HOME > レビュー > ティアックの最上位ポタアン「HA-P5」レビュー。小型ボディに凝縮した機能を総検証

従来機と一線を画す格調高いルックス

ティアックの最上位ポタアン「HA-P5」レビュー。小型ボディに凝縮した機能を総検証

公開日 2016/06/20 10:39 中林直樹
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

リケーブルしてグランド分離駆動を試す

では、3つ目のテーマに移ろう。実はHA-P5のヘッドホン出力は、グランド分離駆動に対応している。これは、左右のチャンネルのグランドをアンプ部から信号の出口であるヘッドホンジャックまで完全分離し、それによってチャンネルセパレーションの向上を狙うという設計である。仕様は4極3.5mmで、ジャック部分は一般的な3極タイプと共用する。

このグランド分離駆動を検証するため、Orionを対応ケーブルに付け替えてみた。いわゆるリケーブルである。ケーブルが着脱可能なタイプをあらかじめ選んだのは、この接続を視野に入れていたからだ。用意したのはNOBUNAGA Labsの「蜉蝣」。なお、これにあわせて送り出しもパソコンに変更した。

NOBUNAGA Labsのリケーブル「蜉蝣」

MacBook Airとの接続で試聴

グランド分離駆動で聴くテデスキ・トラックス・バンドは、ボーカルの透明感が一段とアップ。ざらりと乾いた歌声がバンドサウンドと混じり合い、アーシーな楽曲をさらに味わい深いものにしている。

DSDファイルの再生でも、本機のポテンシャルの高さを存分に堪能した。沖縄在住のシンガーソングライター、HA〜HAの『sotto』(5.6MHz)は現代風南国アシッドフォーク(?!)ともいえる、独特の空気を湛えたアコースティックな作品。音数は少ないが、サウンドは非常に立体的に構築されている。それをこのシステムでは、余分な響きを抑えつつ歌声や楽器そのものの音色をストレートに表現する。それでいて広々としたサウンドスケープも描き出していた。

HA〜HA『sotto』(5.6MHz)

ベイヤーダイナミック「T5p 2nd Generation」も鳴らし切る

最後は大型のヘッドホン、ベイヤーダイナミックの「T5p 2nd Generation」に変更。密閉型でインピーダンスは32Ωとし、ポータブルプレーヤーと組み合わせたアウトドアユースも視野に設計されたモデルだ。これを通常の3極3.5mmで接続した。

beyerdynamic「T5p 2nd Generation」

テデスキ・トラックス・バンドは、低域の勢いが一層高まっている。やはり、アンプ自体の能力の高さを感じずにはいられなかった。このバンドには十数名のミュージシャンが在籍しており、ホーンセクションまでを内包する大編成で奏でるロックサウンドだが、このシステムでは各パートが調和して一体感を保ちながらも大きな音場を作り上げているのも面白い。

これまで幾度となく様々なシステムでこのファイルを聴いてきたが、この味わいは格別だ。HA〜HAでは高域がやや刺激的に聴こえるものの、頭の周囲に漂うかのような3D的表現はなかなか出会えるものではない。



オーディオシーンには、時として音楽との付き合い方を根源的に変えるパワーを秘めた逸品が姿を現す。そこにボディの大小は問われない。エレガントなボディの中に注目すべきフィーチャーがぎゅっと凝縮された本機も、じっくりと向き合うことで未体験のゾーンへ誘ってくれる、そんな価値を有している製品だと今回の試聴を通して感じた。

前へ 1 2 3 4

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク