“低音強化モデル”のサウンドは?
ETYMOTICの新境地を拓いた待望の新イヤホン「ER4SR」「ER4XR」をレビュー
現代的な低域表現を手に入れた同社の新境地「ER4XR」
モニター系サウンドを特色とした同社の新境地を拓くモデルが、低音を強化したという「ER4XR」だ。
「ER4XR」のサウンドは、飽くまでも“Etymotic Research社のイヤホンとしては低音が強く出る”という感じで、一般的な大手メーカー製イヤホンと同水準。基本はやはり「ER4SR」の低音をブーストした感じだろう。ただ、低音以外は基本的に同じ帯域バランスに整えられているはずだが、聴感上は中高域のサウンドにも変化があることに気づいた。
3フランジ・イヤーチップを装着し、まずSHANTIの『Killing Me Softly With His Song』を聴くと、「ER4SR」と比較しても女性ボーカルのアタックが強めに出て声の立体感が増しており、シンバルの金属音も繊細さのみならずわずかに急峻さを増している。アコースティックギターの余韻、空気感と繊細な音を出し切るEtymotic Research社らしいサウンドに加えて、音の刻みの鋭さも向上している。ベースはゴツリとした芯を持たせて付帯音も響かせない低音で、狙い通り完璧に低音のレベルをコントロールした成果と呼ぶべきだろう。
JロックのKEYTALKの『桜花爛漫』を聴いても、エレキギターの厚みと安定感が増しており、男性ボーカルの声も輪郭を明瞭に表す。ドラムもソリッドな響きとキレを獲得しており、モニター系の音を元に現代的な音源との相性向上は狙い通りだった。
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒 オリジナル・サウンドトラック』の音源ではメロディラインとダイナミックさを増す一方で、オーケストラの音源としての音場感、ハーモニーと音楽への没入感を求めるならベースモデルの「ER4SR」が一枚上手だ。
付属のフォームイヤーピースに交換して聴いてみた。その効果の程は「ER4SR」と同じく解像度の上昇と中広域の鮮明さの向上。特に全帯域の音を伸びやかに徹底的に引き出すという点では、「ER4XR」とフォームイヤーピースの組み合わせは「ER4SR」以上の圧倒的な情報量を持つ。ただし、女性ボーカルの声やシンバルなどのアタックがより強くなるため、好みに応じて3フランジ・イヤーチップと使い分けると良いだろう。
「ER4SR」「ER4XR」を聴いてみると、やはりベースには繊細さと解像感を併せ持つ「ER-4S」から通じるEtymotic Research社のサウンドがしっかりとある。スタンダードな高音質モデルとしての「ER4SR」は勿論だが、より現代的なチューニングとして低音を重視した「ER4XR」も一度は試してみてほしい。低音ブーストのみに留まらない、Etymotic Researchの高音質の新境地を体験できるはずだ。