かい分解能、弱音の生き生きした存在感も冴え、等身大の奏者が彫りの深い前後音場中央にくっきりと現れる。
サンフランシスコ・コーラスアーティスツの『スター・オブ・ワンダー』(CD)は、倍音成分に歪みが出やすい難関ソフト。しかし、ボリュームを上げても雑味が混じらず、高域のコントロールが絶妙。ボーイソプラノの倍音が試聴室空間へ制限なく伸びテノールが寄り添う。透明感ある寒色の音色と穏やかな暖色の音色差の生き生きとした表現する。どちらかというとエソテリックのアンプは硬質な感触という先入観があったが、本機は色彩感豊かで人肌の体温を忘れない。声のバラエティに富む美しさをこれだけ素直にナチュラルに描くアンプは稀。
このコンビで聴いて特に印象的だったは、寺井尚子(ジャズバイオリン)の『HOT JAZZ』(SACD)だ。新クインテットに加入の名手、佐山雅弘のピアノ低音のズシンという音圧がライブステージ並のダイナミックレンジで響く。バイオリン寺井尚子(マイクで増幅)が眼前に等身大で迫り豊麗な音量で縦横無尽に弾きまくる。C-03Xs+S-03はオーディオシステムで聴いていることをひと時忘れさせる腕っ節の強さがある。
ダイナミックであるだけでなく、C-03Xs+S-03はノイズ管理に優れ、歪みを感じさせない。したがって静の表現にも秀れている。fレンジのバランスが高く、音色に色付きがないので再生ジャンルも選ばない。この点も音楽を聴く手段として「ミニマルアプローチ」と言える。C-03Xs+S-03には、スピーカーシステムをグレードアップしていっても破綻なく鳴らし切る安定感と懐の深さがある。
アンプがこのペアならば、今後新しいデジタルソースが出現してもアナログ入力が可能な限り、最低10年、音楽ファンならもしかすると一生、アンプのことで悩まなくてすむといったら大げさだろうか。無類の完成度と安定感に安住してしまう危険性こそが、C-03Xs+S-03の唯一の難点かもしれない。
(大橋伸太郎)
サンフランシスコ・コーラスアーティスツの『スター・オブ・ワンダー』(CD)は、倍音成分に歪みが出やすい難関ソフト。しかし、ボリュームを上げても雑味が混じらず、高域のコントロールが絶妙。ボーイソプラノの倍音が試聴室空間へ制限なく伸びテノールが寄り添う。透明感ある寒色の音色と穏やかな暖色の音色差の生き生きとした表現する。どちらかというとエソテリックのアンプは硬質な感触という先入観があったが、本機は色彩感豊かで人肌の体温を忘れない。声のバラエティに富む美しさをこれだけ素直にナチュラルに描くアンプは稀。
このコンビで聴いて特に印象的だったは、寺井尚子(ジャズバイオリン)の『HOT JAZZ』(SACD)だ。新クインテットに加入の名手、佐山雅弘のピアノ低音のズシンという音圧がライブステージ並のダイナミックレンジで響く。バイオリン寺井尚子(マイクで増幅)が眼前に等身大で迫り豊麗な音量で縦横無尽に弾きまくる。C-03Xs+S-03はオーディオシステムで聴いていることをひと時忘れさせる腕っ節の強さがある。
ダイナミックであるだけでなく、C-03Xs+S-03はノイズ管理に優れ、歪みを感じさせない。したがって静の表現にも秀れている。fレンジのバランスが高く、音色に色付きがないので再生ジャンルも選ばない。この点も音楽を聴く手段として「ミニマルアプローチ」と言える。C-03Xs+S-03には、スピーカーシステムをグレードアップしていっても破綻なく鳴らし切る安定感と懐の深さがある。
アンプがこのペアならば、今後新しいデジタルソースが出現してもアナログ入力が可能な限り、最低10年、音楽ファンならもしかすると一生、アンプのことで悩まなくてすむといったら大げさだろうか。無類の完成度と安定感に安住してしまう危険性こそが、C-03Xs+S-03の唯一の難点かもしれない。
(大橋伸太郎)