[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第154回】iPhoneのイヤホン端子がなくなったらどうなる? エレコムの中の人と語ってきた
■Lightningとハイレゾの微妙な関係
さて、「どちらが主流になるか?」というのはもちろん重要な観点だ。主流になり売れるジャンルになればよい製品が登場してくる可能性も高まり、そして逆もまた…となる。
だがそれはそれとしてシンプルに「LightningとBluetooth、オーディオ的にどっちがいいの? 現状どうなの? 今後どうなるの?」というところに興味が向くのも、オーディオファンとしては当然だ。
大前提としてBluetoothは非可逆圧縮しての伝送。Bluetoothは高速通信を想定した規格ではないので、非圧縮の音声データの送受信には伝送速度が足りないからだ。なのでオーディオ的には、有線で伝送速度に余裕があって、その点ではハイレゾ対応も余裕なLightningが大きく優位。
ということでまずはLightningの方から考えていこう。ただこのあたりは周辺機器メーカーには契約上の守秘義務がある部分だ。なので遠藤氏へのインタビューからは一旦離れ、この分野の製品に仕事柄多く触れてきて注視もしてきた筆者の経験、それを基にした推測で話を進めていく。
現在様々なメーカーから発売されている、Lightningケーブル1本直結、カメラアダプタを挟まずにiPhoneと接続できるイヤホンやヘッドホン、ポータブルアンプのスペックを確認してみると、ある「決まりごと」を推察できる。
●イヤホンやヘッドホンは48kHz/24bitまでの対応
●ポタアンにはそういう上限は見当たらない
単に技術的なことで考えれば、Lightning接続のイヤホンやヘッドホンというのは、「Lightning接続ポタアン一体型」イヤホンやヘッドホンだ。ポタアンで96kHzや192kHzに対応できてイヤホンだとできないなんてことはない。
技術的な問題ではないとすれば、その製品にMFi認証を出す出さないという「Appleの思惑」でそうなっていると考えられる。
実は山本敦氏による以下のレポート記事で、ヘッドホンメーカーの側からもそこが少し明らかにされている。ここは話して問題ない部分ということだろう。
【CES】ゴールデンイヤーが語る − 世界初のLightning接続ハイレゾヘッドホン「Fidelio M2L」の詳細
今回の話に関わるポイントを引用させてもらうと、
Lightning経由でiOS機器から入力された信号は固定式のケーブルを伝わって、最初に「Lightning Audio Module(LAM)」というアップルが提供するモジュールに到達する。
ハイレゾ対応ではあるが、再生できるファイルの上限は48kHz/24bitまで。「アップルのiOSの仕様に則ったもので、48kHz以上の信号についてはダウンコンバートされる仕様です。M2Lについてはアップルの規定に沿ったかたちで開発を進め、最終的にはセットとして認証を取得できた段階で発売となりました」
・・・というところだ。
どうやら、Lightning接続のイヤホンやヘッドホンでMFi認証を得るには「Lightning Audio Module(LAM)」の搭載が必須であり、それの搭載が許可され認証を得られるのは48kHz/24bitまで、というのが現状なのではないかと思われる。一方、ポータブルアンプは96kHz/24bit以上に対応する製品が普通にあるので、そういった事情はないのだろう。
今後にLightning接続のイヤホンやヘッドホンで96kHz/24bit超に対応する製品が登場するかどうかは、Appleの思惑というか戦略次第と思われる。