<山本敦のAV進化論 第93回>
どれを選べばいい?「定額制&無料VODサービス」16社の特徴を徹底解説!
ところが今では光回線などスピーディーで安定したネットワーク品質が得られるブロードバンドが家庭に浸透してから、テレビがまずSNSやクラウドサービスにつながった。番組そのものだけでなく、これに付随する様々な情報も込みでテレビ番組を味わい尽くすスタイルが定着してきた。
そして、昨年にSVODをベースにした「動画配信元年」が訪れたことにより、純粋に映像コンテンツを一人で楽しみたいという視聴者にとっても、インターネットを通じて、テレビのチャンネルを超えた国内・海外の様々なプレミアムコンテンツと出会える窓が開いた。
その傾向は、LTE通信速度の高速化と品質の安定化、デバイスの大画面化に伴う「モバイルデバイスの進化」を伴ったことで、コンテンツを楽しむ場所と時間の制約が解放され、さらに加速しているようだ。
ところが、ひとりの人間が1日24時間の間に動画視聴のために割ける可処分時間は限られている。だからいま、各テレビ局も独自に制作したプレミアムコンテンツに人々の目を向けさせるため、VODサービスのプラットフォームも整備しながらあの手この手を尽くしている。
NHKは国内ではまだVODサービスが注目されるずっと前から、独自に制作してきたリッチコンテンツのアーカイブを「NHKオンデマンド」として提供しながら着実にファンをつくってきた。大河ドラマや連続テレビ小説など、NHKならではのコンテンツを放送から14日間程度見逃し視聴ができ、ニュース番組をセットにした「見逃し見放題パック」と、過去に放送され保存されているNHKアーカイブスから厳選したタイトル約5,000本が見られる「特選見放題パック」がそれぞれ月額972円で、PC・テレビ・モバイル向けに提供されている。
民放のテレビ局各社も昨年から「TVer」(関連:レビュー記事)ののサービスを立ち上げて、それぞれに独自コンテンツをスマホやタブレットなどの機器で、放送後1週間程度まで無料で楽しめる仕組みを整えた。各局の人気テレビドラマなどコンテンツの中には、既に他社のVODプラットフォームの中に組み込まれているものも多くある。NHKとは異なるビジネススタイルを採って足場を固めている各民放局が、今後どのような形にサービスの基本を落とし込んでいくのか注目していきたい。
またサイバーエージェントとテレビ朝日が共同で“インターネットテレビ局”としてスタートさせた無料の動画配信サービス「AbemaTV」では、オリジナルのライブ配信コンテンツの制作と配信にも力を入れている。960円/月額で有料提供するオンデマンド型のサービスもあるが、従来のテレビらしい緩く楽しめる視聴スタイルをインターネットベースのVODプラットフォームで定着させていこうとする試みには斬新さがある。
4K/HDRの拡大に伴い、テレビで楽しむコンテンツはますます高画質化していくだろう。だが一方では様々なVODプラットフォームのサービスを取り込んだテレビやレコーダーを使って、私たちはより便利にたくさんの映像コンテンツを楽しめる時代がもう既にやってきているんだということを、もっと意識しても良いのではないだろうか。