<山本敦のAV進化論 第89回>
新iPad Pro 9.7インチは“ノートPCの代わり”になるか? その“ビジネス力”を見極める【前編】
Apple Pencilは文字や画を描く時以外にも、音楽プレーヤーやDLNAリモコンアプリのタップ操作もより気持ち良く感じさせてくれるアイテムだ。例えばプレーヤーアプリのイコライザー設定も、Apple Pencilを使えば微調整までスムーズに操作できた。
今はApple Pencilを外出先に持ち歩くためのスマートな携帯スタイルを模索している段階だ。ペン先と反対側に格納されているLightning端子をカバーするマグネットキャップもなくしてしまわないか心配だし、サイズがぴったり合うオシャレなペンケースが文具メーカーなどからも出ているようなので物色してみよう。
■iPad進化を読み解くカギは「Smart Connector」
現時点では、不覚にも「Smart Keyboard」が入手できていない状態だが、筆者にとって新しいiPadは「PCから乗り換えても良い」と思えるほどの相棒になり得るのだろうか?
その結論に迫るためにはもう一つ、iPadによる画像データの編集作業を十分に検証してみる必要がありそうだ。記者会見や発表会を取材すると、撮影した写真データを即座に加工・整理して納品という作業を手早くこなす必要が出てくる。
筆者はまだ今のところ、「SDカードから写真データをノートPCで読み込んで、Adobe Photoshopで加工・編集」という環境以上に、このワークフローをスムーズにこなせる手段を知らない。
写真データはEyefi Mobi ProカードからiPadにワイヤレスで読み込む方法でスマートにいけそうだ。アドビからはモバイルデバイス向けに「Adobe Photoshop Mix」など画像編集アプリも提供されているが、操作方法などがPC版とかなり変わるので、まだ使い勝手に戸惑っている段階だ。もう少し使い方をマスターしてからフェアに判断したいと思う。
ところで今回の筆者の場合も含めて、一般的に多くの方は「ノートPCからの乗り換え」を想定する際、既存のワーキングスタイルをそのまま移行できるかを気に掛けるはずだ。
特にビジネスでノートPCを活用されている方々は、PCを買い換える際に「革新的な新機能」が搭載されているよりも、現在の作業環境を安心して移行できる「継続性と安定感」を求める声が強いと聞く。
かたや、iPadやiPhoneなどのモバイルデバイスは最新機能やサービスのトレンドを採り入れながら、時には外部機器との接続インターフェースを大きく刷新するなど、半年から1年周期でハイスピードに進化してきた。iPadからノートPCへの乗り換えを本気でアピールするなら、持続可能なサービスと機能の開発を続けて、安心感をユーザーに保証する姿勢も大切だ。
最近はアップルの第一印象を「iPhoneやiPadをつくっているメーカー」と捉える向きも多いと聞くが、言うまでもなく同社は長年Macintoshシリーズのコンピューターを開発、展開してきた会社だ。だからPCユーザーが乗り換えたくなるiPadとは何か、その答えを一番良く知っているはずだ。
筆者はiPad Proシリーズから搭載された新しいインターフェースである「Smart Connector」に、これからのiPadの進化を読み解く鍵が隠されていると考える。
最近ではiPadの新製品が発表されるといつも「新機能に面白みがない」「驚きがない」と評価する声も多く聞こえてくるが、これはつまり良くも悪くも「タブレット」というデバイスの完成形に、近年のiPadが辿り着いてしまったことを意味しているのだろう。もしかすると、今後iPadをはじめとするタブレットが、単体で私たちをあっと驚かせるようなイノベーションを見せてくれることはないのかもしれない。
「それならばiPad本体は、多くの人々が長く安心して使い続けられるよう、ある程度機能を固定させて、Smart ConnectorやLightning、Bluetoothといったインターフェースを活用しながら、iPadを取り巻くクリエイティブなアクセサリーによる革命を起こしていくことが、これからのアップルが向かおうとしている方向なのかもしれない」と、ピカピカのiPadの液晶画面に保護フィルムを貼りながら、取り留めもなく思考を巡らせてみた。