31cmで100インチ投写が可能
超短焦点プロジェクターは“スクリーン選び”がミソ! オプトマ「EH320UST」レビュー
■超短焦点プロジェクターのためのスクリーン選び
さて今回、EH320USTを体験するためにオーエスの視聴室まで伺った最大の理由が、複数のスクリーンを試すため。というのも、超短焦点プロジェクターは、一般的な正面投写型のプロジェクターとはスクリーン選びのポイントが異なるのだ。
一般的にホームシアター用のスクリーンというと、ロール状に丸められたスクリーンを吊り下げて使うタイプ、もしくは床から上に引っ張り上げるタイプが挙がるだろう。
しかし、多くのスクリーンにはたるみや歪みが発生している。このたるみや歪みは、正面投写型のプロジェクターではほとんど気にならない。しかし、至近距離からミラー反射を利用して映像を斜めに打ち上げる超短焦点プロジェクターの場合、このたるみ・歪みの影響を強く受けて投写映像が歪んでしまうのだ。
この話は聞いていたものの、個人的には「少しくらいなら許容範囲だろう」と思っていた。しかし、今回の取材で実際にぴしっと張っていないスクリーンに映像を映してみて、その意味が理解できた。投映していない状態ではわずかにしか感じないスクリーンのたるみ・歪みでも、超短焦点プロジェクターで映像を映し出すと、大津波が起きているかのように大きく映像が歪むのだ。
クルマはぐにゃぐにゃ、字幕は読むのも大変で、俳優の表情もわからないほど。このため、超短焦点プロジェクターには、それに適したスクリーンが必要になるというわけだ。
■ペーパースクリーン「パペルマット」を使った解決ソリューション
この「超短焦点プロジェクターのスクリーン選択」という問題について、オーエスではいくつかのソリューションを用意している。例えば、超短焦点専用スクリーン「SVS-83FN-H」。本製品は床置き型タイプのスクリーンで、左右にワイヤーを配置しておりスクリーンに最適なテンションを掛けられるようになっている。実際に映像を投映してみたが、先のスクリーンのように映像が大きくゆがむことはなかった。
とはいえ、SVS-83FN-Hは主に教育機関などで使われることを想定したスクリーンで、家庭でシアター用に使うにはあまり適していない。家庭用のサイドテンションスクリーンとしては、STPシリーズがラインナップされているが、最高級品で高価なスクリーンだ。そこで、現在オーエスが提案を企画しているのが、ペーパースクリーン「パペルマット」を使う方法だ。この製品は現在、一般量販店などでは販売されておらず、BtoB市場向けに展開しているものだが、今後一般市場への直販展開も検討しているという。
パペルマットの利用方法は2つある。1つは、通常の吊り下げ型スクリーンと同様に吊して、さらにたるみや歪みを取るために、風鎮(掛け軸の軸先に付ける錘)などを吊す方法だ。ワイヤーなどでテンションを掛ける本格的なスクリーンほどではないが、風鎮を吊すことで平面性が確保され、映像の歪みも少なく、映画や映像コンテンツなら問題なく観ることができる。紙製のスクリーンのため、万が一強く巻いたりすると紙が折れてしまい、どうしてもシワが残るが、そこさえ気をつければ発色も良く、高クオリティの映像を楽しむことができる。
そしてもうひとつが、壁を利用する方法だ。超短焦点仕様のEH320USTは、壁に面したサイドボードなどに置いてそのまま白い壁に映像を直接映し出すといった使い方ができる。しかし、一般的な住宅の壁紙はわずかでもエンボス加工が施されていることが多く、下部から上方向に映像を投写する超短焦点プロジェクターでは、このわずかなエンボスが影を産んでしまう(壁紙に映す場合は、テカリの少ない凹凸のない素材が求められる)。
そこで、パペルマットを壁に直接貼り付けるというアイデアを体験させてもらった。壁に直接貼っているため、当然たるみや歪みはもちろん、揺れも発生しない。実際に映像を映し出すと、エンボス加工の壁紙と比べると、その映像のキレイさは圧倒的だった。
オーエスによると、パペルマットは5層で構成されており、最裏面に当たる遮光プリント層が水溶性の素材でできているという。このためパペルマットを壁に貼る場合は、充分な水張りの経験が必要だそうだ。このあたりの情報提供や、プレートなどに貼った状態での提供などは今後検討していくとのことで、ぜひ期待したい。実際、40インチほどのサイズの木枠にパペルマットを貼ったものに映像を投写してみたが、非常に安定性が高かった。
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