[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第159回】パナソニックお洒落ヘッドホンの新旧“ 神7!”を対決させてみた
▼RP-HD7
まずは「新・神7」であるRP-HD7(実売目安2万6000円)。
「RP-HDxx」は2014年秋の「RP-HD10」、2015年秋の「RP-HD5」と展開されてきた、パナソニックの最新シリーズ。おそらく同社のリファレンス、スタンダードとして今後の製品開発の礎となる、そういった役割も持たされているであろう重要なシリーズだ。
…と思っていたところに登場したRP-HD7がこういったデザインだったものだから驚いた。しかしこのモデルは技術音質面はシリーズの先行モデルを礎としており、そういう意味ではこの型番も当然だ。あえて言えば、それこそ「h.ear on(MDR-100A)」のように、「愛称(RP-HD7)」のような方式でもよかったと思う。
さておき、まずは技術面をさくっと復習。最大のトピックは「超多層フィルム(Multi Layer Film)振動板」だ。名前の通りに合成樹脂系の素材を何層も重ねてある素材だが、その「何層も」というのが「数百層」だというからすごい。
例えば楽器に木材を使う場合でも、単板よりも合板の方が強度は高く、鳴り具合をコントロールしやすいという。楽器に場合は、狙う音次第でどちらがよいというものではないが、ヘッドホンの振動板としては、素材の積層によって得られる「高剛性」「不要な響きを減衰させやすい」というのは、なるほど利点ばかりと思える。同社の説明によれば「不要な残響を残さず、高い応答性、広帯域・高解像度再生を実現」だそうだ。
なおこのMLF振動板は「RP-HD10」には採用され「RP-HD5」ではオミットされている要素。しかしパナソニックとしては「5と7は上位下位ではなく別路線」とのことだ。実はその振動板の他は、製品サイト等で技術面は特にはアピールされていない。技術的に工夫をしていないということではなくて、技術的なアピールが受ける、そこをほしがるユーザー層は狙っていないということだろう。
ではどこをアピールしているのかというと「こだわりの装着感」と「上質なデザイン」だ。「こだわりの装着感」というのには、実際装着してみたら一瞬で納得させられた。「あたまの形に添う」というヘッドバンドのフォルム、優しく固定する必要最小限の側圧、イヤーパッドの肌触り。それらのトータルで実に快適だ。
シリーズの他のモデルは「HSアジャスト機構(ヘッドバンド水平スライド調整)」で装着ポジションを細かく調整が可能だが、このモデルではそれはオミット。デザインとの兼ね合いという部分も大きいだろうが結果的に、普通にヘッドバンドの長さだけ合わせればOKという使い勝手のよさを得ている。
なお製品版パッケージには「しっとりなめらかノーマルタイプ」の他、「ふんわりあたたかスエードタイプ」のイヤーパッドも付属して交換可能とのこと。好みや季節に合わせて使い分けてほしいとのことだ。なお使い勝手の面で不便なところとしては、折りたたみ機構がないこと。
「上質なデザイン」については、まあデザインの話であるので好みは分かれるだろうし、カラバリ含めて基本的には女性を意識したものと思われるので、男性ユーザーだとぴんとこない方も多いのではと思う。しかし好みはさておき実物を確認してみてもらえば、その方向性での完成度の高さには異論はないだろう。
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